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可愛い妻が怒っている シモン視点
しおりを挟む朝早く父が部屋に飛び込んで来た。
「シモン!大変だ、シャルが今から来るそうだ!」
「は?」
あまりにも驚いて口が開いてしまった。
「なにやらシャルがお前が心配で大騒ぎなのだそうだ。
モーリスとネイサンとロビンも一緒らしい。
何があったのか詳しい事は分からんが、とにかく夜明けすぐに向かったらしい。
そろそろ着くぞ!」
「はあ⁉︎」
突然のシャルの帰宅に驚いて固まってしまった。
ゆっくり朝食を食べていた俺は、とにかく支度しないとと動き出した。
着替えたら本邸に来いと父は言って走り去って行った。
急いで着替えて本邸へ向かう。
本邸もバタバタと使用人達がシャル達を迎える準備で走り回っている。
とりあえず両親の元へ行くと、母が、
「何かあったのかしら…。シャルはかなり興奮しているそうよ。
とにかく貴方が心配だとか…。どうしたのかしら…。」
不安気な顔で軽めの朝食を取っている。
簡単な朝食を食べ終えた両親と俺は玄関で到着を待った。
左程待つ事もなく到着が告げられた。
三人で外に出て待っていると、馬車のドアが開けられた。
義父と義兄が降りるとシャルが飛び出してきた。
手を出していた義父の手を無視し、飛び降りたシャルは、俺を見つけると走り出したので、俺も駆け出すとシャルが飛びついてきた。
「シャル、シャル、何もされていない?
無事なの?大丈夫?もう大丈夫、私がシモンを守るから!」
俺より頭一つ小さいシャルが、ギューっと俺を抱きしめて、俺の事を心配している。
何のことやら分からないが、抱きついて俺を守るなんて言ってるシャルが可愛くて、嬉しくて俺も強く抱きしめた。
「こんな朝早くからどうしたの?ロビンもいるなら中に入ろう、身体が冷えてしまうよ。」
シャルから少し身体を離し、そう言ってもシャルは離れようとしない。
困っていると、
「シャル、とにかく中に入ろう。ロビンが風邪をひいてしまうぞ。」と義父に言われてようやく離れたが、俺の服を掴んで離さなかった。
屋敷に入って、ロビンを先ず温かい部屋に連れて行ってもらい、俺達は玄関のすぐ近くにある応接室に向かった。
応接室に入っても俺から離れないのでシャルは俺の横に座った。
それぞれが座り、お茶が出されるとシャル以外の全員がお茶を一口飲んだ。
「「「「「フゥー」」」」」
「それで何があったの、シャル。
とにかく温かいお茶を飲んで落ち着こう。」
シャルにカップを持たせると、一口飲んだ。
フゥーと一息付いた。
その後お茶をゴクゴク飲み、カップを置くと一気に話し始めた。
「昨日、お父様から香水の事を聞いたの。
その後はシモンの身体の事が心配で眠れなくて、色々考え込んでいたら、どうしてリリアは今その香水を使ったんだろう、私が居なかったからなんだろうけど、妊娠中はずっと寝室は別だったんだもの、その時を狙ってもおかしくないと思うの。
でもそうはしなかった。
多分存在自体を知らなかったんだと思う。
そもそもリリアは明るくて少しおっちょこちょいだったけど、根は真面目で素直な子だった。
私をいつも労ってくれたし敬ってもくれていたのよ。
その子が急にこんな事するなんて想像できなかった。
だから誰かに唆されたんじゃないかと思う。
外の友人かもしれないし、メイド仲間かもしれないけど、その誰かに香水の事を教えてもらって貰ったか自分で買いに行ったかは分からないけど、その教えた人はリリアに本当に効くのかを試させたのではないかと思ったの。
効くのなら自分も使おうと思ってんじゃないかって。
ならその人は誰に使おうとしているのかと思ったら、シモンの事が心配でいられなくなった…。
またシモンに使われてしまったらと思ったら私・・・」
そこまで一気に話すとポロポロ涙が溢れ出した。
呆気に取られていた全員がシャルを見ていたが、俺はシャルの涙を拭く事に専念していた。
義父がシャルが言った事を改めて説明すると、父が真剣な顔で頷いた。
「確かにあり得る話だ。
シモンを狙ってる訳ではないかもしれないが、放っておいていいものではない。
もし悪用されたら大変だ。
もう一度尋問し直す事にしよう。
使用人の持ち物の検査はしたんだが、もう一度やり直してみよう。
万が一隠し持っていた者がいたなら大問題だ。」
それからは両親と義父、義兄、ハリスで話しを詰める為、俺はとりあえずシャルを連れて本邸の俺の部屋へ連れて行った。
ずっと俺にくっ付いてグズグズ鼻水を吸っている。
「シャル、鼻をかもうね、垂れてきちゃうから。」
ハンカチを出して鼻にあてると、ちーんとちゃんと鼻をかむシャルが可愛くて、思わずクスッとしてしまう。
「シモン!笑い事ではないのよ!あんな訳のわからないものを使われて、シモンに何かあったらどうするの⁉︎
もう絶対あんなもの使わせないんだから!
