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疲れたのよ
しおりを挟む喉にナイフを当てたまま、人質を取った強盗のような状況で、じりじりと3人が屋敷に入ると、使用人達は驚いて、私達から距離を取った。
ゆっくり階段を上り、シルビオの執務室に入り、シルビオには執務机の椅子に座ってもらい、私は一番遠いソファに座った。
そこでようやくナイフを置いた。
ジョバンニは素早くナイフを取り、私の隣りに立っている。
「話しだけ聞くわ。どうぞ。」
シルビオの話しはこうだ。
キャルティと浮気したのは今から2ヶ月前で、
最初は断ってたけど断りきれなくて、ヤってしまった。バレると私に怒られるから、隠し部屋で何回かヤったけど、キャルティが今妊娠してるから激しくしないでと言われ、ギョッとした。
もし、キャルティが妊娠してる事を私が知ったら、誤解するから最初に言っておこうと思ったけど、浮気してた事を言うのが嫌で、あんな言い方になった、だそうだ。
「で?」
「え?」
「だから?」
「だから俺の子供じゃないから安心してって…」
「シルビオは何にも分かってないね。
私がそれで許すと思ったの?
あんなプロポーズしておいて、結婚してたった半年ちょいで浮気って・・・。
こうなるのが分かってたから結婚なんかしたくなかった。
シルビオは誘われたら断れない人だって知ってるもの。
結婚した私が悪かったの。
断固拒否すれば、こんなに嫌な思いする事もなかった。
気が強くても辛い事は辛いし、嫌がらせも悪口も辛かった。
メイドにバカにされても、シルビオもジョバンニも助けてなんかくれなかった。
バルコニーからシルビオとキャルティのキスを見てた気持ちが分かる?
隠し部屋に入った時の気持ちが分かる?
もう疲れたよ、シルビオ。
良い思い出なんて一つもない。
楽しい思い出なんて何にもない。
デートも旅行もした事も、行った事もない。
歴代の彼女達とは何回デートしたの?
旅行には何回行ったの?
私はゼロ。
好きだ、愛してるは数えきれない程言われたけど、そんなのお父様やお母様と変わらない。
だから、シルビオ、私を解放して。
お願い。」
さっきまでの激情はなりを潜め、静かに話す私をシルビオは泣きながら見つめ、ジョバンニは無表情だけど、握る拳は真っ白になって俯いていた。
「だからしばらく別居しよう。
とりあえず結婚1年くらいは頑張るよ。
みっともないしね。
私はもう誰とも結婚なんかしない。
どんなに私を愛してくれても私だけを見てくれる人なんていないって分かったから。
シルビオも私が他の人と結婚しなかったら納得するでしょ?
だから、後数ヶ月は奥さんやるからその後は離婚して下さい。」
「・・・・・・ヤダ、嫌だ、」
「まだ時間はあるから、今は良いよ、じっくり今私が言った事を考えて。
私はもう貴方を信じない。」
ジョバンニが、
「エルザ、屋敷に残るのか?」と聞いてきたので、
「ううん、こんな状態でここにはいられないよ。またメイドにバカにされるし、隠し部屋から出てくるシルビオなんか見たくないし。」
「庭が見えない部屋に移動するのは?」
しつこいぞ、ジョバンニ。
「もうここにいたくないのよ…メイドの総入れ替え出来るの?
私をバカにしてない人なんて1人もいないわよ。ここのメイドの質は最低だから。
ジョバンニは何を教育してたのかしら?
侯爵邸のメイドとは思えないほど悪いわよ、
次の奥さんが苦労するわ。
てか、私にだけか。」
もう何も言えなくなった2人は、私が執務室を出ても何も言わなかった。
そして、改めてヒーナス侯爵邸から2度目の家出となった。
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