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シモンが好き
最近…シモンの事が頭から離れない。
“そろそろシモンが来るかな”
“早く来ないかな”
“もっと一緒にいたいな”
そんな事ばかり考えている。
私に記憶はないけど、私とシモンは夫婦で、ロビンという可愛い息子もいて、子供の時から相思相愛で、今もそれは変わっていない…
という事を周りの皆んなが言うので嘘ではないのだろう。
シモンの私への態度を見ても分かるし。
だってシモンの過保護っぷりと甘やかしは不仲な夫婦ではあり得ない事だと思うから。
いくら夫婦とはいえ、記憶がない私には心臓に悪いほどの至近距離で顔を覗いたり、一緒にお風呂に入ろうとしたりするけど、夜は一緒に眠ろうとは言ってくれない。
記憶は失くしても、一般常識は覚えているので夫婦の営みの事くらいは分かる。
怪我も完治していないし、シモンとそういう事がまだ出来ないのは分かるけど、一緒に眠るだけなら良いのではないだろうか…。
でも、男性としてただ横で眠るのは辛い…のだろうか…
などと恥ずかしい事を考えているといつの間にかシモンが私の顔を覗き込んでいた。
「顔赤いよ、熱ある?」と私のおでこに手をあてた。
「うわあ、熱いよ、熱出てるよ、ダメだよシャル、早く横になって!」
車椅子に乗っていた私を横抱きすると、ベッドに寝かせ、熱があると大騒ぎしている。
まさか夜の営みの事を考えていたとは言えず、ただただ恥ずかしくて布団に潜った。
本当に熱が出たわけではないので、直ぐに大した事はないと分かったみたいだけど、無理してはダメだと叱られた。
「あんまり無理はしちゃダメだよ、シャル。
良くなってきてるんだから焦っちゃダメだからね。
シャルの体調が良かったら、庭を一緒に散歩しようかと思ったんだけど今日はやめとくね。」
シモンが私の車椅子を押しながら、庭をゆっくり見て回る時間は好きだ。
風が気持ち良いだとか空が綺麗だとか他愛ない話をしながら散歩する、そんな穏やかな時間をシモンと過ごすのが大好きなのに、恥ずかしい事を考えていてシモンに心配をかけたうえ、大好きな散歩を自分の邪な考えで、無くしてしまったことに悲しくなった。
「ん?どうしたの?シャル、散歩行きたかったの?」
布団から顔を出して頷くと、
「じゃあ明日散歩しよう。でも今日はダメ。
それで良い、シャル?」と私の頭を撫でながら言うので、頷いた。
「顔真っ赤だからまた熱上がったのかな…」
とシモンが仕事に戻るまで、恥ずかしくて顔を赤くしただけの私を心配していたシモンに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
私はシモンの事が好き。
シモンが私を愛してくれている事を、言葉や態度で表してくれているのだ、好きにならないわけがない。
いつも「大好き」「愛してる」と言ってくれるシモンに私も「好きだ」と伝えたいのに、なかなか言葉に出来なくてもどかしい。
そんな日が続き、ふと思った。
リハビリが始まってから、必死だったし、シモンのこともあって気付かなかったが、最近お父様達の顔を見ていない。
以前は忙しいのにも関わらず、お父様もお兄様もよく抜け出して来ては、引き摺られるように帰っていっていたのに、しばらく会っていない。
忙しいのだろうと思っていたが、お母様もアンナも会いに来ていない。
何かあったのだろうか?
シモンに聞いてみようと思っているのに、リハビリのしんどさと、ロビンとの触れ合いやシモンの甘やかしにお父様達の事を聞くのを忘れてしまっていた。
そんなある日シモンが、少しの間マルティノ家にロビンを連れて帰っていて欲しいと辛そうな顔で言った。
「構わないけど、どうして?」と聞いても、「少し忙しくてバタバタすると思うから、義父上達のところの方がシャルもロビンも落ち着いて生活出来るだろうから」としか言わない。
何かがあったんだなと思った。
何も分からない私では役に立つ事も出来ないのだから邪魔にならないようにお父様やお母様の側にいた方が良いのは分かるけど、シモンの側に居れない事が不安だった。
何かまた良くない事が起こりそうで・・・。
また?またって何?記憶が失くなる前に何かあったの?
「痛…い・・あた、まが…いた・・・」
何かを思い出しそうになった瞬間、あまりの激痛に頭を押さえたが痛みは増すばかりで、すぐ近くにいるシモンの声すら聞こえなくなった。
猛スピードで沢山の過去の記憶の一部が頭の中を過っていくが、速すぎてよく分からない…。
でも一瞬だけ見えた場面だけは分かった。
その場面は・・・・
シモンが知らない女の人と・・・睦合ってる姿だった・・・。
そして私の意識は真っ暗になった。
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