11 / 11
今日も我が家は幸せ
しおりを挟むあの後ケネスが屋敷に来て、あの女が死んだ事を聞いた。
リジーは自害した事だけ聞いて、部屋を出た。
その後、ケネスが何をあの女にしたのかを聞いた。
ケネスを好いていたあの女にはキツイものだっただろう。
やんわり媚薬に犯されながら見せられるケネスの痴態を見て何を思っていたのやら。
挙句に毎日何時間もブリジットとシャルルの幸せな姿を話し続けたのだとか。
鬼畜の所業だ。
俺なら初日に泣いて謝る。
リジーが他の男と~なんて想像するのも泣ける。
ケネスの事を考えると、申し訳なく思う。
ケネスは俺のせいで将来の選択肢がなかった。
まだ子供の時に大人に言われ、逃げ道もなかった。
時折見せるケネスの横顔は、俺の隣りにいた時とは違う顔だ。
馬鹿な俺といる時は楽しげな時もある。
だが兄や父といる時は何か違う。
まるで監視しているようなそんな感じだ。
「俺は、ケネスも幸せになって欲しいと思ってる。お前も俺達の大事な家族なんだからな、分かってる?」
と聞くと、一瞬目を瞠り、
「ありがとう、シリル。俺は今が十分幸せだ。お前とブリジット様、シャルル様、マクス様が笑っているならそれだけで良い。
俺を家族だと言ってくれる親友のお前と、俺に可愛く微笑んでくれるブリジット様がいたらそれで幸せ!」
と言うケネスに、
「お前にリジーはやらん!リジーを見るな、減ってしまう!」
その後の俺達は、リジーが第三子のライナーを生み、三兄弟になった。
シャルルとマクスは毎日木剣を振り回していたお陰か、今じゃシャルルは近衞騎士、マクスは第二騎士団に入った。
末っ子のライナーは今は学院に通っている。
ライナーはリジーに似て成績優秀なので、兄上によく捕まり、何やらやらせているようだ。
シャルルはリジーの親友のエリザベス夫人の娘と婚約した。
マクスは「結婚なんかまだまだしなーい」と言って友人達とワイワイやってるらしい。
シャルルが15歳になった時、母親の事を話した。
「俺がここに来た時の事を覚えてるよ。
母様とマクスが直ぐに笑顔で食堂に連れて行ってくれた。
父様は大きくて少し怖かったのを覚えてる。
その後は一度だって母様は俺を不安にする事なんてなかった、血が繋がってないなんて思えないほど俺を愛してくれた。
マクスと同じように褒めてくれたし叱ってくれた。それが本当に嬉しかった。
あの日…俺を生んだ人の話しを母様と手を繋いで聞いた日、母様は泣いていたけど、それは俺に聞かせてしまった事に泣いていたんだ。小さな声で、“シャルルごめんなさい”って泣いてた。
俺はあんまり分かってなかったけど、嫌な話しなのは分かったから、俺の為に泣いてくれる人が手を繋いでくれてる事に涙が出た。
ケネスおじさんも隣りにいてくれた。
その後父様が、俺を息子だと言ってくれて、母様が俺の母だと言ってくれて、物凄く嬉しかったんだ。
だから俺の母は母様だけだし、死んでしまった人の事を、父様も母様もケネスおじさんも気にしてほしくないかな。
でも本当の事、話してくれてありがとう父様。」
俺は泣いた。
こんなに立派に育ったシャルルを抱きしめて泣いた。
「父様はよく泣くよね~」とシャルルが笑ってくれたので、また泣いた。
マクスもライナーも15歳になった時にシャルルと母親が違うと話すと、
「「知ってるよ」」と言われた。
シャルルが俺から聞いてすぐマクスに、ライナーはそれを盗み聞きしていたらしい。
マクスは、
「兄さんは兄さんだし、小さい時から兄さんはいたから、母親が違うって言われてもヘェ~って感じかな。
だって俺が2歳の時から兄さんの母親は母様だよ?そんなへんてこりんな母親の事なんて忘れちゃえばいいし。」
“俺と兄さんの母親が違うなんて⁉︎”とシリアスモードになると思い、緊張して話したのに、あっけらかんと言い放ったマクスにポカンとした。
ライナーは、
「あ、それ知ってます。シャルル兄さんがマクス兄さんに話してるの聞いてましたから。
聞けば母様を貶めようとしていたのだとか。
そんな女は居なくなって良かったで終了です。思い出す必要もないです。
私の記憶からは抹消しました。
そのような輩が出てこようものならケネス先生と魂までも切り刻みます!」
と何処かで聞いたような事を言って数分で話しは終わった。
ライナーよ…お前はケネスを何故先生と呼んでいる?
アイツはライナーに何を教えたんだよ!
そして愛する妻のリジーは、
「皆んな良い子に育ったわよね~シャルルは優しいし、マクスはシリルにやることなす事ソックリだし、ライナーはケネスに似て穏やかで優しいしね~。」
妻よ…シャルルは良いが、マクスは褒めてる?ライナーに関しては騙されてると思うよ、俺は。
「シリルが良い父親だからだね、ありがとう。愛してるシリル」
チュッとしてくれるリジーの可愛さよ。
今まで色々あったが、結局俺とリジーを邪魔しようとした奴は沢山いたが、最も邪魔した女は俺達に最高の息子を授けてくれた。
死んで清々したとは思わないが、シャルルの邪魔にならなくて良かったと思う。
「クッキー焼けたよ、お茶にしようー!」
「すぐ行くー、リジーのクッキー好きー、リジーも好きー!」
「もう!息子達の前で変な事言わないで!」
「「「俺も母様、大好きー!」」」
今日も我が家は幸せだ。
〈完〉
*********************
これで完結となります。
「王子と従者~」から「公爵と~」までたくさんの方に読んで頂けて嬉しかったです。本当にありがとうございました。
本当はケネスを幸せにしてあげたかったのですが、こんな形にしてしまいました。
ケネスはケネスなりに幸せなのかなと思って頂けたら嬉しいです。
2,092
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1
犠牲になるのは、妹である私
木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。
ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。
好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。
婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。
ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。
結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。
さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
こんな婚約者は貴女にあげる
如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。
初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。
【完結】さっさと婚約破棄が皆のお望みです
井名可乃子
恋愛
年頃のセレーナに降って湧いた縁談を周囲は歓迎しなかった。引く手あまたの伯爵がなぜ見ず知らずの子爵令嬢に求婚の手紙を書いたのか。幼い頃から番犬のように傍を離れない年上の幼馴染アンドリューがこの結婚を認めるはずもなかった。
「婚約破棄されてこい」
セレーナは未来の夫を試す為に自らフラれにいくという、アンドリューの世にも馬鹿げた作戦を遂行することとなる。子爵家の一人娘なんだからと屁理屈を並べながら伯爵に敵意丸出しの幼馴染に、呆れながらも内心ほっとしたのがセレーナの本音だった。
伯爵家との婚約発表の日を迎えても二人の関係は変わらないはずだった。アンドリューに寄り添う知らない女性を見るまでは……。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる