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母の話
しおりを挟む「あーーさーーみーーーー!」
インターフォンを鬼鳴らしている母が叫んでいた。
恐る恐る玄関を開けると、鬼の形相の母が開口一番、怒鳴った。
「あんたって子は、どんだけ心配かけたか分かってるんかーーーーー!」から始まり、小一時間ほど怒られまくり、喉が渇いたと一旦休憩した後、また怒られ、ようやく母は落ち着いた。
「ハア、疲れた。それより身体は本当に大丈夫なん?」
「うん、とっても良い先生で入院中も何かと気遣ってくれてたから精神的にも楽だった。」
「そう、なら良かった。それより麻美はここで子供を産むの?」
「そうしようと思ってる。実家はあの二人にバレてるし、いつかビクビクしてるのも、お母さんやお父さん、陸に何かあったらと思ったら家から出るしかなかった。
瑞希は仕事があるから、ずっとはいられないし…。そんな話しをしたらここがあるからここに住めって言ってくれて…。お母さんに言ったら反対されると思って黙って来ちゃった…。ごめんなさい…。
いずれは出て行こうと思ってるけど、せめて子供を生んでからにしようと思ったら、気が楽になった。
ここに来た時は、一人で全部やらなきゃって思ってて、でもあの人は執拗に私に連絡してこようとするし、仕事も病院も保育園も急いで探さなきゃって焦ってたら倒れちゃって…。」
「ごめんね…頼ってもらえなかったのは悲しかったけど、お母さん、聞いたら反対してたと思う。
麻美は正解だったんだと思うよ。
でも、一人で、それも身重で、知り合いもいない所で倒れて入院してたって聞いて…お母さん…身体が震えたよ…お願いだから、お母さんでもお父さんでも陸にでもいいから、相談して…でないとお母さん…あの二人のこと殺してまう…」
「ごめん…でも物騒な事は言わんといて…」
「心配した…心配したよーーーーー」
と今度は泣き出して止まらなくなった母が落ち着いたのは、もう日がとっくに変わったころだった。
次の日、起きたらお味噌汁の匂いがして、ガバッと起きた。
そうだ、お母さん!
急いで一階に降りると、
「麻美!階段、駆け降りたらあかん!あんた、妊娠してるって分かってる?」
「あ、はい…すみません。おはよう…」
「おはよう、朝ごはん食べよう!」
私が支度する間に父に電話をしていて、私に変わると父は怒鳴りはしなかったが、心配したと怒られた。
私の声を聞いたし、お母さんもいるから今度の週末にこっちに行くと言って電話を切った。
「さあさあ、食べよ、話しもあるし。」
「話し?」
「まあまあ、ご飯食べてからね。」
久しぶりの母の手料理を食べるとやっぱり安心出来た。
洗い物を済ませて、洗濯物を洗濯機に入れてから、母が話し始めた。
雅彦からの電話は一日に一回は必ずかかってくる事。
週末になると必ず家に来る事。
毎回玄関で土下座するので、私の事を考えてるならこんな事しないで欲しいと言ったら、次から土下座はしなくなったが、全く諦めないから、家にあげ、最初から今までの事を事細かに、聞き出した事。陸がいたから陸が聞いてくれた事。
一度、あの女も追いかけて来たのか、近所で言い争っている所をパトロール中のお巡りさんに注意されていた事。
その際、あの人の顔を覚えていたお巡りさんだったので、交番まで連れて行かれた事。
あの二人はどうしたいんだか分からない…。
「雅彦はなんて言ったの?」
「それがね…」
そう言って話し始めた雅彦の話しは、私が思っていたものとは違っていて、吐き気がするほど気分が悪くなる話しだった…。
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