隠していない隠し部屋

jun

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最近体調も良くなり、朝は頗る調子が良い。
夢見も良いし、エルビオは可愛い。
後はエルザがいればなぁ…

朝食を食べ終わり、執務室へ向かっている時、階段を上りきった曲がり角であの棒読みメガネとぶつかりそうになった。

「グッ⁉︎」と声を出したメガネは、
「モウシワケアリマセン…」と言って、クルッと振り返り、来たであろう方向へ戻ろうとした。

「待て!」

「ハイ⁉︎」

「なぜ戻る?」

「ア、エルビオサマガ、ナイテイル!」

とまた棒読みでダッシュで逃げてった。

「アレはホントに…」

あのメイドはホントに躾がなってない。
ジョバンニ…もう少しちゃんとした人を雇えよ。
でも、この香り…エルザと同じだ。

クンクンクンクン・・・

エルザの香り…。
そういえば棒読みメガネの香りはエルザと同じだ。
あの女…こっそり高級石鹸使ったな…。


そんなこんなでエルビオが生後6ヶ月になった頃、クリスハート様が、遅くなったが出産祝いとエルビオの顔を見に行きたいとの手紙が届き、我が家に来る事となった。
クリスハート様は、エルビオの出産届の母親の欄がエルザの名前だった事に最初驚いていたが、事情を話すと直接陛下に許可を取り、そのまま出産届を提出してくれた。

エルザはその事を知らない。
怒るだろうなぁ…。

ハァ~とため息を吐き、クリスハート様の到着を待っていた。

馬車が到着した事が分かり、しばらくするとジョバンニが呼びに来た。

階段を降りている途中で外から、

「「え─────⁉︎」」と言う叫び声が聞こえた。

何事だと急いで降り、外に飛び出るとクリスハート様とブライアン様が口を開けて、飛び出そうなほど目を見開いて棒読みメガネを見ていた。

「王太子殿下、クリスハート様、うちのメイドが何か粗相でも仕出かしましたか⁉︎」
と慌てて尋ねると、

「「いや、なんでもない!」」と同時に答えた後、笑顔で、
「済まない、ブライアンも来たいというので断りもなく連れてきてしまった。」

「ヒーナス侯爵、急に押しかけて申し訳ない。滅多に赤子など見られないのでな、私もご子息に会わせてはもらえないだろうか。」

「それは息子も喜びましょう。さあ、中へどうぞ。」

急な王太子殿下の訪問に少し慌てたが、問題はないだろう。

しかし、さっきのはなんだったのだろう。

お2人は何に驚いたのだろう…。

気にはなるが、お2人を追いかけエルビオを紹介した。

「シルビオにそっくりだな。可愛いなぁ~」
とクリスハート様。

「本当だな、将来男前になる。」
とブライアン様。

その時エルビオが、
「かあ、かあ」と泣き始めた。

俺が抱き上げても泣き止まず、
「かあ、かあ」と泣く。

ミルクの時間なのかと乳母のレーネに渡しミルクを与えるが泣き止まない。

どうしたものかと困っていると、棒読みメガネが来てエルビオを抱っこすると、ニコニコしながら「かあ、かあ」と喜んでいる。

それを2人の王子が先程と同じ顔で、そのメイドを見ていた。

俺もメイドを見た。
息子が何故か『かあ』と呼ぶ棒読みメガネを見ていた事が分かったのか、

「シツレイ、イタシマス!」と言ってエルビオを連れて出て行ってしまった。

「あーと、シルビオ、あのメイドはいつから?」

「使用人を一斉に変えましたので、半年前くらいか、その辺りかと。」

「そう・・・なのか…。」とクリスハート様。

「ヒーナス侯爵、シルビオと呼ばせてもらって良いだろうか?」

「もちろん構いません。光栄でございます。」

「あのー、ちなみにあのメイドの名前は何と言うのだろうか?」

「あー、えーと、エリーです。」

「「ふぅ~ん」」

なんだろ…なんでお2人は棒読みメガネを気にするんだろう…。

その後は、エルビオの事や、他愛のない話しをして、帰って行った。
帰りにクリスハート様が、

「今度こそ、幸せになって欲しいと祈っている。」
と言って帰って行った。

ブライアン様が、クリスハート様の肩を抱いて、何か慰めているようだった。

ん?誰と?エルビオと?

