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The killer of paranoid Ⅲ
第六話
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種を撒いて刈り取るまでに時間が掛かる。ハクから、その間は夢の世界の住人がこの世界に送り出しているという妖怪を刈る事で時間の無駄を失くす、というものだった。空中に浮かぶ妖怪が放たれるまでは待つ必要があるが、後は多少痛め付けた後、キューブにすれば良いとの事だったが、思わぬ存在に邪魔される事となる。妖怪が出現すると、巨大な百足が空中に浮遊しながら徘徊を始める。海人が動く前に、子供が二人声を合わせて妖怪を攻撃し始めた。
「竜也、行くぞ!!」
「分かってるっての!!」
二人は妖怪に札を飛ばして貼り付け爆発させて地面に落とす。それから少年達が小太刀をもって攻撃を加えようとした際、思わず海人は少年を巨大な蛇で拘束する。指を鳴らすと蛇は人形へと変わる。
「何だこりゃ!!」
「おい、大丈夫かよ!!何か変なの居るぞ!!手品してるし!!」
子供を和ませる為に、手癖を利用して手品を披露する。変なのとは失礼だな、そう思いつつも海人は妖怪をキューブ状にするとその場を離れようとしたが、少年の出した妖精の様な存在に行く手を阻まれる。
「逃がすなピクシー!!」
体は小さい癖に繰り出される風圧は身動きがとれなくなる程。不味いと思った矢先、誰かの声が響く。
「隙を作ってあげよう」
耳元で誰が自分にそう告げたのか理解出来ないままだったが妖精に落雷が落ち、海人はその隙に自由に動けるようになった。二人の少年から、屋根を伝って逃げ切り、肌寒くなってきた街並みを見下ろす。それから、急に携帯のバイブが響き、優里かと確認したが見に覚えのない通知が入っているのを確認する。言葉はない、絵文字もない、唯一言、「D」とだけ書かれていた。
優里を姫に紹介して、友達だと告げると姫も喜んでいた。優里は姫にすぐ打ち解けてくれたし、仲良くしてくれて姫に新しい友だちが増えたと妹も笑顔を浮かべた。でもその日は、姫の体調が悪かったんだろう。急に苦しみだして、後はお医者や看護師が安静にさせる為に接触禁止を言い渡された。優里は申し訳なさそうにしていたが、気にする必要はないと伝えた。猶予はある。そう感じていた。でもあれは病気の進行そのものを除去するものではないとハクも言っていた。死神が突き付けた死刑宣告を回避するためものであり、あくまでーーーーー妹の病状の回復とは無縁の話なのだと。
それでも、と海人は思った。
病院の屋上で、柵にもたれながら買っておいた缶コーヒーを飲む。急に、背後に気配を感じて振り向いた。30台半ば頃の髭を生やした男性がにこやかに笑顔を浮かべている。
「やあ、黄昏れているね少年。昨日は危ない所だったね」
思わず、吹きこぼしそうになり動揺する。
「昨日って、何の話です?人違いじゃないですか」
「そんな訳ないだろ。見くびらないで欲しいね。面白そうな事やってるから僕も君に興味沸いたんだぜ。知らぬ存ぜぬを決められてもこっちにゃ通じないよ」
いつの間にか、男性も缶コーヒーを飲みながら隣に立つ。危ない人間かもしれない。そう判断して観念して少し話し込む。事情を
かいつまんで説明すると、納得した様子だった。
「昨日の連中には驚いたろ?」
「まあ、ハクから説明を受けました。陰陽師の集団が居るそうで」
「そうなんだよ。ムカつくだろあいつら」
「詳しいんですね、その辺の事情に」
「何せ元関係者だからねえ」
懐かしそうな、そんな表情も伺える。
「ちなみに妹さんの事だけど、早道があったらどうする?」
「早道・・・ですか」
「ああ、条件さえ達成出来れば明日にでも問題は解決するね」
「どんな条件ですか」
「ある陰陽師を一人浚ってくる。それだけさ」
男は冗談で言っていない。海人も恐る恐る口にする。
「誘拐って事ですよね」
「今さら君が怖じ気づくとも思ってないけどね。だって彼女、一回実験に使ったんだろう?」
そういうと、遠くに優里が病院を去る姿が見える。
