手紙〜裏切った男と浮気を目撃した女が夫婦に戻るまで〜

jun

文字の大きさ
12 / 68

香らない香水 シモン視点

しおりを挟む



マルティノ侯爵家から帰ってきてからの俺は、即離婚にはならない事に心からホッとしていた。

食欲も戻り、具の入ったスープを吐く事もなく、残さず食べた。

ベッドに入って可愛いシャルを思い出していた。

世界で一番愛しているシャル。
可愛くて愛しくて何よりも大切なロビン。

この二人を今日は抱きしめる事が出来た事がなにより嬉しかった。

その夜久しぶりにぐっすり眠る事が出来た。


翌日、朝早く父が俺の部屋にやってきた。
何事かと驚いていると、

「シモン、あの時の事をもう一度聞くが、口で慰められた後、あのメイドを拒否しなかったのは何故だ?」

怒りではなく真剣な顔で聞いてくる父を怪訝に思いながらも、その時の事を話した。

「あの時、驚いて口淫されたて射精した後、何故出したにも関わらず性欲が収まらなくなってしまいました…。
翌日もあのメイドが近くにいると欲情してしまい、また抱いてしまいました…。
本当に申し訳ありません…。」

と項垂れていると、

「シモン、昨日モーリス…マルティノ侯爵が急に屋敷に来た。
モーリスが言うには、あのメイドはひょっとしたら何かしらの“魅了”や魔道具を持っていたのではないかと聞いてきた。
あまりにも今までのお前と今回の事が信じられないとあちらでそんな話しになったらしい。

確かに今回の件は、今までのお前の行動から考えるとあり得ないものだと私も思った。

だからあのメイドの部屋を私とモーリス、ハリスと探してみた。

すると何の香りもしない香水が出てきた。

私は匂いはしないものの嗅いでしまったから、あのメイドがいる牢には行かなかったが、モーリスとハリスにその香水のような物をあのメイドに見せた。

すると急に興奮しだして返せと暴れ出したそうだ。
そのメイドが言うには、“両想いになれる香水”だと騒いでいたそうだ。

怪しげな店で若い女性が買う、いわゆる“おまじない”の一つらしい。

それを振りかけたらお前が抱いてくれると嬉しそうに話していたそうだ。

シモン、ひょっとしたらお前は何らかの力で浮気させられていた可能性がある。」

「はあ⁉︎」

父の話しは荒唐無稽な話しに思え、思わずそんな声が出た。

「強ち間違っていないのではないかと思う。

話しを聞いた後、私もあまり近寄らないように気を付けながら牢に行ってみた。

するとお前ほどではないが、あの女を見ると全勃ちではないが反応した。

全く抱きたいとは思わなかったが、あのメイドはお前の近寄る時は余程大量にふりかけたのだろう。
だが他の男の使用人や騎士達が何の反応もない事が不明だが、とにかくあの香水は至急王宮研究所で詳しく調べてもらう。

副作用があるかもしれない。
何かおかしな所があったら直ぐにでも報告しなさい。

私はこれから女性使用人全員の持ち物検査を行うが、お前その検査が終わるまではここにいなさい。
その後は謹慎を解く。
これからシモンも詳しく検査をする事になるかもしれない。

それと、シャルが最初にお前があんな風になるのはおかしいと言い出したそうだ。
それでモーリスがもしやと思い、急いで来たと言っていた。

誰もが今回の事を信じられないとは思ったが、魔道具やおまじないなどと言われている物でおかしくなったとは思わなかった。

シャルはお前の愛情を信じているんだな。
浮気した事には変わりはないが、一先ずシャルがお前を見捨てはしなかった。良かったな。」

ポカンと口を開けて聞いていたが、途中から怒りが湧いてきた。

あのメイドはシャルの専属だった。
俺がどれだけシャルを溺愛していたか知っていたはずなのに、この所業に許せる筈もなく怒りで身体が震えた。

そして、シャルが俺のあんな姿を見たのに、冷静に俺の異常さに気付いてくれた。
いや、見たからこそ皮肉な事にその異常さに気付いたのだろう。

シャル…

今すぐシャルに会いたかった。
シャルとロビンに会いたかった。

我慢出来ず、俺はまた手紙を書き出した。


















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

彼女よりも幼馴染を溺愛して優先の彼と結婚するか悩む

佐藤 美奈
恋愛
公爵家の広大な庭園。その奥まった一角に佇む白いガゼボで、私はひとり思い悩んでいた。 私の名はニーナ・フォン・ローゼンベルク。名門ローゼンベルク家の令嬢として、若き騎士アンドレ・フォン・ヴァルシュタインとの婚約がすでに決まっている。けれど、その婚約に心からの喜びを感じることができずにいた。 理由はただ一つ。彼の幼馴染であるキャンディ・フォン・リエーヌ子爵令嬢の存在。 アンドレは、彼女がすべてであるかのように振る舞い、いついかなる時も彼女の望みを最優先にする。婚約者である私の気持ちなど、まるで見えていないかのように。 そして、アンドレはようやく自分の至らなさに気づくこととなった。 失われたニーナの心を取り戻すため、彼は様々なイベントであらゆる方法を試みることを決意する。その思いは、ただ一つ、彼女の笑顔を再び見ることに他ならなかった。

【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。

Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。 休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。 てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。 互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。 仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。 しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった─── ※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』 の、主人公達の前世の物語となります。 こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。 ❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

処理中です...