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Revenge tragedy of agent Ⅰ
第十二話
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陰陽庁は早速、妖気の探知と鬼の探索を始めた。通常の妖怪とは違って遥かに大きく異常な為、居場所の絞り込みは容易であった。森の多い人気もないような場所にすでに倒産された工場施設の跡地がありそこに鬼が居る。建物が複数あり、うち一つは工場となっている。外にも溶接や鉄を削る機械が転がっており何らかの鉄工所跡地に間違いない。現着した者は大人を含めて16名。うち半分が子供であった。中学生4名、高校生4名、他は大人である。その中に紅葉と早苗の姿もあった。大人の中には、子供を下がらせるべきという意見も出たが、春坂義雄を筆頭に鬼の強さを知る者は寧ろ後方支援を担当して貰うべきと意見が割れた。大人組が先行し、子供組が後方支援。経験者は寧ろ生存率と撤退を想定していた。何かあっても対処可能なように大人2名と子供2名のグループを4つ作り、施設内を探索する事となった。紅葉と早苗はグループが一緒になって安堵し、お互いに目を合わせる。大人は嶋中健一(しまなかけんいち)40歳のベテランで鬼と対峙して生き延びた経験者。剣術と式神召喚を得意とする。池島結衣(いけしまゆい)23歳 精霊召喚を得意とする召喚師。剣術はからきしだったが自分で鍛えた棍棒(トンファー)による近接攻撃を得意としている。
「早苗ちゃんも紅葉ちゃんも宜しくね!!」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「いいか、鬼と会敵しても攻撃をするな。すぐに下がって皆と合流を意識しろ。下がりつつ距離を取って時間を稼ぐんだ」
「それほどの相手ですか」
「ああ、俺の腹の傷見るか?動けなくて12人があっという間に殺されていくのをただじっと見るしか出来なかった。もう後悔はしたくない」
「分かりました。二人共、後ろの警戒と会敵した場合の援護をお願いね」
「分かりました!!」
「任せて下さい」
二人は元気良く返事をして、施設の中へと入った。結衣が精霊召喚でゆらゆら揺れる人魂の様な存在を呼び出すと周囲が明るくなった。火の精霊の中でも比較的呼び出しやすい鬼火。早苗と紅葉はが懐中電灯を手に持って警戒を高めた。電気も通っておらず、ただならぬ暗い雰囲気を漂わせている。紅葉達は施設の中のビルの一画を探索している。恐らく事務方の宿舎だろう。受付が見え、鳴らない電話が聞こえてきそうな雰囲気がある。全部で4階層。2階には営業や注文の受付を行っている作業風景が思い浮かぶ。資料が散乱し、机や椅子等も転がっているが壁には社訓や業務成績が貼られてあり、活気があったらしい。急に、ガサという紙の音が聞こえて紅葉の心臓が跳ね上がった。思わずそちらに懐中電灯を向けると、机の上で鼠と目が合う。キュイ?と何事ですかと言わんばかりに首を傾げている。
「―――――ッ!!って鼠じゃない。驚かさないでよ!!」
シッシと手を振ると、鼠は一目散に逃げていく。
「相変わらず怖がりね。こないだもホラー映画見て震えてたもんね」
「退魔師なのにぃ?」
結衣は驚き、早苗はクスクスと笑い、紅葉は顔を紅潮させた。
「今はその話関係ないでしょ!!」
こんな時に何を話しているんだかと健一は緊張感の無さに呆れながら、奥へと進んだ。
工場の中は金属を削る大型の機械類がそのまま放置されている。埃が宙に舞い、薄暗い中、所々開いている隙間や窓から陽光が差している。子供を含めた退魔師4人が警戒しながら鬼の捜索を始めた。鉄板や工場の残した跡が多数見受けられる中、一人が怪訝な顔で上を見上げた。丁度、真ん中に何か黒い袋の様な物がぶら下がっている。よくよく見ればそれが、蝙蝠の様な羽である事に気が付いた。何かがその羽に包まっている状態で、動きはない。妖気の発信源に間違いはなく、大人の一人が散開の指示を出そうした瞬間蝙蝠の羽の様な翼が開かれ、瞬時に鬼が降下する。
