手紙〜裏切った男と浮気を目撃した女が夫婦に戻るまで〜

jun

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謝りたい シモン視点

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*今回は短いので18時にも投稿します。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






それからは父に事細かに説明させられた。

メイドのリリアには強めの避妊薬を飲ませて、1ヶ月地下の貴族牢に入れ、妊娠していればここを出され、用意した屋敷で出産後、修道院に送り、子供の処遇は追々考えるということになった。

俺はシャル次第で処罰が決まるらしい。

「シャルはマルティノ侯爵の所で静養する事になった。もちろんロビンも一緒にな。

私も男だから溜まった欲を吐き出したい気持ちも分かるが、まさかお前がシャル以外の女に反応するとはな…。
娼館の女ですら抱きたくないと言ってたお前がこんな事になるとは…。
お前もただの男だったのだな…残念だ…。」

そう言うと父は出て行った。

それからの俺は全く食欲はなかったが、軽食をハリスに監視されながら無理矢理食べさせられた。
軟禁状態でも執務はさせられた。
ボォーっとしてるなら仕事でもしろと大量の書類を渡され、ひたすら仕事をした。

夜は毎晩シャルとロビンの事を考えていた。

シャルに謝りたかった。

とにかくシャルに捨てられるのだけは嫌だった。

会う事は出来ないだろうから、せめて手紙だけでも渡してもらえないだろうか…。

渡してもらえなくてもとにかくシャルに謝りたかった。

毎晩書いては書き直しを繰り返した。
書けば書くほど手が震えた。
あの時の場面を思い出すと、羞恥と恐怖が湧いてくる。
最愛の妻にあんな場面を見せた羞恥、
そして俺の裏切りがバレた恐怖、
なによりシャルに離婚されると思っただけで手が震える。

何度も何度も書き直しても書き終わらず、1ヶ月が経とうとした頃、父がやってきた。


「メイドは妊娠していなかったようだ。
シャルにメイドの処罰を確認してもらってから修道院に送る。

もし妊娠なんぞしていたらシャルは間違いなくお前と離婚していただろう。
首の皮一枚繋がったな。
だが、状況はなんら変わらない。

お前はこれからどうしたい?
近々あちらに行って諸々相談してこようと思う。
もし、シャルーナが離婚したいと言ってきたらどうするつもりだ?
ロビンはこちらで育てたいが、シャルは手放さないだろうな…。

シャルがお前を拒否しているから今回はお前を連れてはいかない。
でもあちらにお前自身が謝罪はしなければならない。
シャルが会ってくれるのか、マルティノ侯爵がこちらに来てくれるかは相談してくる。
それで良いな?」

「・・・俺は…シャルと離婚したくありません。
たとえ許してもらえなくても、二度と会えなくても、離婚はしたくありません。
シャルと、シャルとロビンがいなければ生きている意味がありません。
何でもします、顔も見たくないなら二度と顔を見せません。
声も聞きたくないのなら一言も話しません。
近付かれたくないのなら近づきません。
お願いです、離婚だけは…離婚だけはしたくないと…伝えてもらえませんか!お願いします…お願いします…」

床に膝をつき、土下座して父に頼み込んだ。

「伝えるが、それを決めるのはシャルだ。
シャルがもし離婚を望んだらそれに従うしかない…。
出来る事なら私もお前達には離婚して欲しくないがな…。」

「手紙を…手紙を書くので渡してもらえますか…。毎日書くからと…。
読んでもらえなくても、毎日書くからと…」

父になんとか了承してもらい、なんとかその晩に書き終えると、ハリスを呼んでもらい手紙を父に渡して欲しいと預けた。


シャルは読んでくれるだろうか・・・
破り捨てるのだろうか・・・
また…泣かせてしまうのだろうか…。

どうしているのだろう…
ちゃんと眠れているだろうか…

どうして俺はあんなことをしたんだろう…
どうしてシャルを裏切ったんだろう…
どうして、どうして、どうして・・・・。

泣きたいのはシャルだろうに、
俺に泣く資格もないのに、
涙は止まらない。

もうこの手でシャルを抱きしめてあげる事も、
キスをしてあげる事も、
シャルの涙を拭ってあげる事も出来なくなるなんて、耐えられない・・・。

そしてまた眠れない夜を過ごした。

朝になり、仕事をして、夜には短い睡眠をとっては悪夢で飛び起きた。

そんな日々を過ごしていたある日、ハリスが俺の元にやってきた。

「シモン様、お手紙が届いております。」

手紙?

ハッとして、ハリスから手紙を受け取り差出人を確認した。


差出人は、シャルだった。
























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