私は貴方から逃げたかっただけ

jun

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失敗した女

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菜緒視点


あまりにも上手くいき過ぎて、やり過ぎた。

そもそもあの男が、妊娠した事が分かるとすぐに奥さんの所に逃げたのが、悪い。
本気で好きだったし、結局戻ってくると思っていた。
嫌われるのも嫌で、奥さんの所に乗り込む事もしなかった。
そんな事をやっていたらすでに妊娠2カ月になっていた。
どうしようと思っている時、店に来た新しい常連カップル、雅彦くんと麻美ちゃん。
二人はプロポーズもうまくいき、今が幸せ絶頂なんだろう。
私の中で嫉妬という真っ黒な塊が生まれた。

私は長い期間、既婚の男に自分の若く美しかった時間を捧げたのに、
「ごめん、菜緒との子供はいらない。」
と言って大金を置いて出て行った。

目の前のカップルはそんな事知りもしないので、楽しそうだ。

来る度来る度、塊は大きくなる。
少しくらい意地悪してもいいじゃない、そう思ってほんの少し、雅彦くんの身体に触れるように接した。
少しずつ少しずつ、彼女に私の黒いモノが染みていった。
そして、思った。
“奪ってしまおう”と。

だが、男がダメだ。
敏感に彼女の方は私のしている行為に下心があると感じ取った。
なのに彼氏の方は彼女一筋なのか、全く靡かない。
痺れを切らし、強硬手段に出た。
まんまとハマったかに見えた。

何か変だと思ったのか、それから男は決して私に近付かなかったし、彼女の方は店に来なくなった。
あれやこれやと手を尽くしたが、堕とせなかった。
最後の手段で、男をなんとか捕まえて妊娠した事を告げた。その後、彼女に彼氏の子供を妊娠したと告げた。

後は面白いほど拗れていった。

店に来てた時に二人には監視アプリを入れていたから、彼女が実家に帰ったのが、分かった。
電源はきっていたようだが、たまに入った電源で居場所が分かった。

電源なんか関係なく何回も何回も電話したし、メッセージを送った。
その後は着拒されたのか、何も出来なくなったので、携帯を新しく契約したので、新しい電話で、電話をした。
大阪にも行って、彼女の家に行った。
警察を呼ばれてしまったが、楽しかった。
男に付き纏い、その最中に彼女から電話がかかってきた。
だから態と私の声を聞かせた。
私の赤ちゃんのエコー写真も送った。
男が新しく契約した携帯もトイレに行ってる隙に電話をし、着拒になるようにした。
男と彼女が連絡出来ないようにした。

しばらくした時、彼女の携帯に電源が入った。場所は高知だった。
だが、どうやら体調を崩したのかずっと病院のままだった。

その後、退院したのか一軒家にいるようだ。

流石に高知には何回も行ける距離ではない。
どうしようかと思っていると、男が動いた。
大阪の後、四国に向かっている。

だから私も高知に来た。

まさか、彼女の家族も、弁護士もいるとは思わなかった。

ボロボロの彼女とボロボロの男ならなんとでもなると思ってここまで来た。

なのに、今、弁護士の車の中で、彼女の父親からの殺さんばかりの視線を浴び、何故この場所が分かったのかと問い詰められている。
弁護士は法的手段に出るとも言っている。

もうここまでだ。

全て嘘ばかりだし、全てが私の悪質な嫌がらせだけだ。
そして、結婚式も取りやめとなり、婚約もなくなった責任を取らされるだろう。

でも、スッキリした。

表には出さないが、笑顔の裏で傷付き、顔を歪めている人間の前で幸せアピールなんてすると、要らない恨みを買うぞという勉強にはなっただろう。

後日、今後の賠償の件で連絡すると話しが纏まり、私は最寄駅で下ろされた。
彼女の父親が去り際に、

「次、娘への悪意を確認したらどんな手を使ってもお前に娘がやられた事を全部返す。
どう返すかは知らんがな!」
と、捨て台詞を吐いてから帰っていった。


もう、この嫌がらせも終わりだ。
私のストレス発散はここで終わった。














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