隠していない隠し部屋

jun

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棒読みメガネとシルビオの攻防

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今、私は最大の危機に陥っている。

それはエルビオと思う存分遊び、さて執務でもやるかと部屋を出た瞬間、目の前にシルビオがいた。

ヒィッと息を飲み、辛うじて声を出すのを堪えた。即座に下を向き、顔を見られないようにした。

「シツレイシマシタ。」

「・・・君の名前はなんだったかな?」

「エリー、デス」

「なんでそんな変な話し方なの?」

「イナカモノ、デスカラ…」

「訛りは気にしない。普通に話して良いよ、ほら、話してごらん。」

「イエ、ハズカシイ、デスカラ!」

「いやいや、他の人とは普通に話してるんでしょ?エルビオにもその話し方では悪影響になると思うんだが?」

「それは・・・」

沈黙が続く…さあどうする、走って逃げるか!

「シルビオ、どうかしたのか!」と救世主登場!

「ジョバンニ、別にメイドと話していただけだ。」

「エリー、仕事があるだろ、必要以上にシルビオ様に近付いてはダメだと言っているだろう、さあ、行きなさい!」

助かったぁ~。

「ハイ」

走って曲がり角まで行き、こっそり覗き込むと、

「なんで俺に近付くのはダメなんだよ、俺は何もしない!」

「お前は分かっていない!必要以上に女性を近くに置かない方がいいだろ?
お前は大丈夫でも相手はそうとは限らないんだから!」

ジョバンニ、上手い!
でも、なんか腹立つ。

「それはそうだが・・・あのメイド、何か、怪しい…。」

「田舎者をいじめるな。辞められると困る。」

「そうなんだが…」

シルビオは納得いかない感じで子供部屋に入った。
角から顔を出す私を見つけたジョバンニは、
「お前はホントに隠れる気あるのか!
絶対シルビオに目ぇ付けられたぞ!」

「そんな感じがしてる…油断しました、反省しています…。」
「ほら、今のうちに行け!」と追っ払われた。

アイツは私を雑に扱い過ぎると思う。

それから、私とシルビオとの戦いが始まった。

私を見つけると、走って追いかけてくる。
だから私も逃げる。
足の長さ分、シルビオは距離を詰めるのは速いが、私には味方がたくさんいる。
途中、妨害工作を繰り出す使用人の皆様。
ワゴンで道を塞いだり、急にドアを開けたり、エルビオを使ったりと様々な妨害に合い、一度もシルビオには捕まった事はない。

なので、私は考えた。
カツラを変えよう。

今までは茶髪のカツラだったが、くすんだ金髪のカツラを被った。
見事、シルビオは私を見失った。



「ジョバンニ、あのメガネはどこ行った?」

「おりますよ、あの子が何か?」

「いや、用事はないが、俺を見ると逃げるから、つい追いかけるのが習慣になっていた。
最近見ないから辞めたのかと思っただけだ。」

「お呼びしましょうか?」

「え?呼んでくれるのか?」

「良いですよ、私もなかなかあの子を捕まえる事は出来ないのですが、見つけたらお連れします。」

「そうか、頼む。」

ジョバンニは俺にあのメイドを会わせたくないのではなかったのか?
拍子抜けしたが、ジョバンニが連れてきてくれるなら、追いかける必要はない。


とでもシルビオは思ったに違いない。
それからは追ってこなくなった。
コソコソしなくて良くなった私は堂々と廊下を歩けるようになった。

今日の執務を終わらせ、エルビオの所に向かっていると、前をシルビオが歩いているのが分かった。
ヤバいと思い、戻ろうとした所を気付かれた。

「おい、そこのメイド。」

別のメイドを呼んでると思おう、だから私は逃げる!

咄嗟に走ってしまった私を見たシルビオは、

「あ!お前棒読みメイドだな!その走り方、忘れてないぞ!髪色変えたとは小癪な!」
と追いかけてきた。

ヤバいヤバい、近くに誰もいないのか、妨害もされないからシルビオに追いつかれそうになったので、私は座り込んだ。
顔を手で覆い、
「ご主人様は~、いづも~、わだしを見づげると~なんで~おいがげるのですか~、わだしは~なんにも、しでないのに~!」
と泣き真似をした。

「いや、違うんだ、お前が逃げるからついな、怖がらせたいわけではないんだが、ついな、泣くな、済まない、もう追いかけないから、ほら、立ちなさい。」
と私をたたせようとした時に、

「シールービーオーーーーー!」
とジョバンニが走ってきた。

「いや、違うんだ、別に虐めてたとか、そういうんではないんだ!」

「メイドを追いかけ回して、挙句に泣かせるなんて、当主としてどうなんだ!
今後、エリーを追いかけ回すのは絶対ダメだからな!」

「済まない、分かった…エリー、すまなかった、あまり怖がらないでくれ、何もしないから。」

「はい…」


こうして一旦、私とシルビオの追いかけっこは休止となったが、
エルビオを抱っこしながら、
「ビオの父様はね、とぉーっても母様の事が好きなんだって。」
と普通に喋っているのをたまたま聞こえたらしいバルコニーにいたシルビオが、

「お前ーー、訛りなんかないじゃないかぁーーー、騙してたな、このクソメガネ!」
と怒鳴りながら私を捕まえようと部屋の中に入ったので、私は隠し部屋への入り口から隠し部屋に逃げ込んだ。
階段の窓のカーテンから覗くと、

「どこ行きやがった、あのメガネ!」
と息を切らしたシルビオが喚いていた。

執務室の窓から、

「シールービーオーー!何やってんだー!」
とジョバンニがシルビオを怒鳴っている。


シルビオよ、訛りに気付く前に私の声に気付け!





シルビオが気付くまで、もう少し。















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