147 / 246
橘紅葉の回想目録
第十二話
しおりを挟む
かくして、紅葉と早苗の契約の儀式が行われた。歓声が辺りを覆い尽くしている。新たな、守護聖獣の契約者が2人も誕生したのだ。無理もない。中心に居る紅葉と少年は何故か真っ白な灰になったように固まっているが、早苗も少し困惑している様子が見てとれる。由紀は、ただただ、自分が負けた事で責任を感じている様子。水蓮は、どいとくれと人を掻き分けてその場を離れる。木陰まで来ると、声に呼び止められた。
「随分、大判振るまいね」
「なんじゃ、京子か。喜ぶべきじゃろ?お前の望み通りなんじゃし」
「・・・下手な芝居は止めてよ、“お兄ちゃん”」
水蓮の動きが、ピタリと止まる。
「まあ、流石にお前には分かるわな」
一瞬で、水蓮から清治へと姿が変わる。
「説明してもらえる?」
京子は複雑な表情を見せている。契約出来た喜びもあるかもしれないが、それ以上に二人の扱いが極端に変化する事に苛立ちも覚えている。守護聖獣の守護者を遊ばせておく道理はない。他県からも危険な案件があれば真っ先に声が掛かるし、今後危険な任務にも率先して任に当てなければいけない。今まで挑んだ先輩方よりも実力が劣っている二人が任命された今回の一件に黙っていない者も居るだろう。橘家が安泰どころか羨望や嫉妬による足の引っ張り合いが激化したっておかしくはない。事実、現在契約中の玄武の守護者は日本全国を飛び回り、忙しい日々を送っていると聞く。学生の間はまだ学業を優先してもらえるだろうが、卒業すれば玄武の守護者と同じく様々な任に就く。
「お前と紅葉ちゃんが交戦した呪術師が、クリスマスの一件に絡んどる。これから先、戦いは激化するやろう。こっちも備えは必要やろ。タイミングが良かったのもあるしな」
「だからあの二人を?」
「お前が、紅葉ちゃんとの友情を優先して呪術師を逃がしたツケが回ったと思え。連中の目論みが判明しとったら対策も打てるんやけどなぁ」
痛い所を突かれて、京子は口をつぐんだ。
「悪い方にばかり考える必要はあらへん。守護聖獣は最強の式神や。何が相手でもそう遅れをとる事はないで」
じゃあ、と手を振って清治はその場を離れる。熱気冷めぬ会場は、紅葉と早苗が胴上げされている。
京子は複雑な思いで、その様子を眺める他無かった。
「随分、大判振るまいね」
「なんじゃ、京子か。喜ぶべきじゃろ?お前の望み通りなんじゃし」
「・・・下手な芝居は止めてよ、“お兄ちゃん”」
水蓮の動きが、ピタリと止まる。
「まあ、流石にお前には分かるわな」
一瞬で、水蓮から清治へと姿が変わる。
「説明してもらえる?」
京子は複雑な表情を見せている。契約出来た喜びもあるかもしれないが、それ以上に二人の扱いが極端に変化する事に苛立ちも覚えている。守護聖獣の守護者を遊ばせておく道理はない。他県からも危険な案件があれば真っ先に声が掛かるし、今後危険な任務にも率先して任に当てなければいけない。今まで挑んだ先輩方よりも実力が劣っている二人が任命された今回の一件に黙っていない者も居るだろう。橘家が安泰どころか羨望や嫉妬による足の引っ張り合いが激化したっておかしくはない。事実、現在契約中の玄武の守護者は日本全国を飛び回り、忙しい日々を送っていると聞く。学生の間はまだ学業を優先してもらえるだろうが、卒業すれば玄武の守護者と同じく様々な任に就く。
「お前と紅葉ちゃんが交戦した呪術師が、クリスマスの一件に絡んどる。これから先、戦いは激化するやろう。こっちも備えは必要やろ。タイミングが良かったのもあるしな」
「だからあの二人を?」
「お前が、紅葉ちゃんとの友情を優先して呪術師を逃がしたツケが回ったと思え。連中の目論みが判明しとったら対策も打てるんやけどなぁ」
痛い所を突かれて、京子は口をつぐんだ。
「悪い方にばかり考える必要はあらへん。守護聖獣は最強の式神や。何が相手でもそう遅れをとる事はないで」
じゃあ、と手を振って清治はその場を離れる。熱気冷めぬ会場は、紅葉と早苗が胴上げされている。
京子は複雑な思いで、その様子を眺める他無かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
72
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる