Voo Doo Child

夜桜一献

文字の大きさ
上 下
230 / 246
The killer of paranoid Ⅷ

第二十六話

しおりを挟む
 先に仕掛けたのは、綾乃だった。相手の攻撃に合わせて、パンチを繰り出す。お転婆というには余りにも過ぎる光景。ただ、吹き飛びはせずに力が拮抗している様にも見える。重力を無視して縦横無尽に動いて、ビルの側面を走ったり綾乃は巨大な悪魔を翻弄している。ただ、一撃で屠れなかった事に彼女も少し驚いている様に見え、面白い玩具を見つけたかのような驚きを見せた。悪魔が周囲に黒い光の玉を無数展開して綾乃にぶつける。壮大な花火の様に閃光が迸った後に爆発が巻き起こるものの綾乃本人には傷は付かない。葵は息を整える。綾乃が上手く立ち回ってくれているお陰で自分には意識が向いて居ない。影丸と示し合わせて、影丸が尻尾から相手の背中を上り、敵の顔付近まで近づくと所持しているバッグから爆札をありったけ散布する。爆発が巻き起こり、ダメージと煙幕を敵に与える。

「後は主に任せるぞ!!」

そう言い残して、影丸は頭上から瞬時に消え失せ、代わりに葵の姿が現れる。影丸の位置と葵の位置を交換した。頭上から脳天に刀を突き刺して、傷を負わせる。大声を上げて悪魔は苦痛の声を漏らした。好機と見て、降りながら葵は悪魔の体に刀を連撃して浴びせた。紫の血渋木が飛び交う。綾乃も追撃しようとしたが、悪魔の中で何かの叫び声が綾乃と葵に響く。



【痛い!!やめてくれ!!攻撃しないで!!】



「ほえ?・・・・・・中に誰か居るの?」

「頭に響く・・・何だこりゃ・・・・・・・・・人質か?」



【ここから出してくれ!!お願いだ!!】



「いや、そうじゃないぞ。ありゃ“生贄と交換に召喚”されてるんだワン。すでに生贄にされてあれと混ざってるぞ!!」



【ーーー誰か助けて!!】



少年の声と同時に、悪魔の中から少年の幻影が垣間見える。悪魔のオーラは細くどこかと繋がっており、そこから呪力が無尽蔵に流れて来ている。悪魔の傷は回復している様に見え刀傷も殆ど意味を為さない。

「戦り難いなぁ・・・・・・どうする?」

「助けようよ。何か方法はないの?」

「一方的に邪神との契約で召喚の生贄にされてるワン。どっかにある魔法陣越しに邪神と交渉したとしても生きて帰ってくる保障はないワン」

難しいと影丸は一蹴する。

「とりあえずやってみようよ。暫くあいつの相手して貰って良い?」

「動きが遅いとは言え、主と我二人とは背筋が凍る」

「仕方ないだろ。行くぞ時間稼ぎに」

葵と影丸は巨大な悪魔へと向かう。悪魔が綾乃に放ったのと同じ黒い光球を展開するそれを見て、葵達は青ざめて一目散に逆方向へ逃げだした。閃光と爆発、轟音が響き渡る。本来綾乃だから簡単に防げた代物。葵が軽い結界を出して防げる代物ではない。

「やってられるかああああああああああああ!!」

「時間も稼げない以上、逃げるしかないワン!!」



【ーーーーーーー助けて!!】


「うるせぇ!!助けて欲しいのはこっちの台詞なんだよ!!」


綾乃はビルよりも上空に移動した。道路に魔法陣が描かれており、綾乃は魔法陣へと近寄る。禍々しいオーラが溢れており、綾乃は魔法陣にアクセスを試みる。察知したのか、邪神が重苦しい声を発して警告する。

【誰だ、俺の魔法陣に触れる愚か者は】

すぐに、巨大悪魔にひけを取らぬ邪神の使いが2体顕現する。威嚇を放ち綾乃にプレッシャーを仕掛けてきた。

「あの悪魔を子供と引き換えに召喚したの貴方なんだよね?」

【無論】

「クーリングオフ出来る?」



【ーーーーーーーーーーー舐めてるのか貴様】


しおりを挟む

処理中です...