隠していない隠し部屋

jun

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『かあ』とは?

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最近のジョバンニの様子がおかしい。
俺がエルビオの部屋に行こうとすると、血相変えて追ってくる時がある。
毎回ではない、たまにだ。

でもそのに何があるのか気になった。

さっきもフラッとエルビオの顔を見ようと、執務室を出ると、

「どちらへ?」

「エルビオの顔を見ようかと思っただけだ。」

と俺が言うと、

「そうですか、では確認して参ります。」
と言うや否や、小走り気味にあっという間にいなくなった。

何の確認?

と思わないでもなかったが、待ってるのもおかしいので子供部屋に向かっていると、子供部屋からジョバンニとメイドが出てくるのが遠くに見えた。

顔を寄せ、何か小声で話しているのか、2人の距離はかなり近い。

おや・・・

もしかしてジョバンニの恋人なのか?
俺に会わせないようにしているとか?
さすがにメイドには手をかけないし、俺はエルザ一筋だぞ、心外だな!

立ち止まって2人を見ていると、前に見たジョバンニの頭を叩いていたメイドだ。
え⁉︎ジョバンニってエルザの事好きって言ってたのに、好みが変わったのか?

俺が見ている事に気付いた2人はすぐ離れ、メイドはジョバンニの後ろに隠れるように立った。

「シルビオ様、エルビオ様は起きていらっしゃいました、どうぞ。」

と言ってノックした後、ドアを開けてくれた。
メイドは下をずっと向いたまま、お辞儀をした。

「あ・・ああ、ありがとう。」と言って子供部屋に入ったが、ジョバンニとあのメイドが気になった。

最近のエルビオは『かあ』とか『とお』とか片言を話すようになった。
レーネの話しだと、『とお』は俺の事らしい。
“父様”と俺の事を話しているから、覚えたのだろうという事だ。
なんて賢いんだ!
では、『かあ』は?と聞くと、「知りません!」と即座に言われた。

いやいや、俺は『とお』が“父様”なら『かあ』は“母様”なのかなと思っただけだ。

ん?だったら誰の事を“母様”と呼んでいるのだろう?
キャルティ?レーネの事か?
それは問題だ。

「レーネ、エルビオに母親は誰だと話しているんだろうか?」

「母親の事は一切話しておりません。」

「じゃあ『かあ』は何に対してエルビオは言っているんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・カラスなのでは?」

「カラス?カアーカアー鳴くから?」

「おそらく。」

「カラス鳴いてた事なんてあったか?」

「夕方になると、巣へ帰る際、鳴くようです。」

「夕方…そうか…ありがとう。」

全く腑に落ちないが、レーネの“これ以上問うてくれるな!”という気迫に負けて、この日は引いた。

その日の夕方、何気にバルコニーに出ると確かにカラスが鳴きながら飛んで行った。
なるほど。
でも、こんな一時のカラスの鳴き声にエルビオは食い付いたのか?

それから数日後、階段を上がりきった所で出会い頭にメイドとぶつかりそうになった。
「ヒィッ!」とメイドが小さな悲鳴をあげた。
「済まない、大丈夫か?」
と言うと、
「ダイジョウブ、デス…」

「君はジョバンニと仲が良いメイドだよね?」

「イエ、ナカハ、ヨクアリマセン」

「ねえ、どうしてそんな話し方なの?」

「ア!エルビオサマガ、ナイテイル!」と言って恐ろしいほどの速さで逃げていった。

なんなの、あのメイド…。



別の日、休憩しようと、またバルコニーに出た。
エルビオ達が庭を散歩しているのが見えた。
すると、
「かあ、かあ!」とエルビオは抱っこしているあの棒読みメガネのメイドに手を出し、呼んでいる。

なんで?

「ビオは可愛いね~母様はビオがだ~い好きよ。」と棒読みではなく本当の母親のように言っていた。

ん?ビオ?母様?
おいおい、ダメだろ。

俺はすぐジョバンニを呼んだ。

「あれはダメだろ!」

「なんの事でしょう?」

「メイドに“母様”と呼ばせるのは大問題だ。
あの棒読みメガネを何故『かあ』と呼ばせている!
それに“ビオ”って何だ!エルビオは“エル”だ、“ビオ”じゃない!」

「“母親”という生き物がいると教えておかないと、のちのち困る事になるのはエルビオ様です。
ですから、せめて言葉だけでもエルビオ様に教えているのです。
愛称は前の奥様と被りますから、“ビオ様”と使用人達は呼んでおります。」

「それにあのメイドは、“ビオ様”ではなく“ビオ”と呼び、『母様はビオがだ~い好き』って言ってたぞ!」

「聞き間違いです。」

「は?」

「聞き間違いです。」

「いやいや、聞いたから!この耳で聞いたから!」

「おそらく、庭師のカーサスはビオ様が大好きだと言ったのかと。」

「え?」

「『カーサスはビオがだ~い好き』とエルビオ様が覚えやすいように、そう言ったのではないかと。」

「カーサス・・・」

「そうです。もうよろしいでしょうか?」

「あー、うん、分かった、もういい。」
そう言うと、颯爽と戻っていった。

母親という生き物・・・庭師のカーサス・・・

子育てとは難しい…。
言葉を覚える優先順位は大人とは違うのだな…。カーサスが父親と同列だとは思わなかった…。

衝撃を受けていたシルビオが執務室で落ち込んでいた時、エルザはジョバンニに怒られていた。

「お前はどうしてそうバカなの!なんでシルビオの執務室の近くであんな事言うんだよ!
俺、すげぇー頑張ったんだからな!
庭師のカーサスがいて良かった~。
“母様”誤魔化すの、どんだけ大変だったか!」

「『カーサスはビオがだ~い好き』って言うジョバンニ想像すると笑える!」

そんなやりとりをしていた2人をシルビオはまだまだ気付く事はない。











*いつもお読み下さりありがとうございます。今日は20時にもう1話投稿しますよ。
お楽しみに!



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