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夜桜一献

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Revenge tragedy of agent Ⅰ

第十三話

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 目の前の鬼と対峙し、隊長が殺された事で指揮権が移った事を悟った男は背後に居る子供組二人に指示を出した。

「二人は、ここから脱出して他の班に知らせろ。一旦引いて体制を整えるんだ」

元々、会敵したら下がって一斉攻撃。そういう手順である。しかしこうまで近づいては逃げる事も出来そうにない。

「山川さん!!ですが!!」

「後方支援させて下さい!!恭太、式神準備!!」

「式神準備了解!!竜也も精霊召喚忘れんなよ!!」

「お前たち・・・・・・」

恭太が、札を出して爆札を空中に浮遊させる。竜也と呼ばれた少年も精霊を召喚し、空中を泳ぐ妖精を出現させた。ピクシーと呼ばれる風を操る妖精である。山川と呼ばれた男も覚悟を決めて刀を抜いて、鬼に構えた。10年前には相手にもならなかったが今ならどの程度通じるか知りたかったのも事実。鬼は刀を捨てて襲い掛かった。間合いに入ったと同時に刀での一閃を放つ。それを、さも当然の様に最低限の動きで回避する。連撃と最期の突きまでも後ろへ躱され、山川は再度構えた。恭太が爆札を貼りつけ、爆発が起こったが大してダメージを負っていない。煙が晴れると今度は、可愛らしい妖精が風の刃を繰り出し鬼にぶつけると、勢い良く後ろの機材にぶつかった。青い血を流し、後頭部に手を当てて自分に流れた血を苦痛に歪んだ表情で見ている。

「いたぞ!!こっちだ!!」

「鬼とすでに交戦中!!よくぞ持ちこたえた!!」

他の班も到着し、山川達も含めて7名が揃った。間を置けば他の班も到着するだろう。状況は好転していると見えた。

「いけるぞ、10年前は警戒こそしていなかったが、今度は違う!!」

山川も自身の式神を出現させ、絡繰り人形の様な物体を見せた。弓を手に持ち、目標を目の前の鬼に向ける。鋭い射撃を放ったが素手で受け止められ、投げ返されると式神が消滅した。その隙に鬼が顔が陥没した死体の前で手を翳すと、肉が腐食し骨だけとなる。

「なっ・・・・・・・・・」

目の前で骨が流動的に動き始め、鬼の掌へと吸い込まれていく。それが終わると、瞬時に掌に手裏剣を数本作製した。マジックショーでも見ているかの動きを見せ、サクッと何か聞こえると額や肩に刺さった者から地面に転がった。手裏剣に警戒して本人への警戒を怠ると鬼が接近して近づき爪を伸ばして突き刺す。阿鼻叫喚の地獄絵図へと早変わりし、鬼はそれを楽しんでいる様にも見える。多少の攻撃程度では、鬼は敢て受け身を取って耐えている。足音が聞こえ、残りの2班が到着した頃には、山川を含む2名しかその場に立っていなかった。その2名も、虫の息で何とか構えを取っていた。子供組に死者が居ないのが幸いか。

「何これ・・・うっそでしょ!?」

「紅葉、相手に集中しなさい」

早苗が紅葉を叱責する。早苗も、紅葉も小太刀を構えて戦闘態勢を取った。




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