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嫌だ嫌だ嫌だ シモン視点
しおりを挟む執務室から自室に移動させられてから軟禁されている。
出入り口のドアにも夫婦の寝室へのドアにも鍵がかけられ、部屋から出る事も出来ずにただベッドに腰掛け、床を見つめている。
最初はシャルを呼び続けた。
ドアを叩き続け、“違うんだ”、“話しを聞いて欲しい”、ひたすらそんな事を叫び続けた。
どれだけ叫び続けたのかわからなかったが、突然ガチャリと鍵が開いた。
父と母、ハリスが入ってきたと思ったら、父に思いっきり殴られた。
受け身が取れず、倒れた所をまた殴られた。
2発、3発、何度も殴られた後、
「シャルは倒れた。今は本邸で休ませている。
お前にシャルは会わせない。
いつまで会わせないかはシャル次第だ。
そのまま離婚もありえる。
もし離婚となったらロビンをどうするかはマルティノ侯爵家と相談する事になるだろう。
お前の言い訳など聞かぬ。
ただただ己の罪を悔いろ。
貴様がした事は、シャルの、お前を幼い時から慕ってきたシャルの思いを、砕き、足で踏みつけ、汚し、ボロボロにした。
あの子はお前を許さないだろう。
目の前で他の女を抱いていたんだからな!
シャルがお前をどうするかを決めるまで、この部屋から出す事はない。
ここから出したらシャルに何をするか分からないからな。
自分が何をし、何を失ったのかを実感していろ。
自害なんぞ、するなよ。
お前には死ぬ資格もない。
あのメイドには避妊薬を飲ませたが、もしあのメイドがお前の子を身籠ったらこの家からあの女とここを出ていけ。
住む所は用意してやる。
二人仲良く暮らせばいい。
その代わり二度とここに戻る事も、ロビンに会う事もない。
以上だ。」
言うだけで言うと、父は部屋から出て行った。
残った母は、
「私は実の息子よりもシャルの味方よ。
貴方がした事は、人として、夫として、最低最悪よ。
あんなに貴方をずっと慕っていたシャルをどうして裏切ったの?
どれくらい裏切っていたの?
あのメイドを抱いて、シャルへの罪悪感はなかったの?
あのメイドを抱いたその手でシャルやロビンに触っていたの?
母親の私ですら嫌悪感が湧くのに、妻のシャルは私の比ではないわよ。
貴方も新婚で色々大変なのでしょうけど、よりにもよって妻と息子が帰ってくると分かっていたその日に浮気しようと思う貴方の神経を疑うわ…」
母も出て行くと、ハリスは黙って俺を見つめていた。
父に殴られた顔が腫れてきたのか、上手く口が動かないが、
「・・・・・お前も俺に言いたい事が…あるんだろ…」となんとか言うと、ハリスは黙って洗面所の方へ行き、タオルを濡らし、薬箱を持って戻ってきた。
「腫れてきました、タオルで冷やして下さい。後で薬を塗って下さい。
・・・・・シモン様…シャルーナ様は倒れるまで一言も話しませんでした…。
突然叫んだ後、お倒れになりました…。
あんなシャルーナ様を見た事はございません。
いつもキラキラした笑顔で私達に話しかけてくれていたこの屋敷の太陽が、消えてしまいました…。
何故…どんな誘惑にも屈さなかった貴方が、今になって誘惑に負けたのですか。
・・・・とても残念です…。
どうか…シャルーナ様とロビン様を悲しませるような事をしませんよう、お願い致します…。」
ハリスが出て行くのと入れ替わりに護衛が一人ドアの横に立った。
俺はノロノロと立ち上がり、広い自室の自分のベッドに腰掛けた。
そして、どうしてこんな事になったのかを思い出していた。
大好きなシャルと結婚して、毎日一緒に居られる幸福を実感していた。
毎晩シャルを抱き、事が終われば抱きしめて二人で眠る幸せ。
朝目覚めれば、すぐ横にいる愛しいシャル。
そして結婚してすぐにシャルの妊娠が分かり、抱き合って喜んだ。
酷い悪阻で寝込むシャルが可哀想で見ていられず、変わってあげたいと思った。
夜は眠りも浅く、俺も寝不足になると寝室を別々にした。
寂しかったが、辛そうなシャルがただただ心配だった。
そのうち悪阻は落ち着いたが、偏食でなかなか体力が戻らなかったシャルだったが、段々大きくなるお腹や、動き出す我が子に感動したりと、産まれるまではあっという間だった。
出産が始まると、廊下まで聞こえるシャルの苦痛な叫びに祈り続けるしかなかった。
丸一日経った時、微かに「オギャア」と聞こえた時は、涙が止まらなかった。
自分では分からないが、俺にそっくりだと皆に言われた息子は、小さくて、とても小さくて、温かかった。
それからのシャルはロビンにかかりきりになった。
俺も出来る事は協力した。
3ヶ月が経った頃、そろそろ寝室を戻そうとシャルと話し合った時は嬉しかった。
また二人抱き合って眠れる事に喜んだ。
そして、休養も兼ねてシャルとロビンはマルティノ侯爵家に里帰りをした。
2週間は短いようで長かった。
早く早くと待ちかねた。
寂しくなった俺は、シャルの部屋のベッドに横になり、微かに残るシャルの香りに欲情してしまった。
だからシャルのベッドで一人欲望を発散していた。
