手紙〜裏切った男と浮気を目撃した女が夫婦に戻るまで〜

jun

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お義母様とシモンから聞いた話しは、俄かには信じられないような話だった。

お義母様は時系列に沿って全て話してくれた。
私がマルティノ家に帰ってからの事はシモンが話してくれた。
私がシモンに送った手紙も見せてくれた。
手紙を読んで、その時の私の苦悩が分かった。
夢ですら辛いのに、実際に目の前で見てしまった“私”はどれだけ衝撃だっただろうと、自分の事なのに他人事のように心配した。

そして魔力、魔法、魅了と聴きなれない言葉が出てきた。
シモンをずっと好きだった伯爵令嬢が魅了の効果がある液体を、自分ではなくメイドに使わせて私とシモンを別れさせようと画策し、最後はフォックス侯爵家に押し掛けてきた所を捕まえたが、ちょっとした隙に私を階段から落として、私は今の状況になったという事を聞いた。

「階段から突き落とされたんですね…私・・・。

その人は・・・どうなったんですか?」

「王宮研究所で拘留されているわ。禁忌魔法を使ったのだから二度とそこから出る事はないわね。
きっと研究材料になるんじゃないかしら、今後の対策のためにもね。
でもね、まだ見つかっていない“魅了液”があるの。
全力で皆んなが探しているんだけど、誰が持っているのかもまだ分かっていないの…。
またシモンが狙われるかもしれないし、シャルが狙われるかもしれないの。
だからね、シャルはしばらくマルティノ侯爵家にロビンと避難した方が良いと思うのだけど、シャルはどう?ここにいたい?ご両親と一緒にいたい?」

正直話しを聞いても今はシモンの顔を見られない。
もう食事の介護も、ちょっとした移動の抱っこも、もうしてもらおうとは思えない…。
記憶を失くす前の私はシモンを愛していたから、魔力で無理矢理浮気させられていたと思えたのだろうが、今の私にはそこまでの愛情はない。
好きにはなっていた。
記憶がなくてもシモンと夫婦として新たに暮らしていこうと思っていた。
いずれは同衾も・・・とは思っていたが、あの姿が実際に目撃したものだと分かった今は、触れて欲しくないと思ってしまう…。

あんなに私への愛情を隠すことなく向けてくれたシモンを拒否するのは間違っているのかもしれない。
実際以前の私は許したのだから、私も許さなきゃならないのかもしれない。
でも、今は側にいたくない…。
少し離れて考えたい…。


「すみません・・・両親の所に行きたいです・・。
ごめんなさい・・・今は離れて頭を整理したいです・・・」

シモンの顔は見れなかった。


翌日マルティノ家から迎えが来てから出発する事になった。
そして翌日待っていると、なにやら屋敷内がバタバタしている。

ロビン、メリル、キャシーが私の部屋に集まっていたので、メリルに外の様子を見てもらった。

メリルが聞いた話しでは、マルティノ家からの迎えは馬で駆け込んできた騎士たった一人だけだそうだ。
なにやら急ぎ、お義父様に報告があると言って今はお義父様の執務室にシモンとお義母様も呼ばれ、長い時間何かを話し合っているらしい。
そして皆んなが付けているお揃いの指輪、私のだけ少し違うが、それの確認をしているところで、私達はしばらく部屋から出ないで欲しいと言われたそうだ。

この指輪は魅了魔法を防ぐ為に全員付けていると昨日お義母様に説明された。
てっきりフォックス侯爵家のしきたりみたいなもので付けているのかと思っていたけど、魔道具だと知って驚いた。

マルティノ家の護衛騎士がたった一人でフォックス侯爵家に来てから始まった確認作業。

マルティノ家に何かあったのだろうか?
だから急ぎ一人でこちらに知らせに来たのではないのか…。

「お父様…お母様…皆んな大丈夫なのかしら…」

そう呟いた時、お義父様、お義母様、シモンがやってきた。

シモンをチラッと見ると、最後に入ってきた後、私には近付かず離れた場所から真剣な顔で私を見ていた。

「シャル、マルティノ家には行けなくなった。
魅了液を使われた可能性が高い。
どうやら魔道具の指輪を外されたらしい。
気付かなかったが、あちらからの訪問が最近全くなかった。
私が油断してしまった結果だ・・・申し訳ない。
すぐにハーウィン様に連絡してマルティノ家に向かってもらう。
私の方でも充分気をつけて探ってみるつもりだ。
申し訳ないがシャルはここにいてもらう事になる。
シモンは近付かせないようにするので、もう少し待ってもらえるか?」

マルティノ家に行けないのならここにいるしかないので頷くしかなかった。

シモンを見ると、ジッと私を見つめていた。

いつも蕩けるような笑顔で私を見つめるシモンが、あんなに厳しい顔で私を見つめることなんてなかった。
それほど今の状況が良くないということなのだろう。

私もシモンをジッと見つめていると、シモンは泣きそうな顔で笑った後、静かに部屋を出て行ってしまった…。

この状況が良くない事は分かっても、お義父様たちのような危機感は湧かず、理解しきれていない私はただただオロオロするばかりだった。

本当は、シモンが側にいてくれたらと思うのに口にする事は出来なかった…。
















*いつもお読み下さりありがとうございます。

なかなか話しが進まずダラダラしておりますが、もう少しで決着しますのでもうしばらくお待ち下さい。

今後も引き続き宜しくお願い致します。






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