「――――――――――さんがイッ!!」
地面に着地と同時に直下に居たリーダの顔を踏んづける。体重を掛けてそのまま地面に押し潰すと顔面が陥没し地面が血に染まる。目の前の光景が信じられぬ思いで残りの3人は恐怖で身が竦んだ。鬼は可笑しそうに笑いながら、ちょっと待てと手を掲げる。
「何だ・・・どういう・・・」
鬼がリーダーの刀を手に持って、彼の手首を切り落とした。それを、自分の手にくっつけると、みるみるうちに鬼の体の一部へと変化する。感触を確かめるように、気分よさそうに手首をぶんぶん振り回してようやく、残った3人に向き直った。
「早苗ちゃんも紅葉ちゃんも宜しくね!!」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「いいか、鬼と会敵しても攻撃をするな。すぐに下がって皆と合流を意識しろ。下がりつつ距離を取って時間を稼ぐんだ」
「それほどの相手ですか」
「ああ、俺の腹の傷見るか?動けなくて12人があっという間に殺されていくのをただじっと見るしか出来なかった。もう後悔はしたくない」
「分かりました。二人共、後ろの警戒と会敵した場合の援護をお願いね」
「分かりました!!」
「任せて下さい」
二人は元気良く返事をして、施設の中へと入った。結衣が精霊召喚でゆらゆら揺れる人魂の様な存在を呼び出すと周囲が明るくなった。火の精霊の中でも比較的呼び出しやすい鬼火。早苗と紅葉はが懐中電灯を手に持って警戒を高めた。電気も通っておらず、ただならぬ暗い雰囲気を漂わせている。紅葉達は施設の中のビルの一画を探索している。恐らく事務方の宿舎だろう。受付が見え、鳴らない電話が聞こえてきそうな雰囲気がある。全部で4階層。2階には営業や注文の受付を行っている作業風景が思い浮かぶ。資料が散乱し、机や椅子等も転がっているが壁には社訓や業務成績が貼られてあり、活気があったらしい。急に、ガサという紙の音が聞こえて紅葉の心臓が跳ね上がった。思わずそちらに懐中電灯を向けると、机の上で鼠と目が合う。キュイ?と何事ですかと言わんばかりに首を傾げている。
「―――――ッ!!って鼠じゃない。驚かさないでよ!!」
シッシと手を振ると、鼠は一目散に逃げていく。
「相変わらず怖がりね。こないだもホラー映画見て震えてたもんね」
「退魔師なのにぃ?」
結衣は驚き、早苗はクスクスと笑い、紅葉は顔を紅潮させた。
「今はその話関係ないでしょ!!」
こんな時に何を話しているんだかと健一は緊張感の無さに呆れながら、奥へと進んだ。
工場の中は金属を削る大型の機械類がそのまま放置されている。埃が宙に舞い、薄暗い中、所々開いている隙間や窓から陽光が差している。子供を含めた退魔師4人が警戒しながら鬼の捜索を始めた。鉄板や工場の残した跡が多数見受けられる中、一人が怪訝な顔で上を見上げた。丁度、真ん中に何か黒い袋の様な物がぶら下がっている。よくよく見ればそれが、蝙蝠の様な羽である事に気が付いた。何かがその羽に包まっている状態で、動きはない。妖気の発信源に間違いはなく、大人の一人が散開の指示を出そうした瞬間蝙蝠の羽の様な翼が開かれ、瞬時に鬼が降下する。
「――――――――――さんがイッ!!」
地面に着地と同時に直下に居たリーダの顔を踏んづける。体重を掛けてそのまま地面に押し潰すと顔面が陥没し地面が血に染まる。目の前の光景が信じられぬ思いで残りの3人は恐怖で身が竦んだ。鬼は可笑しそうに笑いながら、ちょっと待てと手を掲げる。
「何だ・・・どういう・・・」
鬼がリーダーの刀を手に持って、彼の手首を切り落とした。それを、自分の手にくっつけると、みるみるうちに鬼の体の一部へと変化する。感触を確かめるように、気分よさそうに手首をぶんぶん振り回してようやく、残った3人に向き直った。
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