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弁護士と共に
しおりを挟む雅彦との話しも落ち着き、二人でリビングに行くと、父と母も帰ってきていて、わんさか食材とお酒を買ってきていた。
今から飲みたい父と、弁護士さんが来るのにそれどころではないと断固反対している母でリビングは大騒ぎだった。
私と雅彦は、それをジッと見ていた。
ハッとした二人は、
「雅彦くん、君もちょっと摘みながらビール飲みたいよね?」
「何回も何回も後ちょっとで来られるんだから、その時でええやんって言うてるの!」
「変わらんいうてるやろ、どうせ来るんは友利なんやし!」
「お父さんもずっと運転してきてくれたんだもん、一本くらいええやん。」
「ほら、麻美もそう思うやろ?」
「もうーー知らんからね!大事な話しやのに!」
「麻美と雅彦くんがシラフなら大丈夫やろ。陸もおるし。」
そう言って上機嫌にビールを飲み始めた父は、
「で、仲直り出来たん?」
「仲直りっていうか…様子見っていうか…」
「ふう~ん、ま、あっち片付けないとあかんか。」
「お父さんと弁護士の人とはどういう関係なの?」
「高校の同級生。親父さんも弁護士で、大阪の親父さんの事務所で働いてる。」
「今日はその人もここに泊まるの?」
「どっかホテルに泊まるんちゃう、さすがにここには泊まらんやろ。」
「泊まるなら準備しとかないとと思ったけど…。あ、お父さん、ビールは一本だけだよ!」
「分かってるよ、さすがに大事な娘の一大事に酔って弁護士に相談は出来ないからな。」
洗濯物を取り込もうと立ち上がったら、ふらついてしまった。
お父さんと雅彦がサッと支えようとしたが、
雅彦の方が早かった。
「麻美、大丈夫か?少し横になった方がいいんじゃないの?抱っこしようか?」
「そんなガリガリで抱っこされたら怖いよ。大丈夫、少しふらついた。でも、ちょっと休もうかな…ビールの匂い、気持ち悪いかも…」
「あ、ごめん、麻美…気付かなかった…」
「お父さん、良いよ、少し休めば大丈夫だから。」
雅彦が心配して、部屋まで付いてきた。
「もう大丈夫だから。戻ってくれていいよ。」
「ずっと一人で耐えてたんでしょ?今は側にいさせて、心配だから。」
「分かった。眠っちゃうかも。」
「良いよ、手、握っていい?」
「うん…」
久しぶりの雅彦の大きな手と温もりにすぐに眠くなる。
雅彦が布団の上から胸を優しくトントンするうち、気付けば眠ってしまった。
深い眠りに落ちる瞬間、
「やべ、久しぶりの麻美の胸…」と呟いた声を拾ったが、起きた時には忘れていた。
「・・・み、麻美、起きて、もうすぐ弁護士さん来るって、麻美、起きて。」
「うーーーーん、起き…れない…」
「ほら、起きないとチュウするよ。」
ガバっ!
「起きた!」
「そんなに…拒否らなくても…」
「そんな事したら雅彦止まらないでしょ!あ、思い出した、私の胸触ったでしょ!眠りに落ちる時、ボソッと言った!」
「違う違う、布団の上からだから、直じゃないから!トントンしただけだし!」
「シャワー浴びたいけど、時間ないよね…。顔洗ってくる。」
顔を洗ってから、雅彦とリビングに戻ると、ダイニングテーブルには母の手料理が並んでいた。
「うわあ、大量やね」
「男ばっかりやからね。麻美はサッパリした方が良いのかなと思って、五目ちらしとか豆腐ハンバーグとかあるからね。」
「ありがとう、手伝わなくてごめん。陸は?」
「部屋にこもってなんかやってる。そろそろ来るから、麻美呼んできて。」
「分かった」
陸を呼びに行く私の後ろを雅彦が付いてくる。
「なんで付いてくるの?」
「だって少しでもくっついていたいから。」
「だからって家の中でこんなにくっついてたら邪魔だよ。」
「じゃあ手、繋ぐ。」
「じゃあってなんなん?何で、手ぇ繋いだら邪魔にならないって思った?」
「なんとなく」
「ハァ~雅彦ってこんな甘えたなの?」
「え?なんて?」
二人で廊下でぎゃーぎゃーやっていたら、
「うるさいんだけど!」と陸が出てきた。
「ちょうど良かった、そろそろ弁護士の先生来るから出てきなさいって。」
「分かった、行くわ」
三人でリビングに着いた時、
ピンポーンとなった。
リビングにあるインターフォンの子機のカメラを見たお母さんが固まった。
父、私、陸、雅彦でキョトンとしていると、母が、
「その方の事はお呼びしていませんし、この家にあげるわけには行きません。
おかえり下さい。
娘に危害を加えられたらたまりませんから!」
みんなで、え⁉︎と思って子機のカメラ画像を見た。
私は、身体が震え出し、歯をカタカタ鳴らし、気を失った。
そこには、弁護士の方と一緒に、あの人が映っていた。
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