隠していない隠し部屋

jun

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残された2人は

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執務室にいる2人は動く事も出来なかった。
エルザは口は悪いが、基本優しい。
他人からの悪意もこてんぱんにやり込める強さもある。
でも、学生時代の嫌がらせは卒業するまで続いていたし、何度も怪我をしてた。
その原因は全部シルビオだ。
エルザは本気でシルビオを避けてた。
それでも無理矢理側にいれば、仕方ないと小さく笑ってくれてた。
それをシルビオもジョバンニも見てきた。

強いから大丈夫と思ってたし、構われるのも嫌がると思ってたし、溺愛するのも気持ち悪いって言われそうで出来なかったシルビオは、周りの女子に、シルビオ様可哀想といつも慰められていた。
でも、エルザを慰めるのは家族しかいなかった。
友人は面白がって見ていたし、いつもの事だと放置していた。
嫌がらせは自分で対処してたし、フンって感じでこっちが手を出す暇もなかった。
だからエルザなら大丈夫と2人とも思っていた。
でもそうじゃなかった。
学院では、シルビオは婚約者でも何でもなかったから、1人で対応していたのだろう。
でも結婚したならシルビオかジョバンニが対応しなければならなかったのに、しなかった。

その事にようやく気付いた2人は、出て行くエルザにかける言葉なんてなかった。

「離婚されるのかな・・・・」

「だろうな…」

「俺・・・・エルザを愛してる…」

「知ってる。
お前はどうして浮気すんの?エルザに嫉妬してほしいの?」

「違う…断れなくて…」

「で、エルザを泣かせるんだな、お前は。
お前がいらないなら、エルザを俺にくれよ、俺が好きなの知ってただろ!」

「お前には絶対やらない!」

「なんでだよ!」

「お前とエルザは俺とは違っていつも近かった!悪口言い合ったり、喧嘩したり俺より仲が良かった!お前もエルザもそんな事するヤツ他にいない!俺はそうなりたかった!」

「なれば良いだろ!充分喧嘩してるだろうが!俺と変わんねえよ!」

「そう…かな…」

「ハァ~お前なぁ…」

エルザはなんだかんだ言ってもシルビオの事は好きなんだと思う。
あれだけ毎日好きだ、愛してるって言われ続けたんだ、絆されない訳がない。
なのに、シルビオはエルザの愛を信じられない。
不安だから他の女に目がいってしまう。
俺は逆に目を向けないようにしてた。
見てしまえば離れなくなってしまうから。
俺と今の段階でエルザがどうにかなるなんて思えない。
でも、もしエルザが1人になるなら、次は絶対こっちを向かせる。

とりあえずは、シルビオとエルザはまだ夫婦だ。
執事として、なんとか2人が納得出来る道を探したい。
だから、

「シルビオ、浮気はやめる気ないのか?」

「やめる気っていうか、浮気する気はないんだよ。ただ、誘われると弱いってだけ。」

「じゃあ、離婚しろ。エルザが戻ってもまたお前は同じ事をする。もうエルザを泣かすな。」

「嫌だ。エルザは渡さない!」

「俺が貰うわけじゃない。悲しい顔を見るのが嫌なだけだ。
お前は辛くはないのか?
エルザの悲しい顔を見た事はないのか?」

「怒った顔しか分からない。」

「さっきの顔を忘れたのか?あんなに悲しそうな顔してたのに?」

「見てた。でも途中から泣いてたから見てなかった。」

「お前って本当、勉強しか出来ないバカだな。」
ジョバンニの言う事は当たってる。
俺はバカだ。
でも俺はホントにエルザだけが好きなのに、どうしても他の女の子がキスしたり、胸をくっつけたりすると押し倒してしまう。
駄目だな…俺は…。

「エルザが首にキスマークつけてたらどうする?」

「エルザはそんな事しない!」

「エルザが他の男の子供妊娠したらどうする?」

「エルザはそんな事しないって言ってるだろう!」

「エルザに他の男が、あんな事やこんな事されたらお前どうする?」

「嫌だ嫌だ、そんな事しない!」

「考えろ。想像してみろ。ベッドの上で、あの銀髪を広げて、目を潤ませたエルザが他の男に抱かれる所を!」

「やめろ、そんな事いうな!」

「お前がしてる事はそういう事だ!
エルザはあの部屋に入って、想像しただろうな、お前とキャルティがヤってる所をな。」

「やめろ、やめてくれ…」

「やめて欲しかったら考えろ!エルザが許してくれる方法を。
今の段階では、ここに戻ってくる事はない。
戻ってきて欲しいなら、考えろ!」

グスグス泣くシルビオを放って、執務室を出た。

そして俺は先ず使用人全員を集めて、聞き取りをした。1人ずつ、呼んで、エルザの悪口を言い、同調してきたヤツにエルザに対して何をしたのか聞き出した。
殆どの奴がエルザに反感を持っていた。
まともなのは数人しかいない。
大奥様と大旦那様が領地に行く時、ベテランの古株は全員付いて行ってしまった。
俺の両親も。
こんな中にいて楽しい事を見つけろって方が難しいだろう。
まだ学生時代の方が友人や家族が側にいたからマシだ。

俺もなにやってたんだか…。

常に気はかけてた。

でも必要以上には近寄らなかったし、馴れ馴れしくもしないように気をつけた。

ハァ…俺もシルビオも大事にし過ぎて、中途半端に距離を取っていたことが使用人に誤解させたのだろう。
当主を大事にしない気の強い女主人にしてしまったのは俺達だ。

エルザは出て行った。

こちらから行かない限り会うことも出来ないだろう。

ハァ…

新しい使用人を雇わなければ。
父と母に相談して、探してもらおう。
怒られるだろうが、今の俺とシルビオに見る目はないだろうから。

肩を落として歩くジョバンニを「しっかりしなさいよ」と叱ってくれるエルザが帰ってくるのは意外と早かった。














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