私のような彼と彼のような私

jun

文字の大きさ
14 / 14

似た者同士の結末

しおりを挟む


クララ視点


あの後私とミゲル先輩は毎日うちの屋敷で卒業試験に向けて勉強した。
分からない所は先輩が分かりやすく教えてもらえ、なんとか三年生までの必修科目を終わらせる事が出来た。
見事二人で合格出来た時、婚約した。

私達が勉強してる間に、私の両親と公爵様が勝手に結婚の準備を進めていた。
私と先輩は呆れていたが、それ幸いと公爵夫人としての知識を先輩の叔母様に指導してもらった。
その間に学園の卒業式もあったが、私達は卒業証明書だけを先に受け取っていたので、出席しなかった。

そして、私と先輩は結婚した。

先輩のお母様は、私達が婚約した時にお義父様と離婚したそうだ。
後で、お母様がどんな人だったのかを聞いて驚いたが、逆によく今まで離婚しなかったなと感心してしまった。

パブロの事もマクスから聞いた。
結局ミリエラ様との子は流れてしまって、結婚の話しもなくなったのだとか。
その後の事は聞いていない。

アナ様は、お相手の方と結婚したそうだが、お相手の家族と上手くいっていないとお茶会で聞いた。

パブロもアナ様も、あと少しで穏やかで幸せな生活が待っていたのに、何故待っていられなかったのか私には何度考えても理解出来ない。

確かにパブロに愛されていたけど、結局誘惑されたら誘いに乗ってしまうような人だった。

アナ様はミゲル様には教えてもらえなかった沢山の楽しい事を優先し、その楽しさを与えてくれた人を選んでしまった。

傷付く人がいる事も考えず。

そして自分が被害者のように涙する。

その態度が、また私達を傷付けるとも思わず。


だから私はミゲル様と結婚し幸せになる。
私達が幸せであればあるほど彼らは絶望するだろう。
あの場所にいたのは自分だったのにと。

ミゲル様の事は好きだし、ミゲル様以外の人とは結婚なんかしたくない。
だってミゲル様は決して裏切らないと知っているから。
多分ミゲル様も同じだろう。
愛情よりも“裏切らない”事が重要なのだから。
それほど彼らは私達を傷付けた。
愛情を優先出来ないほどに。
でも信じられるから幸せになれると思う。
何年か経てばいつか、こんな思いも無くなって愛情だけになるのを気長に待とうと思う。

私のような彼となら誰よりも幸せになれると信じられるから。












*************************

ミゲル視点


俺とクララが結婚し、一年後にはクララが妊娠し、幸せな日々を送っている。

婚約中も結婚してからも俺達は緩やかに愛していった。
会った時から好意はあったし、婚約しようと決めた時は好きになっていた。
クララも同じだっただろう。
正直クララでなければ結婚なんかしなかっただろう。
それ以外の女を俺は信じないから。
信じられないから。
“クララは決して裏切らない”、それが俺には一番重要だった。

俺は母から愛情を貰えなかったからか、甘える事も甘えられる事もよく分からない。
アナは甘え上手だったので言われるままに欲しい物を渡してはいたが、いわゆるデートというものはした事がなかった。
気の利かない俺が悪かったのだろうが、アナが行きたいと言えば連れて行ったはずだ。
でも行こうと誘われた事はなかった。
根本的に好みが違ったのだろう。
結婚してから“何か違う”と思われるなら、こうなって正解だったのだ。

クララと婚約中、何度か屋敷にアナが来ていたらしいが追い帰してくれていた。

彼女はコルトの両親に、特に母親にキツく当たられているらしい。
それで辛くなって逃げ出してきていたと後でコルトに謝罪された。
唯一コルトはアナを愛しているようなので、それだけが救いだろう。
アナさえきちんと弁えれればだが。

結婚してからクララに聞いてみた。

「クララは俺を愛しているか?」と。

彼女は、

「ミゲルの事は好き。今は愛し始めたところ。これから貴方をどんどん愛していくと思う。
ミゲルがいてくれるだけで安心するの。
信じられる人が隣りにいてくれるだけで、幸せなの。
だからこれからは愛情が減る事はないわ、増えるだけよ。」
と言ってくれた。

アナの愛情の器には沢山俺への愛が満タンにあったが、溢れるのではなく減らしていったのだろう。
俺はもう少しで満タンの所で器が壊れた。
クララは器に今溜め始めたのだ、これから短期間で満タンになるか、時間をかけて満タンにするかは俺次第だ。

これから俺のクララへの溢れた愛情をクララの器へ注ごう。
1日でも早く満タンにする為に。


俺に似た彼女との恋愛はこれからなのだから。









《完結》



*************************
長く間を空けてしまい、申し訳ありませんでした。
それでも読んで下さった方々、ありがとうございました。
目に止めて読んで下さった読者の皆さん、本当にありがとうございました。

これからもぼちぼち書いてまいりますので、よろしくお願い致します。








しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

あなたの思い通りにはならない

木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。 しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。 *後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

ミュリエル・ブランシャールはそれでも彼を愛していた

玉菜きゃべつ
恋愛
 確かに愛し合っていた筈なのに、彼は学園を卒業してから私に冷たく当たるようになった。  なんでも、学園で私の悪行が噂されているのだという。勿論心当たりなど無い。 噂などを頭から信じ込むような人では無かったのに、何が彼を変えてしまったのだろう。 私を愛さない人なんか、嫌いになれたら良いのに。何度そう思っても、彼を愛することを辞められなかった。 ある時、遂に彼に婚約解消を迫られた私は、愛する彼に強く抵抗することも出来ずに言われるがまま書類に署名してしまう。私は貴方を愛することを辞められない。でも、もうこの苦しみには耐えられない。 なら、貴方が私の世界からいなくなればいい。◆全6話

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

エレナは分かっていた

喜楽直人
恋愛
王太子の婚約者候補に選ばれた伯爵令嬢エレナ・ワトーは、届いた夜会の招待状を見てついに幼い恋に終わりを告げる日がきたのだと理解した。 本当は分かっていた。選ばれるのは自分ではないことくらい。エレナだって知っていた。それでも努力することをやめられなかったのだ。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

処理中です...