新人類の始まり

シナモン

文字の大きさ
上 下
1 / 1

人類の滅亡

しおりを挟む
 2222年、ここは、かつて日本と呼ばれた地
けれど、其処に人々の姿はなかった。
今から200年ほど前の事、
かつて中国大陸と呼ばれた場所から
化学兵器のウィルスが流出し、
世界中に拡がっていった。
ワクチン、治療薬などが次々に開発されたものの、ウィルスは留まり何度も変異を繰り返し、毎年多くの死人を出し続けた結果、とうとう人類は、滅亡してしまった。そのウィルスについては未だに謎のまま。

けれど、
たった2人だけ生き残っていた人間がいた。
何故生き残れたのか?
恐らく、ウィルスに感染しない特殊な免疫力をもっていたのかもしれない。
2人は同じクラスの高校生
伊吹  洋太と足立 マコトだった。

人類が滅亡したとはいえ、他に失われたものはなく、自給自足をすれば暮らしていける。
インフラだってコンピューターで稼働しているものの、それを利用出来るのも、時間の問題だろう。

暫くは、今まで通りの生活ができた。食料はコンビニやスーパーでいくらでも調達出来、
空き家になった豪邸に住んでみたり、憧れの都心のタワマンで暮らしてみたり、それなりに楽しかった。けれどそのうち、ガスも電気も止まった。
もう、YouTubeも、ゲームも出来なくなった。残る楽しみは漫画、雑誌などの書物等アナログ的なもの。


「俺たち、これからどーするよ?
電気が消えたから、冷蔵庫も機能停止しちゃってるし、お店の生鮮食料品はもう、食べれないよね?」と心配顔で言う伊吹。
『だね、何処か農作業出来ると所へでも行って暮らそうか?』
これから先のことを考えると、農作業しながら自給自足で暮らすというのが、一番妥当なことだと思えた。

「じゃあさ、俺のじいちゃんの家とかは?」
『まぁ、別にいいけど、何処にあるんだ?

「山梨県」
『あ~富士山のとこか、いいかもな』
富士山を見ながら、生活するなんて、絶対いいに決まってる。

という訳で富士山の近くに住むことに決めた。行く手段は、置き去りにされた車を使った。オートマなんて運転チョロい。

それにしても、────もう学校へ行く必要もなくなったばかりでなく、就職する必要もない。
何の夢もなく、ただ残りの人生を消化するだけ。
関わる人は、2人だけ。
どうせなら、可愛い女の子がよかったのに。
多分、伊吹だって同じように思ってるよな。
つまんねーな、ホントに。

毎日、緑に囲まれた自然豊かな景色をぼんやりと、眺めていた。
その時、俺、足立真、
突然、閃いてしまったのだ!

『洋太、俺今、スゲー事思いついちゃった!俺、天才を越えたかも。ねぇ、聞いて、聞いて』
「足立が思い付いた事なんて、また、どうせくだらねぇことだろけど……で、なに?」
『子孫だよ、子孫残そうぜ!』
「はっ?野郎2人なのに、アホか!お前ついに頭いかれちまったのか──」
『ち、ちげーよ、お前とかじゃなくってさ』

「どういうこと?」
『だからさ、いるじゃん、ほら、あっちにも、そっちにも……』


其処にいたのは、
草を食んでいた
牛、馬、羊、山羊


「あっち?そっち?何が?──って、うっ、嘘だろ!変な冗談止めろ!笑えねぇ」
最初は、全然乗らなかった伊吹だったが、
何日も繰り返し説得したら、渋々協力してもらえることになった。
多分想像するに、相当欲求不満になってたんだろう。俺と同様に───。


俺、一人でも良かったのかもしれないけど、やっぱいざとなると勇気いるっていうか、キモいっていうか──。

そう、君達のご想像通り
動物との恋愛ってことだよ。露骨な表現は回避したい────
しっかし、そこあるのは、愛ではなく、夢だ。
これからの未来を俺達で創るんだ!!
そうだ、俺達は神になるのさ。
すごくない?
そしてその名は、後世まで伝えられる、──はずだ。
おぉ、想像しただけで萌え、じゃなくて燃える!
絶対!やってやるぜ!



「結構、出来るもんだな、エロ雑誌も使えば──」
あれ程嫌がっていた洋太が、満足そうな笑みを浮かべているのを見て、ホッとした。
どうだったって?
それは、経験したものだけが知ることの出来る特別なものだから、教えてやらない!
いつか、そんな時代が来たら、経験できるよ。それまでのお楽しみだ。クックック。


農作業の傍ら、ひたすら頑張ったかいあって
10か月後、(人間とのハーフだから、人間的っことか)
様々な生き物が産まれた。

半身半獣、半身半魚(つまり、人魚)
ケンタウロス、ユニコーン、河童  etc. 
伝説と云われている生き物だ。
それらは、本当に実在したんだ。
アダムとイヴの時代も多分同じことが行なわれたのであろう、何よりの証拠だ。
そして、次はその者達と───
そして、次はまたその子孫と───つづき、割愛


それでも、中には失敗作もあった。
一つ目小僧、ろくろっ首、のっぺらぼう、
口裂け女、前の時代に妖怪と呼ばれた者達。
これも、確かに実在した。

それより、酷いものは棄てたのだけれど、もしかしたら、何処かで生き延びて今は違う形状しているのかもしれない。






あれから、60年、繰り返した結果、
遂に、遂に本物の人間が誕生した!!
やった~!

その喜びを噛みしめながら、俺達は静かに永眠した。


そして、
・・・
新人類の始まりは、
アダムとイヴではなく



【アダチ】と【イブキ】ってことになっているって話さ。


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...