公爵と元令嬢と私〜明らかに邪魔なのはお前

jun

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シャルルの傷

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リジーが今兄から説明されているのを俺はリジーの手を握りながら聞いている。
マクスとシャルルは離れた場所にラグを敷いて母上と義姉と遊んでいる。

リジーはその頃の事を思い出しているのか、目を瞑っている。

兄の話しが終わり、目を開けたリジーは、
「もしシャルルの母親がシャルルを育てる環境にいないのなら、私が育てたいと思います。
今日ずっと見ていましたが、ちゃんと教育されていたようですし、性格も優しい子のようです。マクスも懐いているようですし、何よりシャルルが可愛いので。
何れこのような事があるだろうとは思っていました…。
元令嬢の方々は皆狙っていたそうですから…。
シリルの子かどうかハッキリしないのはどうにも出来ません。
覚悟もしていました。
シャルルは私が育てます。あの子は今日から私が母親となりますが、シャルルが私を拒絶したなら母親を探してもらって話し合いを致しましょう。
もしシャルルに悪影響を与えるような方ならば、シャルルの側にはいさせません。」

申し訳なくてリジーの手を握る手に力が入る。

「ごめん・・・また俺はリジーを傷付けたんだな・・・」
情けなくて顔を見れない。

パタパタと小さな足音の後、
「とうたま?たいたい?だいじょぶよ。よしよしね」とマクスが俺を下から覗いてお腹をナデナデしてくれた。

母上と義姉といるシャルルはどうして良いのか分からなくてオロオロしている。
あの子が俺の子かは分からない。
でもリジーは覚悟を決めた。
なら俺も子供の前で落ち込んではいられない。

「マクス、ありがとう。もう大丈夫だ。シャルルと遊んでなさい。父様は母様とお話しがあるからね。」

「はーい」と言ってパタパタと戻っていった。

「リジー、最後にもう一度だけ言わせて欲しい。本当にごめん。苦労ばかりかけてごめん。リジーがシャルルを俺の子としてくれるなら、俺も自分の子としてマクスと同じように接しよう。
これからまだ解決しなきゃならない事もあるけど、よろしくお願いします。」とリジーに頭を下げた。

「あの頃は仕方なかった事だから…。
でも次、隠し子出て来たら今度こそ実家に帰るから!
シリル、お願いだからもう私以外の女の人を抱くような事をしないで…」
とリジーが涙を溢した。
抱きしめて、
「リジー以外に触らない!あの頃だって最低限しか触っていないし、一晩中なんて娼婦と過ごした事ないし、回数だって一回位だったんだ、竜力の制御も出来てたからね。

こんな言い方ダメだけど、準備された状態の所に挿れて出すだけの作業だった。口付けなんかした事ないし、胸にも触ってない。ましてや愛撫もした事はないよ。
会話もしてないし、顔もほとんど見ていない。リジーが聞いた噂は間違ってる事だらけだ。信じて欲しい。
こんな話なんか聞きたくないだろうけど、少しでもリジーが安心出来るならいくらでも話すよ。
快楽を求めてしていた行為ではなく、処置としての作業だったって事だけは信じて欲しい。
俺だって出来る事ならしたくなかったんだ・・・」

「うん…分かってるよ。あの頃は確かに辛かったけど、ちゃんと分かってたから我慢出来た。でも傷付かないわけじゃないから…。

はい、もう暗いお話し終わり!

陛下、王妃様、サーシャ様、ありがとうございました。何度も御迷惑おかけして申し訳ございません。
これからも御迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします。
シリルとは夜にじっくりこれからの事を話し合いたいと思います。
シャルルとも折を見て話します。」

リジーのこの言葉で別の話題に移った。

「シャルルはシリルに似てるのではないか?」
と父上。
「瞳は・・・・金…ではないか?」と兄上。
「シャルルほど可愛いらしくはなかったですよ、俺は。」

「いや、お前はちっーちゃい時は愛らしかった!それが今じゃコレだ…お兄ちゃんはガッカリだよ…嫁を泣かせる悪党になろうとは…」

確かに嫁を泣かせてるけど断じて悪党ではない。

「私はシャルルはマクスに似てると思います。優しい性格が顔に出ていますから。」
とリジー。
確かに。
「少ししか話してないので分かりませんが、厳しく躾けられたのだと思います。
シャルルの小さな手には何か細い物で叩かれた傷がたくさんあります…。
うちに来て最初に声をかけた時、あの小さな手を見て、守らなきゃと思いました。」

「「「え⁉︎」」」

「虐た「陛下、お声を…」」

あまりの驚きにさすがの父上も驚いたようだ。

皆が小声で、
「シャルルがシリルの子なら王族だぞ!その子に虐待など許されんぞ!」

「シャルルは食べ方も市井で暮らしていた割に綺麗でした。姿勢も良いです。
お風呂に入った際にシャルルの膝の裏にも細い傷が残っていたそうです。
躾けをしていたとしても、こんな小さな子にする事ではないと思います。」
とリジーが怒っている。

「貴方達、何をコソコソ話していますの?」
と王妃様がこちらにきたので、今度はリジーが子供達と合流した。

母上にシャルルの傷の事を言うと、
「なんて事・・・あんなに可愛らしい子の小さな手を叩くだなんて!」

急に母上は手をパンパン叩き、
「子供達にジュースとお菓子、軽食を持ってきて頂戴!大至急よ!」
と叫んだ。

「ばばちゃま、おかち?」とマクスが走ってきた。
「そうよ~ばばちゃま、マクスとシャルルにたくさん美味しいの食べて欲しいの!
シャルルもこっちにいらっしゃい、おばあちゃまのお膝に抱っこしましょ!」

「じゃあマクスはじじちゃまの所においで。」

シャルルはビクビクしながら母上の膝に、マクスは父上の膝に座り、世話をやかれていた。
シャルルを見ると、気を使い、疲れているのか顔色が悪い。

「シャルル、父様の所においで。」
母に抱かれていたシャルルは、ゆっくり膝から降りて俺の所にトコトコやってきた。
抱っこして座らせてあげると、俺を見上げる。
「シリル様は…とうさま?」
自信なさげに問う瞳は不安で揺れている。
「シャルルは俺の息子で、俺が父様だよ。
シャルルが生まれた事を知らなかった。
今日から俺とリジーとマクスと一緒に住んで欲しいが、シャルルはどうしたい?」

「僕は…おかしくなった…母様が心配です…」

「「「「「「おかしくなった⁉︎」」」」」」
大人全員の声にシャルルはビクッとなった。

「おかちくなったの?なにが?とうたまが?」とマクスだけが違うことを言っているが、

問題はまだまだあるようだ。
















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