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The killer of paranoid Ⅷ
第九話
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夏樹は一旦、霞達と合流した。何が起こっているのか整理しつつ自分たちがどう動くかについて話し合う。バクは病院の結界維持に専念する為動く事が出来ない。早苗から貰った情報として騒動を起こした犯人が居るという二条城に合流するかどうか。
「バク、ここで京子ちゃんを襲った連中を特定とか出来ない?」
「無茶言わんで貰えないっすか」
「あの物体って生物なの?」
「多分誰かの式神っすね。単純な行動をプログラミングされたAI持ちの術式って感じの。“人間を一定時間操る”以外は特に付与されてはなさそうっすが、これだけの数ともなると人手は大勢必要かと」
「人を操れるって・・・・・・自殺とかも命令出来たり?」
「んにゃ、それは無理そうっす。所詮簡易的な暗示っすから“自分が絶対に出来ない事”は流石に解けるかと。術式には二つプログラムが組み込まれてるみたいで、意味不明な何かを信仰せよ、ともう一つがそれが効かなかった際に自身の願望の肥大化っすな」
「自分の願望だから、解けない訳か。信仰せよってのが自力で解けないのは何で?」
「強めに暗示をかけているのもそうっすが、“時間が指定”されてるっすな。効力はせいぜい2時間程。呪術は細かく限定的に設定すればするほど効力が上昇するっす」
自分の命と引き換えに相手を殺す呪術もある。ルダレス・カジナンや「D」が得意とする生贄を用意して相手を殺す術式が呪術としては一般的。またその反対に自分に制約を課して力を得る呪術もある。それは何も一般人にも出来ない事ではない。
突破すべき試験に合格するまでは、好きな事を我慢する。
告白が上手く行く様にある種のルーティーンを自分に課す
行事が上手くいくように神社にお祈りに通い詰める
必勝祈願の為に“思念”を込めて制約と宣誓を自分に課す事で不思議な力を得る事は微弱ながら普通の人間にも可能なのだ。
「相手にメリットとかあるの?その信仰の暗示」
「多分、あるわね。私みたいな妖怪や神々は“信仰”や“畏怖”、“尊敬”や“蔑視”みたいな、大多数の人間の感情から力を増したり減ったりする事があるし。敵もそれを狙ってるんじゃないかしら」
「そうなってくると、外のクリオネの除去作業も重要ね」
浦美の話に霞が口を挟む。
「浦美はこれからどうするの?」
「そうねえ、私は妖怪だしこの件は放置してもいいのだけれど、長く陰陽庁に居すぎたかしら。一応陰陽庁の協力者として行動するつもり。近隣府県からも大勢助っ人を動員してるみたいだし、術式自体に脅威が無いなら本命を叩きに行くのが筋かしらね」
「なら、あたしと浦美は二条城へ。二人は外の対処を」
「夏樹はちょっと足突っ込み過ぎじゃない?元々姫ちゃんの件が終わったらこの世界とも縁を切るんでしょ?浦美さんは関係者だけど夏樹は私達と一緒に行動すべきよ。私達は協力者ではあっても関係者じゃない。もっと言うなら安全な所で避難こそすべきで火中の栗を拾いに行く必要はないと思う」
霞の考えはドライかもしれないが、自分達が動いて良くなる保障もない。
「そうねえ。私もそう思うわ。“貴方達の役割と責任”はもう終わったし、一般人として行動するのも選択肢の一つよ。貴方が身を危険に晒す必要はないんじゃないかしら」
「だからってこんな事態になってるのに見過ごせないって。京子ちゃんや海人君の事もあるし、バクが与えてくれたこの力があるうちは何もしない事はあたしには出来ない」
「面倒見がいいのね、貴方」
乗りかかった船には決して降りない主義に浦美も呆れる。
「それと私と優理ちゃんををこれ以上危ない目に合わせたくないんでしょ?だから自分だけならって思ってる。違う?」
霞に言われて夏樹も言葉が詰まる。京子や海人の事も気にかかるし、“誘拐する様な危険な連中に二人を巻き込みたくない”のも本当。自分一人なら自己責任だがそれに付き合わせる訳にもいかない。
「相手は、子供を誘拐したり他人を殺しても死体に唾を吐けるような危険な連中よ?夏樹も含めて覚悟はあるかしら?」
「私は姫ちゃんが戻った時に海人君が居ないと寂しいと思うから。身を守る術はハクちゃんから貰ったつもり。怖いけど海人君は返して貰わなきゃ」
「私は夏樹の暴走を止める為ね。危険と判断したら迷わず逃げるわよ」
