Voo Doo Child

夜桜一献

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The killer of paranoid Ⅷ

第七話

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 五鬼義継の体が淡く白く輝く。鯖折りをしている死焔の一人が蒸発してくかのように苦しみ始めると、完全に跡形も無く塵へと変わる。流石の王禅もその光景に驚嘆した。本来邪神との契約を受けている身である以上不死身の体のはずがいとも容易くこの世から完全に消え去った。

「一度も死んで居ない身であれば効果は半減するが、死人である以上死を先延ばしにしているに過ぎん。邪神との契約を壊せば当然無へ帰るのが通りというもの。これが十二神将にも勝るとも劣らぬ破邪必滅の力だ」

「相性最悪ですね。お近づきになりたくないタイプですよ貴方。とは言え呪いの塊を一身に受けるにはこの人数は厳しいのでは?見た所正と負のエネルギーを相殺してゴリ押しで消滅させているようですし。匙加減を間違えると即死と見ましたが?」

指摘されて、白い輝きに陰りが見える。王禅の動きが止まっている間に銀次は動けない退魔師達の為に死焔と攻防を繰り広げ逃げる隙を作った。最後に蹴りを食らわせて後方へと吹き飛ばす。今度は上官と王禅の攻防が繰り広げられる。

「気にするな、どちらかが倒れるまでやり合うまでよ。動ける者は負傷者を抱えて安全な場所まで避難せよ!!尚戦える者は拠点の死焔の相手を頼む。勝てずとも良い、時間を稼ぎ生き延びる戦術を心得よ」

部下達が負傷者を抱えて全員その場から逃げ出していく。召喚された飛頭番を銀次が全て焼き尽くした。今この場に居る死焔は2名。王禅ともう一人の装束を着た召喚術士のみ。今度は皮膚の赤い蛙を召喚すると、舌を出して銀次の腕を絡めて動きを止める。炎を繰り出したが、蛙は何事も無かったかの様に涼し気にしている。

「無駄無駄。溶岩を泳ぐ地獄の蛙です。貴方程度の炎では傷一つ付かない」

「じゃあ、凍らせてみたらどうかな?」

思いもよらぬ方角から少女の声が聞こえる。通りすがりの女子高生。

黒い髪を靡かせて、その足から地面に氷結の力を伝播させる。

その冷気に当てられた蛙はたちまち凍り付いた。

「君は・・・・・・今年の牙王の志水氷柱(しみずつらら)君か。陰陽庁の危機に牙狼会が動いてくれたのか?」

「いえ、私個人で仕事(バイト)を貰おうとこっちに寄ってたんですけど、完全に巻き込まれました。あっちもこっちも戦闘してますし。いっそ逃げようかと思ってたんですけど・・・・・・」

「すまないな、状況が状況だ。君も力を貸してくれないか」

「構いませんよ。3連覇達成した歴代最強って言われてる先輩の戦い振りを見れるのは光栄ですし。共闘お願い出来ます?」

「いつまでその称号に振り回されるんだ俺は。こんな事なら出るんじゃなかったな。引きこもってた方がなんぼかマシだった」

凍った蛙の舌を無理矢理引き千切ると、蛙が崩れ落ちた。状態は2対3となったが、術士が飛頭番を10数体召喚する。王禅も地獄の蛙を10匹呼んだ。

(おかしい、幾ら邪神と契約を結んだとてこの異常な呪力量は説明出来ん!!)

無限に召喚出来る者など居ない。呪力が無ければ基本的には呪術は使えない。ので戦闘中に呪力を集めたり増やしたりして状況を整えるのが呪術戦の基本。その根本を無視した戦術に五鬼義継は違和感を感じていたが状況が説明付かない事に焦りを感じていた。
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