首を傾げながら、見送った。


「なあ、ジョバンニ、棒読みメガネを『かあ』とエルビオが呼ぶのはどうしてだ?」

「さあ…」


何か引っ掛かるが、それが何かが分からない。

モヤモヤしたまま夜になり、ベッドに横になるが、眠れない。
何気にバルコニーに出たら、誰かがの入り口がある所に立ち、中に入った。

誰だ⁉︎あの入り口を知っているものは少ない。
ましてやメイドなど知り得ない。
そういえばあの部屋はジョバンニが書斎の本を置くとかなんとか言っていた。
こんな夜中に本の整理?

部屋に戻り、短剣を枕の下に隠しベッドに横になった。
ひょっとして夜這いか⁉︎

寝たふりをしばらく続けた。
すると書斎からのドアが静かに開いた。

ソォーっと歩いてくる気配がする。

ベッドの横まで来ると、

「シルビオ」と俺に声をかけた所で、目を開けた。

ガッと腕を掴み、

「エルザ⁉︎」
と声をかけると、

「あちゃー、バレちゃった」
と言ってカツラを取った。

なんか変だと思ってた。

皆んなが楽しそうで、何かワクワクしている感じに違和感があった。

ジョバンニでさえ、楽しそうだった。

エルビオだけの理由ではないとは分かっていたが、何なのかは分からなかった。
そして、棒読みメガネ。
考えてみれば、あんなメイドいるわけがない。主人を見ると走って逃げるメイドなんて聞いたことない。
普通に話せばバレるから棒読みだったのか…。

そうか・・・
エルザが帰ってきてくれてたんだな・・・

「エルザ…エルザ・・・」

掴んだ腕を離して抱きしめた。

「シルビオ、頑張ってたの、ちゃんと見てたよ。」

「うんうん・・・」

「エルビオの世話もちゃんとしてたの、見てた。」

「うん・・・」

「夜遅くまでお仕事も頑張ってた。」

「うん・・・」

「でも、最初は夜うなされてたね…」

「うん…」

「だからあの部屋でシルビオが寝るまで待ってたの。」

「うん…」

「頭撫でてたの、知ってた?」

「夢かと思ってた…」

「褒めてたの、分かった?」

「夢でも嬉しかった…」

「愛してるって言ったの、覚えてる?」

「朝、泣いた…」

「シルビオ…」

「何?」

「もう一回最初からやり直そう。」

「・・・・・良いの?」

「うん、私はシルビオが好き。」

「俺も好き、大好き。」

「愛してるわ。」

「俺も・・・愛してる・・・」

その後はもう涙が止まらなくて、エルザを抱きしめながら号泣した。
気付けば寝てしまい、ハッとして起きた。

「エルザ⁉︎」

慌てて探すと横で眠っているエルザがいた。
しっかり抱きしめて、もう一度寝ようとしたら、
「こら、もう起きる時間だよ!」と怒られた。



ああ、エルザがいる!
エルザが同じベッドにいる!


朝からまた号泣の俺に、

「シルビオ、ただいま。」

と言って抱きしめたエルザも泣いて、いつまでも出てこない俺達を心配したジョバンニが様子を見に来るまで、抱き合いながら泣いた。

それを見たジョバンニが、

「エルビオ様が泣いてるんだけど。」

の一言でピタっと泣き止んだエルザは俺を置いて走って行ってしまった…。

「シルビオ、良かったな」
と言ったジョバンニも泣いているのを見て、また泣いた。


こんなに最高な目覚めは初めてだ。















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