「二人が覚悟があるなら、あたしは何も言えないかな」
「決まりね。二条城へ合流する事を早苗ちゃんに伝えておくわ。車を用意して貰うから一緒に行きましょうか」
4人はバクを残して、病院から二条城へと向かった。
「バク、ここで京子ちゃんを襲った連中を特定とか出来ない?」
「無茶言わんで貰えないっすか」
「あの物体って生物なの?」
「多分誰かの式神っすね。単純な行動をプログラミングされたAI持ちの術式って感じの。“人間を一定時間操る”以外は特に付与されてはなさそうっすが、これだけの数ともなると人手は大勢必要かと」
「人を操れるって・・・・・・自殺とかも命令出来たり?」
「んにゃ、それは無理そうっす。所詮簡易的な暗示っすから“自分が絶対に出来ない事”は流石に解けるかと。術式には二つプログラムが組み込まれてるみたいで、意味不明な何かを信仰せよ、ともう一つがそれが効かなかった際に自身の願望の肥大化っすな」
「自分の願望だから、解けない訳か。信仰せよってのが自力で解けないのは何で?」
「強めに暗示をかけているのもそうっすが、“時間が指定”されてるっすな。効力はせいぜい2時間程。呪術は細かく限定的に設定すればするほど効力が上昇するっす」
自分の命と引き換えに相手を殺す呪術もある。ルダレス・カジナンや「D」が得意とする生贄を用意して相手を殺す術式が呪術としては一般的。またその反対に自分に制約を課して力を得る呪術もある。それは何も一般人にも出来ない事ではない。
突破すべき試験に合格するまでは、好きな事を我慢する。
告白が上手く行く様にある種のルーティーンを自分に課す
行事が上手くいくように神社にお祈りに通い詰める
必勝祈願の為に“思念”を込めて制約と宣誓を自分に課す事で不思議な力を得る事は微弱ながら普通の人間にも可能なのだ。
「相手にメリットとかあるの?その信仰の暗示」
「多分、あるわね。私みたいな妖怪や神々は“信仰”や“畏怖”、“尊敬”や“蔑視”みたいな、大多数の人間の感情から力を増したり減ったりする事があるし。敵もそれを狙ってるんじゃないかしら」
「そうなってくると、外のクリオネの除去作業も重要ね」
浦美の話に霞が口を挟む。
「浦美はこれからどうするの?」
「そうねえ、私は妖怪だしこの件は放置してもいいのだけれど、長く陰陽庁に居すぎたかしら。一応陰陽庁の協力者として行動するつもり。近隣府県からも大勢助っ人を動員してるみたいだし、術式自体に脅威が無いなら本命を叩きに行くのが筋かしらね」
「なら、あたしと浦美は二条城へ。二人は外の対処を」
「夏樹はちょっと足突っ込み過ぎじゃない?元々姫ちゃんの件が終わったらこの世界とも縁を切るんでしょ?浦美さんは関係者だけど夏樹は私達と一緒に行動すべきよ。私達は協力者ではあっても関係者じゃない。もっと言うなら安全な所で避難こそすべきで火中の栗を拾いに行く必要はないと思う」
霞の考えはドライかもしれないが、自分達が動いて良くなる保障もない。
「そうねえ。私もそう思うわ。“貴方達の役割と責任”はもう終わったし、一般人として行動するのも選択肢の一つよ。貴方が身を危険に晒す必要はないんじゃないかしら」
「だからってこんな事態になってるのに見過ごせないって。京子ちゃんや海人君の事もあるし、バクが与えてくれたこの力があるうちは何もしない事はあたしには出来ない」
「面倒見がいいのね、貴方」
乗りかかった船には決して降りない主義に浦美も呆れる。
「それと私と優理ちゃんををこれ以上危ない目に合わせたくないんでしょ?だから自分だけならって思ってる。違う?」
霞に言われて夏樹も言葉が詰まる。京子や海人の事も気にかかるし、“誘拐する様な危険な連中に二人を巻き込みたくない”のも本当。自分一人なら自己責任だがそれに付き合わせる訳にもいかない。
「相手は、子供を誘拐したり他人を殺しても死体に唾を吐けるような危険な連中よ?夏樹も含めて覚悟はあるかしら?」
「私は姫ちゃんが戻った時に海人君が居ないと寂しいと思うから。身を守る術はハクちゃんから貰ったつもり。怖いけど海人君は返して貰わなきゃ」
「私は夏樹の暴走を止める為ね。危険と判断したら迷わず逃げるわよ」
「二人が覚悟があるなら、あたしは何も言えないかな」
「決まりね。二条城へ合流する事を早苗ちゃんに伝えておくわ。車を用意して貰うから一緒に行きましょうか」
4人はバクを残して、病院から二条城へと向かった。
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