信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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エリーの部屋

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パトリック視点


エリソン侯爵が、俺ともう一人護衛を連れてあの女の部屋に向かった。
女の部屋は一階の奥だ。

以前はノアの部屋からは遠かったらしいが、同じ二階だったらしい。
そんな事してるから襲われんだよと思ったが、口にはしなかった。

ノックをすると、シーンと音がしそうなほど何の返事もない。

もう一度、ノックするとようやく人が動く気配がして、ドアが開けられた。

「その格好をみると、寝ていたのか?休んでいたところ済まないが、少し話しがしたいのだが、支度が終わり次第応接室に来て欲しいのだが、構わないだろうか。」

「かしこまりました。すぐに支度します。」

「ドアの前にこの二人がいるので連れて来てもらってくれ。」

本当はこのままこの部屋で話しをする予定だったのだが、支度するならと応接室になったのだろう。

しばらく待っていると、ドアが開いた。

「お待たせ致しました」

そう言って出てきた、エリー・バウンズは、少し顔色が悪いようだが、無表情で笑うこともなく、お辞儀をした。

護衛を先頭に、エリーを挟んで後ろに俺がついた。

後ろ姿を観察する。

それといって特徴もないが、なんとなく男好きする身体なんだなと思った。

ノアを襲うくらいだ、それなりに経験があるんだろう。
意外だが、解消したとは言え、婚約者がいたのだからない事もないのかと思ったが、相手は・・・誰だった?と考えているうちに応接室に着いた。

中に入り、エリーが侯爵に座るよう勧められ座ると、俺達はドアの所に立ち、二人の話しを聞いた。

「身体はどうだろう、悪阻とかは大丈夫なんだろうか?」

「少し悪阻はありますが、大丈夫です」

「医師を呼ぶ必要はないんだろうか?」

「はい。大丈夫です」

「そうか。何かあった時は言ってくれ。」

「はい」

「それで、今後なんだが、君は一人であの部屋にずっと籠っているだろう、何かあった時にすぐに駆けつけられないのも困るので、これからは部屋に護衛と専属のメイドをつけようと思っている。
ドアの前と部屋の中に一人ずつ護衛が付く。着替えの時は部屋から出るので心配は要らない。」

「分かりました。」

「何か質問はあるか?」

「ありません」

「なら、今日からその態勢でいきたいと思う。」

「はい、分かりました」

「では、以上だ。」

「はい。失礼致します。」




なんだこれ?


全く感情がないというか、家に来て、リアに怒鳴ってた時と全然違う。

襲うほどノアを好きなのかと思ったら、そうではないらしい。
どちらかというと好意なんて一切なさそうな感じだ。

顔を見ても感情も何も読めず、少し戸惑う。

行きと同じで、後ろから観察しても何も分からない。

部屋に着き、護衛がドアを開け、

「私はドアの外にいます。後ろの彼は部屋の中にいますので。メイドはすでに部屋にいると思います。」

そういうと、

「はい。分かりました。」

この女、それしか話さない。

俺も部屋に入り、ドアのすぐ横に立ち、

「私はここにいますので、何かありましたらお声をかけてください。」

と言い、定位置に立った。

無言で頷くと、部屋にいたメイドがエリーに挨拶した後、俺の横に立ち、会釈した。

それからはほとんど誰も喋らないし、動きもない。

あの女は、ソファに座り、本を読んでいる。

その後、天蓋付きのベットに横になり、眠ったようだ。

お昼まで眠り、昼食を食べる時、妊娠中なのにワインを頼んでいた。

俺とメイドはギョッとし、メイドは、

「エリー様、お酒は控えた方がいいかと思います。」

と言うと、

「別に望まれてもいない子なので、気にしないで下さい。」

と無表情で答えていた。

それ以上メイドは何も言えず、引き下がるしかなかった。

黙々と食べたい物だけを食べ、悠々とワインを飲んでいた。


夕食も同じだ。


投げやりで、適当な体調管理。

子供が欲しくてしたんじゃないのか?

交代するまで、ずっと見ていたが、ただただ気味が悪いだけだった。














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