公爵と元令嬢と私〜明らかに邪魔なのはお前

jun

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フランの本性

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女を確保したと連絡が来たのは、家族皆んなで朝食を食べ終わった頃だった。

即座にこちらに連れて来られた二人は今、国王、王妃、王太子、元第二王子を前にし、顔色をなくし、ブルブル震えている。

「顔はあげてもあげなくともいい。
この始末どうするつもりだ、そこの女。」
と父が問うと、
「わ、私は、シリル様のお子を生みました。
シャ、シャルルは王族の血を継いでいます!れっきとした王族の一員です!
父親のシリル様に会わせてあげたかっただけです!
段々シリル様に似ていくシャルルを見れば、シリル様は私達をお側に置いて下さると思ったのです!
シャルルはシリル様の第一子です!
公爵家を継ぐ男児です!」

「私はそんな事を聞いているのではない。
この始末どうつけると聞いている。」

父は怒りの感情を抑えているのだろうが、隣りの母の顔が酷い事になっている。
持っている扇子はギシギシいっている。

「始末、とは?」

兄上が言う。
「私と契約書にサインしたのは忘れてしまったのかな?
あの時、“他言しない”、“シリル及びシリルの家族に関わらない”、“契約を反故にした場合処罰対象となる”、覚えていないのかな?
君は契約を反故にした。
処罰を受けなければならない。
王族との契約を反故にした意味が分からない事はないよね?
シャルルの事は何の心配もないよ、ちゃんと公爵家でブリジットが母親として育てるから。」

「シャルルの母親は私です!あの女ではありません!あの女は学生の時からシリル様を蔑ろにしていました!
シリル様を避け続け、シリル様を傷付けてきたのです!
ケネス様まで侍らせ、女王のような振る舞いに皆が辟易していたのです!
そんな女にシャルルは渡しません!」

「貴方、シリルとブリジットと同じ学年だったのよね?
ブリジットがどんな状況だったのか知らなかったの?
高位貴族の生徒は大まかだけれど何があったのかは知ってたわよ。
低位貴族の生徒もきちんとした方々は知っていたわ。
知らなかったのはシリルの見た目だけに惹かれた欲に溺れた愚かな生徒だけ。
シリルは一年の時、ブリジットに接近禁止が出ていたのも知らずに蔑ろ?ふざけた事を言わないで頂戴!
シリルが二年の時、貴方みたいにシリルにご執心だった令嬢のせいで殺されかかって学院を休んでいたの!
あの子が学院に通っている姿を貴方は見た事があるの?
あの子はほとんど通えなかったのに、女王のように過ごした姿を何処で見ていたの?
それに卒業せずに学院を退学した貴方がどうやってブリジットを見たの?
全部他人から聞いた話しを鵜呑みにし、妬み根性でブリジットを侮辱するなんて、私が許さないわよ!」

「わ、私は、一度、「一度⁉︎たった一度何を見たの?」」

「シ、シリル様が、声を、かけようとしてる、のに、あの人が、逃げていく、と、ところを…」

「接近禁止されてるシリルから逃げる事の何がいけないの?」

「し、知らなかった、から…」

「何も知らないのによくもブリジットを侮辱出来たわね!」

母の怒りは収まる事を知らず、ここからどうなると心配した頃、父が、

「王妃よ、少し落ち着きない。
其方、シャルルに体罰を加えたな。」

ビクッとしたその女は、
「シャルルの、為です…」と答えると、

父が、
「あの子の小さな手にはたくさん傷が出来ていた。足にもだ。
まだたったの三歳なのに上手く出来ないと叩かれると記憶してしまった。
王子だったこの二人でさえ、そんな事をされた事はない。
あの子は、其方がおかしくなったと心配していた。

