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シモンを守る!
しおりを挟むフォックス侯爵家に行って夜遅く帰ってきた父を母、兄夫婦、私は家族用の団欒室でまったりと待っていた。
そこへ、バーンとドアを開け飛び込んで来た父は、
「やっぱりあのメイドは“魅了”のような物を使っていたぞ!」
まったりしていた私達は先ずバーンと軽く飛び上がり、その後の言葉に全員が、
「「「「エエエーーーーーーー⁉︎」」」」
と叫んだ。
それからは父の話しにまた全員が驚いた。
そんな怪しげな店で売ってる怪しげな物が、実際に心は別として、気になる人、好きな人を堕とすことが出来たなんて信じられない気持ちだった。
それよりも、
「お父様、そんな怪しげな物を使われたシモンに影響はないのですか!
何か身体に不調は出ないのですか!」
「待て待て、王宮研究所に検査に出したばかりだ。
今の所は何も不調はないようだが、これからシモンも検査されるだろう。
侯爵令息に怪しげな薬を使ったのだ、あのメイドはただでは済まないだろうな。
何の香りもしない香水のようなものだった。
それをシモンには大量に使ったのだろう。
最初に匂いを嗅いだマシューは僅かに下半身が反応したと言っていた。
ほんの少し嗅いだだけのマシューが反応したんだ、最初は自分に振り掛けたのだろうが、おそらく自分に振り掛けたのではなくシモンに直接振り掛けたのではないかと思う。
まだ何も分からないがな。
やった事には変わりないが、少しはシャルもシモンとのこれからを考える上で、前向きに考えられるのではないかな…と思わないでもない。」
となんともはっきりしない言い方をする父だが、確かにシモンの意思で抱いていたわけではなかった事にはホッとした。
それでもすぐには戻れない。
あの別邸には戻れない。
これからお義父様やシモンと話し合わなきゃいけない事はたくさんある。
でも以前のようにただただ泣いて過ごすような事はもうないだろう。
それよりもシモンが心配で仕方ない。
何か身体に害になる物ならこれから症状が出るかもしれない。
依存性があるものかもしれない。
心配で堪らない。
顔を曇らす私を見てアンナが、
「シャル、シモンが心配なのは分かるけど、気付くことが出来たのはシャルがシモンを信じたからよ。
貴方がシモンの愛情を疑わなかったからシモンは治療なりなんなり出来るの。
検査が終われば適切な処置してもらえるわ。
だから今はシモンがシモンの意志で浮気したわけではなかった事を喜びましょう、ね。」
「そうだね…。心配だけど今は結果待ちだものね。」
アンナに言われて頷いた。
夜も遅くなったので解散となり、各自部屋に戻った。
ベッドに入ったが、シモンの事ばかり考えた。
自分の意思を曲げられ、強制的に発情させられるなんて酷すぎる。
それをやったのが自分の専属メイドだったなんて…。
あの子はフォックス侯爵家から付けられたメイドだった。
私とシモンが学生時代に雇われたメイドだったが、比較的歳が近かった事もあって、嫁いで来てからは私専属になった。
シモンに好意を持っているなんてちっとも知らなかったし、気付かなかった。
明るくて良い子だった。
シモンに色目を使っている事もなかった。
少なくとも私がいる所ではなかった。
ロビンの事も可愛がっていたと思う。
なのに何故急にシモンを狙ったのだろう。
確かに私がいたら狙いにくいだろうが、妊娠中でも出来ない事はなかった。
だって夜は別々だったのだから。
寝室に忍び込む事も出来たはずだ。
その香水を使えば。
香水を手に入れたのが里帰り中だったのか?
里帰り中にその香水の存在を知ったのだろうか?
何処で?
メイド仲間だろう。
ならそのメイド仲間もそれを持っているということか。
私はハッとした。
ならまたシモンは狙われるかもしれない!
別のメイドが効くかどうかを試させたのかもしれない!
バッとベッドから飛び起き、こうしちゃいられないとベッドから出たが、もう夜中だ。
どうしよう、シモンがまた訳のわからない薬を使われちゃう!
どうしよう、どうしようと部屋をウロウロするが、夜中に馬車を出すわけにはいかない。
シモン、シモン、お願い神様、シモンを守って!
一晩中祈り続けて、ようやく外が明るくなってきたので、急いで一人で着れるワンピースに着替えて、身支度を整えた。
部屋を勢いよく出ると、ライアンがいた。
「ライアン、お願い、フォックス邸に行きたいの!
シモンが危ないわ!ロビンを連れて直ぐに行きたいの!」
騒ぐ私にライアンが、
「シャルーナ様、落ち着いて下さい!
何があったのですか、こんなに朝早くからどうしたのですか!」
「良いから、お願い、私をシモンの所に連れて行って!
またシモンがおかしくなってしまう!」
騒ぎを聞きつけ、寝癖をつけたままの父と、ボタンを掛け違えたシャツとトラウザーズをとりあえず着てきた兄がやってきた。
「何事だ、シャル!」
やってきた父に駆け寄り、
「お父様、多分まだその香水を持っているメイドはいるわ!
またシモンが狙われるかもしれない!
早く助けにいかないと!」
興奮する私の肩を抑えて父が、
「シャル、とにかく落ち着いて説明しなさい。
どうしてそう思うのか、最初から説明しなさい。
この騒ぎでロビンが起きてしまうよ。」
そうだった、まだ夜が開けて間もない時間だ。まだ使用人すら数人ほどしか動き出していない。
「ごめんなさい…」
謝った後、昨日思いついた事を父と兄に話した。
「確かにあり得るな。試験的にやらせた可能性があるなら自分もってなるよな。
早く知らせた方が良いかもしれない。
父上、行きましょう、私も行きます。」
それから母とアンナも起きてきたので説明した後、朝食を軽く食べて私、父、兄、そしてロビンも連れてフォックス侯爵家へ向かった。
朝食と支度をしている間に早馬で今からそちらに向かうと先触れを出し、私達は急いで向かった。
もう誰にもシモンに触れさせない。
シモンと私の仲を壊させない。
私がシモンを守る、必ず。
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