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似た者同士の結末
しおりを挟むクララ視点
あの後私とミゲル先輩は毎日うちの屋敷で卒業試験に向けて勉強した。
分からない所は先輩が分かりやすく教えてもらえ、なんとか三年生までの必修科目を終わらせる事が出来た。
見事二人で合格出来た時、婚約した。
私達が勉強してる間に、私の両親と公爵様が勝手に結婚の準備を進めていた。
私と先輩は呆れていたが、それ幸いと公爵夫人としての知識を先輩の叔母様に指導してもらった。
その間に学園の卒業式もあったが、私達は卒業証明書だけを先に受け取っていたので、出席しなかった。
そして、私と先輩は結婚した。
先輩のお母様は、私達が婚約した時にお義父様と離婚したそうだ。
後で、お母様がどんな人だったのかを聞いて驚いたが、逆によく今まで離婚しなかったなと感心してしまった。
パブロの事もマクスから聞いた。
結局ミリエラ様との子は流れてしまって、結婚の話しもなくなったのだとか。
その後の事は聞いていない。
アナ様は、お相手の方と結婚したそうだが、お相手の家族と上手くいっていないとお茶会で聞いた。
パブロもアナ様も、あと少しで穏やかで幸せな生活が待っていたのに、何故待っていられなかったのか私には何度考えても理解出来ない。
確かにパブロに愛されていたけど、結局誘惑されたら誘いに乗ってしまうような人だった。
アナ様はミゲル様には教えてもらえなかった沢山の楽しい事を優先し、その楽しさを与えてくれた人を選んでしまった。
傷付く人がいる事も考えず。
そして自分が被害者のように涙する。
その態度が、また私達を傷付けるとも思わず。
だから私はミゲル様と結婚し幸せになる。
私達が幸せであればあるほど彼らは絶望するだろう。
あの場所にいたのは自分だったのにと。
ミゲル様の事は好きだし、ミゲル様以外の人とは結婚なんかしたくない。
だってミゲル様は決して裏切らないと知っているから。
多分ミゲル様も同じだろう。
愛情よりも“裏切らない”事が重要なのだから。
それほど彼らは私達を傷付けた。
愛情を優先出来ないほどに。
でも信じられるから幸せになれると思う。
何年か経てばいつか、こんな思いも無くなって愛情だけになるのを気長に待とうと思う。
私のような彼となら誰よりも幸せになれると信じられるから。
*************************
ミゲル視点
俺とクララが結婚し、一年後にはクララが妊娠し、幸せな日々を送っている。
婚約中も結婚してからも俺達は緩やかに愛していった。
会った時から好意はあったし、婚約しようと決めた時は好きになっていた。
クララも同じだっただろう。
正直クララでなければ結婚なんかしなかっただろう。
それ以外の女を俺は信じないから。
信じられないから。
“クララは決して裏切らない”、それが俺には一番重要だった。
俺は母から愛情を貰えなかったからか、甘える事も甘えられる事もよく分からない。
アナは甘え上手だったので言われるままに欲しい物を渡してはいたが、いわゆるデートというものはした事がなかった。
気の利かない俺が悪かったのだろうが、アナが行きたいと言えば連れて行ったはずだ。
でも行こうと誘われた事はなかった。
根本的に好みが違ったのだろう。
結婚してから“何か違う”と思われるなら、こうなって正解だったのだ。
クララと婚約中、何度か屋敷にアナが来ていたらしいが追い帰してくれていた。
彼女はコルトの両親に、特に母親にキツく当たられているらしい。
それで辛くなって逃げ出してきていたと後でコルトに謝罪された。
唯一コルトはアナを愛しているようなので、それだけが救いだろう。
アナさえきちんと弁えれればだが。
結婚してからクララに聞いてみた。
「クララは俺を愛しているか?」と。
彼女は、
「ミゲルの事は好き。今は愛し始めたところ。これから貴方をどんどん愛していくと思う。
ミゲルがいてくれるだけで安心するの。
信じられる人が隣りにいてくれるだけで、幸せなの。
だからこれからは愛情が減る事はないわ、増えるだけよ。」
と言ってくれた。
アナの愛情の器には沢山俺への愛が満タンにあったが、溢れるのではなく減らしていったのだろう。
俺はもう少しで満タンの所で器が壊れた。
クララは器に今溜め始めたのだ、これから短期間で満タンになるか、時間をかけて満タンにするかは俺次第だ。
これから俺のクララへの溢れた愛情をクララの器へ注ごう。
1日でも早く満タンにする為に。
俺に似た彼女との恋愛はこれからなのだから。
《完結》
*************************
長く間を空けてしまい、申し訳ありませんでした。
それでも読んで下さった方々、ありがとうございました。
目に止めて読んで下さった読者の皆さん、本当にありがとうございました。
これからもぼちぼち書いてまいりますので、よろしくお願い致します。
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