其方が大事に育てていたのだろうとは思う。
優しい子に育っている。
そのまま大事に育ててくれていたら何れ良い家に其方を後妻としてシャルルと共に入ってもらおうと思っていた。
何故、体罰を与えてでも躾けをし、契約を反故にしてまでシャルルを連れてきたのだ。
答えよ。」

女はしばらく考え込んでから、

「・・・・私は・・ケネス様をお慕いしておりました…。
シリル様とケネス様のご関係は…学院内では有名でしたから知っていました…。
女性じゃない分、お二人の関係にはそれといって嫉妬するような事は…ありませんでした…。逆にいつまでもお二人でいてくれたら良いのに、そうすれば他の女性を娶る事もなくなる、そう思っていました…。
あの事があってからは…仲睦まじい姿を見る事もなくなり、お二人の仲を裂くブリジット様の存在が疎ましく思いました。
ブリジット様のお姿は、授業を普通に受けていた頃に数回ほどしかお見かけしていません…。ブリジット様が別教室で授業を受けてからは遠くからお見かけしただけでしたが、離れた場所からシリル様とケネス様がブリジット様を見ているお姿はよく見かけました…。
その時に・・・ケネス様がブリジット様を見つめる顔を見て、ケネス様のお気持ちに気付きました…。
ある日、図書館にいるブリジット様がケネス様を呼ぶ声がたまたま聞こえて、そちらを見ると、ブリジット様が何かケネス様に話しかけた後、何かを投げ落としたのが見えました。ケネス様が泣いて喜んでる姿を見て、初めて“嫉妬”しました。
その後私は退学しましたので、その後の事は分かりません。
家の借金の為に私は娼館に売られましたから…。
二度と関わることのない人達の事を考えていても仕方ないとスッパリ諦めて日々生活しておりました。
そんな中、シリル様のお相手に選ばれました。娼館の中におとなしくて口の固そうな娘、それに私が選ばれました。
そしてシリル様との閨に呼ばれました。
その時、妬みや嫉妬やたくさんの黒いもので頭がいっぱいになってしまいました…。
シリル様は娼婦に目も向けないと聞いていたので、避妊薬を私が持ってきたただの水の入った物と入れ替える事は簡単でした。

私が妊娠すれば処理されるかもしれないけど、産む事が出来たらシリル様とブリジット様の仲を壊す事が出来るのではと思いました。
シリル様の子種は欲しかったのは違いありませんが、シリル様が好きで子供が欲しかったのではありません…子供を産みたかったのは…ただただブリジット様を傷付けたかっただけの為です…。
シリル様にもケネス様にも愛されているブリジット様が憎かった…。
だから自分が殺されようと、シャルルの存在を見せつけたかった…。
少しでもブリジット様を傷付けたかった、それだけです…。
シャルルを産んだ時は可愛らしくて愛おしく思いました。
段々シリル様に似ていくシャルルを見ていると、どうしてもブリジット様を思い出してしまい、少しずつ愛情が歪んでいってしまいました…。
修道院に出入りしている男になんとか王都まで連れて行ってほしいとお願いしていましたが中々叶わず、新しい院長を誘惑し私とシャルルを王都に連れて行ってほしいとお願いして、ようやく向かう事が出来ました…。
シャルルだけ先に行かせたのは、少しでも長く苦しんで欲しかったからです…。

シャルルは・・・ブリジット様に育てて頂きたいです。死ぬまで私の子供を大事に育てて欲しいです。」


俺は唇から血が垂れていた。拳からも爪が食い込み血が出ているのだろう、ぬるりとした感触がしている。
あまりの怒りに久しぶりに熱が溜まりそうだった。
シャルルをブリジットに育てさせ、一生苦しめようなどと宣う女に殺意が湧く。
シャルルを道具の様に産み、利用し、何の罪もないブリジットを傷付けようとした女を許せるわけもなく、飛び掛かろうとした時、

バーンと隣りの部屋のドアが開いた。

そこにはケネスがいて、後ろにはリジーと手を繋いだシャルルがいた。
















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