隠していない隠し部屋

jun

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本当の王太子

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緊急会議の後すぐにラエルと相談し、ダニエルに手紙を出した。
王太子に関する重大な話し有り、都合が良い時に我が家に来て欲しいと書いた。
手紙を出した当日の夜、翌日の夕食後に行くと返事が来た。
もっと余裕を持たせろよと思わないでもないが、仕方ない。
急ぎラエルに連絡し、翌日2人でダニエルを待った。

「お前らが呼び出すなんて珍しいな。
で、アイツは誰を孕ませた?」

と俺達がどう説明しようか悩んでいた事を一発で言い当てた。

「シルビオと噂になってる令嬢か?まさかヒーナス侯爵夫人ではあるまい?
何を呆けている、その事ではないのか?」
コイツは何処まで知っているのか相手までも当てた。

「キャルティ・カーク男爵令嬢、お前の予想通りシルビオの浮気相手が妊娠した。
避妊せずに情交したのは王太子だけだ。」

「またか。これで何人目か知ってるか?
3人だ、3人。このままだと未婚で未貫通の令嬢いなくなるぞ。
あれは駄目だ。王位にも興味はないし、廃嫡される為にやってる。
陛下もさっさと諦めればいいものをいつまでも諦めない。
ま、俺も勿体無いとは思っているが。」

「待て待て、俺達が知ってる王太子はバカな女狂いの金食い虫なんだけど、違うのか?」

「アレは弟に王位を継がせたいんだよ。
本当は優秀なはずだぞ、クリスハートは。
正妃があんなじゃなかったら理想の王太子になってたはずだ。
弟を王位に付けたい正妃はクリスが邪魔だから今の状況を喜んでるぞ。

リーシャ様が生きていらっしゃったらこんな面倒にはならなかったのにな。
ま、王位継承剥奪されるまで女を妊娠させるか、その男爵令嬢を娶って廃嫡されるかってところだろう。
今までの令嬢は王家が秘匿してる薬で堕胎している。
身体に影響はないが、精神的にキツいのには変わりない。
修道院に入るか、後妻に入った。
金はたんまり払ったから実家は文句も言えない。
第一、令嬢達がクリスを許している。
なんで許せるのか俺にはサッパリ分からんが、クリスを恨んでいない。
どう説得すればあんなに綺麗に別れられるのか教えて欲しい。

で、お前達は何を俺と相談しようと思ったんだ?」

とんでもない情報を俺とラエルは口を開けて聞いていた。

「いや、妊娠を知られたらキャルティ嬢は消されるんじゃないかって思ったんだよ。
そんなに前例があるとは思わなかったから。
それに避妊はしていても絶対ではないからシルビオの子供かもしれない。
それでどうすれば良いかお前に相談に乗ってもらおうと思ったんだよ。」

「なるほどな・・・クリスハートが知ったら、ここぞとばかりに、その令嬢はクリスハートに捕まるな。
好きでもないのに結婚するとでも言いそうだ。例え自分の子供でなかったとしてもな。
俺はそれでも良いかもと思うが、お前らはどうする?
クリスが面倒みてくれるなら何の問題もないぞ。自分の子なら庶子にもならんし、違っても自分の子として育てると思う。
どうする?」

「なんか…情報量多過ぎてまとまらん!」
とラエル。

「陛下は諦めてないんだよな、クリスハート様の事を。
それにお前の娘はどうするんだよ、婚約者だろ。」

「娘は…クリスの事が好きだからな…悲しんでる…理由があってやってるのは理解してるが、やってる事がえげつないからな、クリスも本当は娘に好意を持ってる。
だから見ていてイライラする。」

「なあ、少し話し整理していいか。」とラエル。

「えーと、側妃のリーシャ様が生んだクリスハート殿下は、正妃が生んだ第二王子のブライアン様を継承権一位にしたい為だけに、女遊びを繰り返し、妊娠までさせて廃嫡又は王位剥奪されようとしてる。
相手の令嬢には恨まれもせず、実家から文句も言われない。
そしてクリスハート殿下は本当は優秀で、それを隠すためあんな事をしている、って事でいいのか?」

「まあそういう事だが、ブライアン様を、というよりあの性悪女から離れたいんだろ、自分の母親殺されたんだから。」
とダニエルはあっさり禁句を口にする。

「お前、宰相なんだからそういう事言ったら駄目だろ、例えそうでも。」

リーシャ様は突然倒れた。
リーシャ様の食事にもお茶にも毒物は入っていなかった。
一緒に食事を取っていた当時5歳のクリスハート様の食事にも毒は入っていなかった。
だが、リーシャ様の症状は毒物によるもの。
お二人の食事、食器を隈なく調べ、クリスハート様のメイン料理が乗っていた皿の一部とリーシャ様のフォークにだけ微かに毒物反応があった。

当時5歳のクリスハート様はまだ好き嫌いがあり、人参が嫌いだった。
それをリーシャ様が食べてあげている姿は仲睦まじくて、褒められた事ではないが周りは好意的に見ていた。
それを利用してリーシャ様、上手くいけばクリスハート様を亡き者に出来ると狙った犯行だった。
結果はリーシャ様が治療の甲斐なく亡くなった。
どっちを狙った犯行なのかも、犯人も結局は未だに分かっていない。
でも全員が疑った人は一人、正妃レベッカ。

国王ジュリアン陛下と正妃レベッカの間には子供が出来なかった。
決して仲が悪かった訳ではないが、良くもなかった。
だが正妃は元公爵令嬢、プライドが高い。
側妃なんて許せないが、世継ぎは必要。
渋々側妃を認め、リーシャ様が側妃となった。
仕事は出来るが、愛想もないレベッカ様よりは愛嬌のある可愛らしいリーシャ様を陛下が愛するのは必然とも言えただろう。
それでもレベッカ様を蔑ろにはしていない。
そんな頃、リーシャ様が懐妊した。
そしてその2カ月後、レベッカ様も懐妊した。
たった2カ月の違い。
だが第一王子は生まれた順。
その時からレベッカ様のリーシャ様への嫌がらせが始まった。
リーシャ様も賢い方だったので、早々やられはしなかったが、心労は計り知れなかっただろう。
結局生まれたのはクリスハート様が先。
2カ月後生まれたブライアン様とクリスハート様はリーシャ様が亡くなるまで顔を合わせる事は無かったが、葬儀の際に初めて存在を知った。
だが、実際はこっそり子供同士の交流はしていたんだろう。
隙をみて交流を深め、兄弟は双子のように仲が良くなったらしい。
それを面白く思わないレベッカはクリスハートに数々の攻撃を仕掛ける悪役王妃、という物語では最後は断罪される役を地でやっている最中なのだ。
それに飽き飽きしているクリスハート、
心配する弟ブライアン。

なんだかお腹いっぱいって感じだ。

「とりあえずクリスハートに報告しておく。
キャルティ嬢は殺されない。
王妃もキャルティ嬢を狙うような事もない。
ただ産みたいと言ったら分からない、大丈夫だとは思うが。」

「「そこが一番大事なんだろうが!」」

「本人は産むって言ってるか?」

「怖がってるだけで、産むとは言ってないな。一度話してみるから、まだ王太子には言うなよ!」

「じゃあ、喉渇いたから何か飲ませてくれ。」

それから3人で酒を飲んだが、この先の面倒くささを考えるとため息が出た。














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