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並行的輪廻【前編】
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小坂井遼一24歳、フリーター。彼は人生のある『分岐点』を境にずっと時間が止まっている。そんな彼の並行世界の物語_____。
「遼一、告白するなら今日しかないぞ」
友人のタケルが遼一を唆す。そう、今日は高校の卒業式。遼一はずっと想いを寄せている高木麻里に告白する予定だった。だったのだ。
「あの時告白していれば、俺の人生も少しは違ってたのかも…なーんて」
場面が変わり、そこにはワンルームのアパートで独り言をぼやく遼一の姿があった。みんな大学を卒業して就職。恋人なんかを作って華やかな生活の旧友達を尻目にボロアパートでその日暮し。そんな自分を憐みながら独り缶ビール片手に一杯。そんな暮らしも、もう一年経つ。
「俺って何のために生きてんだろ、ハハ」
今日はいつも以上に酔っているのだろう。自然に涙が溢れてくる。心を落ち着かせるためにタバコに手を伸ばす。ライターを付けた時のシュッという乾いた音はやけに落ち着く。ふぅというため息にも似たタバコの蒸し方に自分でも相当疲れていることが感じ取れた。そして、遼一はそのままひとときの静寂に身を任せた。
遼一は異様な騒音と暑さで目が覚めた。ワンルームの狭い部屋がパチパチという細かい破裂音と共に黒煙が立ち込めている。遼一は即座に判断する。「火事だ」と。タバコを蒸したまま寝てしまったようだ。まずい、急いでアパートの外に行かないと。遼一はすぐ目の前にある玄関のドアノブに手を伸ばすが一歩も動けない。自分を囲うようにして炎が蔓延しているのだ。心臓の鼓動はその速度をあげるが、不思議と遼一の頭は冷静だった。
「俺の人生はここで終わるのか…生まれ変わったら今度は麻里に…」
そのまま遼一は炎の渦に呑み込まれていった。
「遼一、告白するなら今日しかないぞ」
友人のタケルが遼一を唆す。そう、今日は高校の卒業式。遼一はずっと想いを寄せている高木麻里に告白する予定だった。だったのだ。
「あの時告白していれば、俺の人生も少しは違ってたのかも…なーんて」
場面が変わり、そこにはワンルームのアパートで独り言をぼやく遼一の姿があった。みんな大学を卒業して就職。恋人なんかを作って華やかな生活の旧友達を尻目にボロアパートでその日暮し。そんな自分を憐みながら独り缶ビール片手に一杯。そんな暮らしも、もう一年経つ。
「俺って何のために生きてんだろ、ハハ」
今日はいつも以上に酔っているのだろう。自然に涙が溢れてくる。心を落ち着かせるためにタバコに手を伸ばす。ライターを付けた時のシュッという乾いた音はやけに落ち着く。ふぅというため息にも似たタバコの蒸し方に自分でも相当疲れていることが感じ取れた。そして、遼一はそのままひとときの静寂に身を任せた。
遼一は異様な騒音と暑さで目が覚めた。ワンルームの狭い部屋がパチパチという細かい破裂音と共に黒煙が立ち込めている。遼一は即座に判断する。「火事だ」と。タバコを蒸したまま寝てしまったようだ。まずい、急いでアパートの外に行かないと。遼一はすぐ目の前にある玄関のドアノブに手を伸ばすが一歩も動けない。自分を囲うようにして炎が蔓延しているのだ。心臓の鼓動はその速度をあげるが、不思議と遼一の頭は冷静だった。
「俺の人生はここで終わるのか…生まれ変わったら今度は麻里に…」
そのまま遼一は炎の渦に呑み込まれていった。
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