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夜桜一献

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Revenge tragedy of agent Ⅱ

第六話

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 京都にある市民病院前に、二人の男が立っていた。一人は一馬、もう一人は正志である。二人が玄関の自動ドアを開くと受け付けの前や椅子に腰掛け、名前を呼ばれるのを待つ病人で溢れている。それを見越して正志は風邪マスクを着用しており、素顔が分からないように眼鏡をかけている。正志の番組は早朝から10時まで。明日は非番なので丁度時間も都合が良い。

「やっぱ、来ないほうが良かったんじゃないか?人気のニュースキャスターが病気貰って
出れませんで済むわけないし」

(プロデューサーから頼まれてるのもあるが
半分は興味本位とは言えないな)

対岸の火事を見る野次馬の様に危ない物見たさに近くで見たい気持ちもある。数秒悩む仕草をして一馬に告げた。

「行かせてくれ。今は局内でも情報は喉から手が出るほど欲しい」

「嘘つけ。俺の代わりにその医者に出演交渉する気だろ」

「分かってるじゃないか。可能であれば交渉させてもらう」

「業界人根性逞しいな」

(それなら、暇そうなスタッフに任せりゃいいのに)

何故追いてきたのか、と理解出来ない。受付にアポイントを取ってもらいその日の診療が片付くまで待たされた。京都にある市民病院前に、二人の男が立っていた。一人は一馬、もう一人は正志である。二人が玄関の自動ドアを開くと受け付けの前や椅子に腰掛け、名前を呼ばれるのを待つ病人で溢れている。それを見越して正志は風邪マスクを着用しており、素顔が分からないように眼鏡をかけている。正志の番組は早朝から10時まで。明日は非番なので丁度時間も都合が良い。

「やっぱ、来ないほうが良かったんじゃないか?人気のニュースキャスターが病気貰って
出れませんで済むわけないし」

(プロデューサーから頼まれてるのもあるが
半分は興味本位とは言えないな)

対岸の火事を見る野次馬の様に危ない物見たさに近くで見たい気持ちもある。数秒悩む仕草をして一馬に告げた。

「行かせてくれ。今は局内でも情報は喉から手が出るほど欲しい」

「嘘つけ。俺の代わりにその医者に出演交渉する気だろ」

「分かってるじゃないか。可能であれば交渉させてもらう」

「業界人根性逞しいな」

(それなら、暇そうなスタッフに任せりゃいいのに)

何故追いてきたのか、と理解出来ない。受付にアポイントを取ってもらいその日の診療が片付くまで待たされた。ようやく、白い机と椅子のある部屋に通されると、白衣を纏う白髪の医師が姿を見せた。

「初めまして、内科医をしている近藤と申します。今日は何か私に話がおありと伺ってますが、何の件でしょう?」

「近藤竜太郎(こんどうりゅうたろう)さんですよね?当時炎上した病院に居て殺人鬼から生き延びたっていう」

「その話ですか。最近、また現れたかもしれないとテレビでもやってますが、引っ張り出されるのは勘弁して欲しいのですが」

近藤は、一馬の手の平にある傷に気が付き

「貴方もでしょう?」

そう尋ねると一馬は頷いた。

「その通りです。10年前、私は拉致され姉は殺されました。今日は昔の古傷を思い出させる事になりますが」

「気にしなくて良い。話して下さい」

「浜田は、本当に死亡してたんですか?」

「私は死体の解剖を行っていませんので詳細な所までは解りかねますが、死亡診断書が作られ、遺体は地下に安置された事は確かです。当時は火災が起きてえらい騒ぎになりましてね。患者を避難させることで皆が頭が一杯でしたよ。泣き叫ぶ声が響いて我先にと逃げる者もおりましたが、我々は絶対安静の方から急いで避難を始めました。火災現場は死体の安置場だったのですが、今でも火災の
原因についてははっきりしませんね」

「じゃあ、その火災で遺体は…」

「燃えちゃいましたね。跡形もなく」

「間違いなく人間は死んだと断言できるんですがね」

続けて、近藤は言い切った。

「私が遭遇した犯人については、化け物としか言いようもない存在でしたよ」




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