私は貴方から逃げたかっただけ

jun

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ブチ切れる母と弟と雅彦

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雅彦視点


麻美が歯をカタカタさせて、身体もカタカタと震わせ、倒れた。
咄嗟に手を出せたから、床に倒れる事はなかったが、もし頭でも打っていたらと思うと、怒りで身体が熱くなる。

なんで、あの人が⁉︎
なんで、ここが?

あの人はこうやって麻美を追い詰めてたのか。

許せない!


麻美をソファに寝かせた後、外に行こうとして陸くんに止められた。

「今、雅彦くんがあの人に会うのは得策じゃない。おそらくあのアプリを消すまでの間に居場所を特定されたんだと思う。
多分、姉ちゃんが病院に入院してたからここに今まで来なかったんだと思う。
雅彦くんがここに来たから急いできたんだよ、焦って。
だから、後は弁護士の先生とおとんに任せよ。その方が早い。
今は姉ちゃんに付いててやって。
よろしくーーー!」

「・・・・分かった、そうだね。」

「陸、随分落ち着いてるなあ、お母さんはあかんわ、我慢出来ひん。
ああいう女はとことんまでやらな諦めない女やわ。
だったらお母さんもとことんやるわ!
我が子、こんなにやられて我慢できるほどお母さん、優しないし!」

「いやいや、俺だってキレてるから!あんなイカれてる奴見たことないわ!
だからおかんも姉ちゃんも関わったらあかんねん!
今は、おとんと専門家に任せるのが一番やっていうてるだけやん!」

「俺もあれほど悪質な人間見たことなくて、脳が追いついてないけど。
あんな麻美の姿見たら、我慢出来ない!
あれほど震えて、あんなに怯えて、どんだけ追い詰めたのかと思うと、俺…。
ちょっとぶっ飛ばしてきていいですか?」

「だからあかんて言うてるやろが!
あんたが行ったら面倒な事になるっちゅうの!あの女は今、あんたをお腹の子の父親にする為にここまで姉ちゃんを攻撃してんの!
分かる?なーんも考えてない、あんたが行っても丸め込まれて終わるのが目に見えてるっちゅうの!」

「何にも考えてないことないし!」

「じゃああの女が姉ちゃんに送ったエコー写真のトリック、知ってんの?」

「え?エコー写真?何それ。」

「ハァ~~~それすらまだ聞いてないでしょ?俺とおとんはさっきおかんから聞いたけど、雅彦くん知らないやろ?
あの女、赤ちゃんのエコー写真態々姉ちゃんに送ってきたんやって!
でもアホやから、それが証拠になった。
それすらもあの女は気付いてない。
それを逆手に取ろうってなってたのに、このタイミングであの女が来やがった。
この打ち合わせすら出来ない状態で、こっちも一気に攻めなあかんねん!
だから下手に動くなって事!分かった?」

「麻美が起きるやろが!うるさいんじゃ、男ども!」

「おかんの声の方がうるさいわ!」

「あの、そういえばお義父さん達は何処に行ったんですか?」

「どっか行ったんちゃう。ここにあのあんなを入れることなんか絶対出来ないから!
そういや見た?あの女の顔!
してやったりみたいな顔してたわ。
おーーーこわ。あんな性悪初めて見たわ。
どんな人生歩んだらあーなるんだか!」

「麻美は、今までどんな嫌がらせされたんですか?」

「家にいた時は短かったし、姉ちゃんは自分から言う人じゃないから、正確には分からんけど、少なくとも俺が二回着拒設定した。
えげつない数の着信だった。
そんで、家の前でずっと立って警察呼んだ。パトロールもしてもらってた。
友達んとこ行ってた時に、エコー写真送ってきたらしい。
こっち来てからは、入院してたから大丈夫だったんちゃうかな。」

「そんなに・・・・一人でずっと…」

「麻美は、基本優しい子やから嫌いな子を作らない。“嫌いな子”じゃなくて“苦手な子”として接しようとする子が、あれほど拒否するんは、よっぽど怖かったんやと思うよ。
お腹の子、守ろうと思ってここまで逃げたんやと思う。
なのに!あの腐れ、思い出すたび手ェ震えるほど腹立つわ!」

「俺もです…こんなに殺意が沸いたのは初めてです。俺一人だったらどうなってたか分かりません!」

「とにかく、今どうなってんのか、おとんに聞こう。わけわからんのは嫌やから。
でも、向こうも訳分からんかもやから、メッセージ送ってみるわ。」

「あ、電話かかってきた!スピーカーにするから待って。」

『麻美は大丈夫か?』
「起きてこないからまだ寝てると思う。そっちはどうなってんの?」
『今、友利の車ん中で喋ってるけど、アレはあかんわ、話しにならん。
アレがおったら話し出来ないから、駅まで送ってくるわ。
日を改めて話しする事になった。
友利がここにまた来るようなら警察に連絡するって弁護士の立場で言ってくれた。
ちゃんと連絡先も聞いて、友利が間に入ってくれる事になった。
直接また麻美や雅彦くんに連絡取ろうとしたら、既に大阪の警察であの女は付き纏いで顔も名前も登録されてるから、こっちの警察にも伝えて逮捕してもらうって警告した。』
「そっか、じゃあ後は帰ってきてからやな、気をつけて。」
『ああ、麻美、よろしくな。』

電話が切れると、

「あかんあかん、お母さん、あかんわ、何かしないとコップやら茶碗やら壁に叩きつけそうやわ。胡麻和え作るわ。
すり鉢で胡麻擦ると落ち着くから。」

「「え⁉︎」」

「胡麻!胡麻をするの!意外とスッキリするからやってみ!」

「そんなん、やらんわ!」



結局、交代で胡麻をすった。
プチプチして、意外と無心になれた。


「あ、そういえば、エコー写真ってなんですか?」

「「知らんのかい!」」

その後、お義母さんが説明して、キレた俺は、また胡麻を擦り始めた時、麻美がリビングに白い顔で現れた。












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