すると、すぐ近くにシャルの専属メイドのリリアがいた。
「旦那様…お一人では発散出来ないでしょう。
私がお手伝い致します…」
あまりにも驚いて拒否出来ずにいると、リリアは俺の股間に顔を埋めて口で慰め出した。
久しぶりの快楽に身を委ねてしまった。
リリアの口に欲を吐き出すと、徐にメイド服を脱ぎ出した。
「私の中に旦那様の欲を下さいませ…」
その後は愛するシャルのベッドでリリアを抱いた。
それからはシャルが帰るまで、とリリアを抱いた。
シャルが帰ってくるまであと1週間だった。
シャルが夕方帰ってくる当日、これが最後だからと執務室で事に及んでいた。
仕事を片付けるから誰も執務室には来るなと言いつけ、リリアと何度も睦み合っているとハリスがドアをノックした。
後にしろと怒鳴りながら腰を振っていると、
「奥様がお帰りなりました」と言って、ドアを開けた。
開けたドアの向こうには目を見開いたシャルが立っていた。
俺はリリアに突っ込んだまま、執務机でグッタリしている半裸のリリアの腰に手をかけたまま、シャルを見つめていた。
いち早く正気になったハリスがすぐ様シャルを執務室から出した。
「シャル、待って、シャルーーー」
リリアに突っ込んだまま叫ぶ俺をハリスは無表情で見た後、鍵を閉め俺達を閉じ込めた。
すぐにリリアから離れ、下着とトラウザーズを引き上げ、ドアに駆け寄った。
「シャル、シャル、待って!シャル、違うんだ!シャル、行かないで!シャルーーー!」
ドンドンとドアを叩き続けても、ガチャガチャとドアノブを動かしても、分厚い執務室のドアは開かない。
叫び続けていると、
「わ、わたし、お、奥様に、あ、あやまらないと、わ、わたし…」
ガタガタ震えながら乱れた服を直しているリリアがブツブツ呟いていたが、無視してドアを叩き続けた。
叫び続け、声も掠れているがシャルを呼び続けた。
どれほど時間が経ったのか分からない頃、
「シモン様…今からドアを開けて、中にいるリリアを出します。
シモン様は自室にて待機していて下さいませ。
護衛がシモン様を自室までお連れ致します。
ドアから離れて下さい。私と護衛とメイド長
が入りますので、中にいるお二人は決して動かないで下さい。
もし暴れたり、この部屋から逃げるなどの時は拘束させていただきます。
大旦那様の許可は得ています。」
ハリスが鍵を開けているようだ。
隙を見て逃げようかとも思ったが、護衛騎士3名とハリスは解錠したドアを開けた時から俺から視線を外さず、両脇から二人の騎士が俺の腕を掴んでいたので抵抗は諦めた。
メイド長も素早く執務室に入ると、リリアの乱れた服を軽く整えてからリリアを立ち上がらせ、引きずるように部屋を出て行った。
この1週間、何故あんなにもあのメイドを抱いていたのか自分でも理解出来ない。
特別可愛いわけでも、色気があるわけではなかった一使用人なのに、箍が外れたように何度も何度もリリアを抱いた。
確かにシャルが妊娠してからは一度も抱いていなかったので溜まっていたのは間違いないが、シャル以外の女性に興味も食指も動かなかったから耐えられた。
なのにあの時咄嗟に拒否出来なかった身体は“女”を求めていた。
シャルではない女を・・・。
そういえば…避妊薬は飲んでいると言っていたがそれは本当なのだろうか?
もし…妊娠してしまったら…どうなるんだろう…。
俺は…どうなるんだろう…
シャルには会えなくなるんだろうか…
捨てられるんだろうか…
ロビンにも会えないんだろうか…
シャル…シャル…シャルーナ…ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい…
気付けば自室のソファに座らされ、一人泣いていた。
そして父と母、ハリスがやってきて殴られた。
それからは食事も取らず、ずっと床を見つめていた。
眠気も全く無く、あの時のシャルの顔が浮かぶ度、シャルの名を呼び続けた。
カーテンの隙間から光が漏れ始めた頃、夜が明けてまもないにも関わらず馬車が屋敷に入ってきた音が聞こえた。
本邸への客らしい。
まともな思考も出来ない状態だったが、ふと気付いた。
“シャルとロビンを隠される”
バッと顔を上げドアを見た。
護衛が突然顔を上げた俺をジッと見ていたので、
「父上かハリスを呼んで欲しい…朝早くからの来客が誰か教えて欲しいんだ…。」
護衛はドアを薄く開け廊下側にいる同僚騎士に小声で何か話しているのでハリスに伝えに行ってくれるのだろう。
「今ハリス様にお伝えしています。少しお待ち下さい。」
「ありがとう…分かった。」
それからしばらく待ったがハリスはまだ来ない。
そのうち馬車の音が聞こえた。
急いで窓際に行くと、見慣れたシャルの実家の紋章がついた馬車が正門に向かっているのが見えた。
急いで窓を開けようとすると、打ち付けたのか窓は開かない。
ガチャガチャと動かしても開かない窓に向かってシャルを呼ぶが聞こえるわけもなく、馬車は門を出て行ってしまった…。
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