シモンは私の旦那様だもの!
もう誰にも触らせないもの!
私だけだもの!
私がシモンを守るんだからーーー!」
目を真っ赤にして俺を心配して怒ってるシャルが可愛くて仕方ない。
「ありがとう、シャル。
俺を心配して昨日は寝ていないんだね、隈が出来てるよ。
朝食もろくに食べてないんでしょ、少し何かお腹に入れてから休むと良いよ。
ロビンの事は心配ないし、俺はシャルから離れないから。」
「分かった!」
元気に返事をした後、目の前のお菓子を少し食べてお茶を飲んだら、コテンと眠ってしまった。
抱き上げて、ベッドにシャルを寝かせた後、腫れてしまった瞼を濡れタオルで冷やしてあげた。
シャルの寝顔を見つめた。
何度、この可愛らしい妻は俺を惚れさすのだろう。
シャルの頭を撫でながら、あんなに俺を罵倒していたのに無防備に眠っている愛妻に笑みが溢れる。
しばらく見つめた後、部屋を出た。
ロビンの顔を見たかった。
子供部屋に行くと、ロビンがラグの上でゴロンゴロン転がっていた。
「え⁉︎ロビン寝返り出来るようになったの⁉︎」
と駆け寄ると、転がるのをやめてうつ伏せでこちらを見ていた。
「ロビン!」と呼ぶと、ビタンビタンと床を叩き始めた。
抱き上げて抱きしめた。
少し見ない間に寝返りが出来るようになっていた。
その瞬間を見れなかった事が悲しかった。
「凄いな、ロビン、こんなに上手に寝返りが出来るなんてお前は天才だ!」
と言うと、キャッキャッと笑っている。
乳母のキャシーにシャルの所に連れて行って良いか聞くと、大丈夫だと言うのでロビンを抱いて部屋に戻ると、シャルはまだ眠っていた。
「マ、マ」とシャルに手を出すロビンにまた驚く。
「え⁉︎ロビン、ママって言ったの⁉︎
ロビン、パパって言ってごらん、ほらパ・パ、だよ」
「マ、マ」
「違うよ、パ・パ、パパって言って、お願い!」
「パッパ」
「ワアーーーー、凄いよロビン!そうだよ、パパだよ、パパ!ロビンは天才だーー!」
とロビンを高く持ち上げると、
「キャーーー」と喜んだ。
その騒ぎにシャルが起きた。
「んーー、シモン…ロビン…」とまだ眠そうなシャルは目が半分閉じている。
「ごめんごめん、起こしちゃったね。」
「マ、マ、マ、マ」とシャルに手を出すロビンをシャルの上にうつ伏せでのせると、小さな手で、布団をポンポンと叩いた。
「マ、マ」
シャルを起こそうと一生懸命叩いているが、
「ロビン…母様眠い…後5分寝かせて…」
「マ、マ、マ、マ、マ、マ」と言いながら叩き続けるロビン。
「うーーん、分かった、分かったからロビン…」
そう言うとロビンを捕まえて、自分の横に寝かせると、布団をかけてまた寝ようとしている。
余程眠いのだろう。
「ロビン、おいで、母様はまだお眠らしい。
寝かせてあげよう。」
布団の中からロビンを救出すると、既にシャルは眠ってしまっていた。
ロビンは遊び足りないのか怒っているようだが、可愛い息子を抱っこして静かに部屋を出た。
こんなに穏やかな時間を過ごすのは久しぶりだ。
少し泣きそうになったが、ロビンが顔をピタンピタンと叩くので涙も引っ込んだ。
あーー、この幸せを絶対手放すなんて俺には出来ないと改めて思った。
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