もう一度男に振り向くと姿は消えていた。
携帯が鳴って、メッセージが届く。
返事は待つよ。でも君に時間があるとは思えないけどね
詳しい話が聞きたくなったら返信を
D
そう書かれていた。
「流石に誘拐は不味いだろ」
そう呟いて、残るコーヒーを飲み干し謎の存在との邂逅を終えた。
「竜也、行くぞ!!」
「分かってるっての!!」
二人は妖怪に札を飛ばして貼り付け爆発させて地面に落とす。それから少年達が小太刀をもって攻撃を加えようとした際、思わず海人は少年を巨大な蛇で拘束する。指を鳴らすと蛇は人形へと変わる。
「何だこりゃ!!」
「おい、大丈夫かよ!!何か変なの居るぞ!!手品してるし!!」
子供を和ませる為に、手癖を利用して手品を披露する。変なのとは失礼だな、そう思いつつも海人は妖怪をキューブ状にするとその場を離れようとしたが、少年の出した妖精の様な存在に行く手を阻まれる。
「逃がすなピクシー!!」
体は小さい癖に繰り出される風圧は身動きがとれなくなる程。不味いと思った矢先、誰かの声が響く。
「隙を作ってあげよう」
耳元で誰が自分にそう告げたのか理解出来ないままだったが妖精に落雷が落ち、海人はその隙に自由に動けるようになった。二人の少年から、屋根を伝って逃げ切り、肌寒くなってきた街並みを見下ろす。それから、急に携帯のバイブが響き、優里かと確認したが見に覚えのない通知が入っているのを確認する。言葉はない、絵文字もない、唯一言、「D」とだけ書かれていた。
優里を姫に紹介して、友達だと告げると姫も喜んでいた。優里は姫にすぐ打ち解けてくれたし、仲良くしてくれて姫に新しい友だちが増えたと妹も笑顔を浮かべた。でもその日は、姫の体調が悪かったんだろう。急に苦しみだして、後はお医者や看護師が安静にさせる為に接触禁止を言い渡された。優里は申し訳なさそうにしていたが、気にする必要はないと伝えた。猶予はある。そう感じていた。でもあれは病気の進行そのものを除去するものではないとハクも言っていた。死神が突き付けた死刑宣告を回避するためものであり、あくまでーーーーー妹の病状の回復とは無縁の話なのだと。
それでも、と海人は思った。
病院の屋上で、柵にもたれながら買っておいた缶コーヒーを飲む。急に、背後に気配を感じて振り向いた。30台半ば頃の髭を生やした男性がにこやかに笑顔を浮かべている。
「やあ、黄昏れているね少年。昨日は危ない所だったね」
思わず、吹きこぼしそうになり動揺する。
「昨日って、何の話です?人違いじゃないですか」
「そんな訳ないだろ。見くびらないで欲しいね。面白そうな事やってるから僕も君に興味沸いたんだぜ。知らぬ存ぜぬを決められてもこっちにゃ通じないよ」
いつの間にか、男性も缶コーヒーを飲みながら隣に立つ。危ない人間かもしれない。そう判断して観念して少し話し込む。事情を
かいつまんで説明すると、納得した様子だった。
「昨日の連中には驚いたろ?」
「まあ、ハクから説明を受けました。陰陽師の集団が居るそうで」
「そうなんだよ。ムカつくだろあいつら」
「詳しいんですね、その辺の事情に」
「何せ元関係者だからねえ」
懐かしそうな、そんな表情も伺える。
「ちなみに妹さんの事だけど、早道があったらどうする?」
「早道・・・ですか」
「ああ、条件さえ達成出来れば明日にでも問題は解決するね」
「どんな条件ですか」
「ある陰陽師を一人浚ってくる。それだけさ」
男は冗談で言っていない。海人も恐る恐る口にする。
「誘拐って事ですよね」
「今さら君が怖じ気づくとも思ってないけどね。だって彼女、一回実験に使ったんだろう?」
そういうと、遠くに優里が病院を去る姿が見える。
もう一度男に振り向くと姿は消えていた。
携帯が鳴って、メッセージが届く。
返事は待つよ。でも君に時間があるとは思えないけどね
詳しい話が聞きたくなったら返信を
D
そう書かれていた。
「流石に誘拐は不味いだろ」
そう呟いて、残るコーヒーを飲み干し謎の存在との邂逅を終えた。
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