Voo Doo Child

夜桜一献

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The killer of paranoid Ⅲ

十一話

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 京子と出会ったのは、もう随分と昔の話だ。幼稚園の頃からの腐れ縁で、仲が深まったのは陰陽庁の地下での訓練施設で一緒に行動する事が多くなってから。悪友とも親友とも言える絆が出来てようやく一人前になり、これから二人で頑張っていこうと励ましあった矢先に彼女は自分の上司になった。なった事に憤っている訳じゃない。自分が彼女の隣に立てない事に苛立っている自分がいるのだ。素直に喜べないのにも理由があり、恐らく理解しているからこそ京子も時間の経過を待ったのだろう。それくらい紅葉でも伝わっている。が、しかし、ここ数日の京子の動きは紅葉には不可解なものだった。振り向けば奴がいる。口を開けば自然を装い知らぬ存ぜぬの押し問答。紅葉もムキになってクリスマスの話題を頑なに言わないので余計にこじれている。

(・・・それで、何でこうなってんだっけ)

休日に街の繁華街を散策中、紅葉は後ろを振り向くと後から観光客の群れの中に京子が見える。ひょっとしたら自分の幻覚ではないかと少し遠くの人の気配のない道まで歩くと、一人京子が後を追いて来ている。思えば遠ざかっていたのは紅葉からで京子からではない。何度も携帯に連絡はあったが無視してきたのは紅葉であり、京子から言うのは筋違いだという無言の圧力のように思えて来た。

(私から言うしかないか、これ)

大きく息を吸って吐く。

京子に向き直り、紅葉は彼女に声を掛ける。

「京子・・・・・・その・・・・」

京子も少し表情が和らいで見える。

紅葉の顔も紅潮し、次の言葉を紡ぐ前に、車のタイヤの擦れる音が大きく響き渡る。黒いバンの車の扉から何者かの手が見えあっという間に京子が車の中に引き込まれて車の扉が締まり動きだした。唖然としていた紅葉は硬直が解けたように動き始めて後を追う。車は早いが、式神を召喚して大きな鷹を呼び出して空から追走する。携帯で身内に連絡して応援を呼ぶ。

(全く、ほんとに世話が焼けるわね!!!)

 紅葉のメールは、陰陽庁の事務所のソファーに座る早苗の元へ届いた。

「大変、京子ちゃんが黒い車に誘拐されたって紅葉から今連絡が来たわ。空から追走しているから応援が欲しいって」

「大変だわ!!今すぐ向かわないと!!!」

「え?でもすぐそこに居るんじゃないの?」

話を聞きに来た夏樹が指差す。パソコンで事務作業をしていた京子の手が止まる。その場に居る者達の視線が京子に集まった。

「ーーーー何ですかそれ、こわっ」

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