山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ――

優心

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第二十五章:理の崩壊

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 霊界の雀荘『奈落』では、天界通信のあまりの内容に、怨霊たちがそれぞれの反応を見せていた。

「……こんな……ありえませんわ。」 
 メリーさんは、モニター画面を凝視したまま、その碧眼を震わせた。 「呪殺された人間を全員一斉に蘇生させ、あまつさえ怨霊の女王を現世に『追放』という名で放流するなんて……。これでは世界の理(ことわり)が完全に逸脱していますわ。」

 彼女たち怨霊にとって、死は絶対であり、
 呪いは不変のルールだった。
 しかし、健一という「終わってる性癖の男」が介入したことで、そのシステム自体がバグを起こし、強制再起動をかけられたのだ。

「……匙を投げた。あいつら(天界)も。」
  美々子が、いつの間にか新しい赤い飴を口の中で転がしながら、冷めた声で言った。 

「なるほど、貞子と健一が繰り広げた、あの『ボクシング・エロ・告白』……。
 あれを管理・監視し続ける精神的コストに、天界も耐えられなくなった。
 だから、もうまとめて『現世』というゴミ箱……
 いえ、隔離施設に放り込んだと、花子さんが呟く。」

「……やりすぎたから。あの二人が。」

 美々子の辛辣な一言に、その場にいた全員が沈黙した。確かに、呪いの儀式を「M性感のオプション」に変換され、挙句の果てに現世での「電源スイッチ探し」まで記録して見続けていたら、天界の記録係だって発狂するだろう。
 こんなイレギュラーどう扱っていいかわかったもんじゃない。

「……でもよ、いいじゃねぇの」
  口裂け女が、鏡で化粧をし直しながら晴れやかな顔で笑った。 
「理が壊れたってことは、あたいたちにもチャンスがあるってことでしょ? 貞子がああなった以上、
 あたいたちだって……ねえ?」

「ポポポ……。(そうですね。私も、トレンチコートを貸してくれるFPの可愛い男性、探そうかしら)」
  八尺様が、まんざらでもない表情で自身の巨躯を揺らす。

 デニーズ・レジ前:新しい人生の支払い
「……はい、1,890円ねぇ。お釣りは、現世での幸せの足しにしな」 砂かけ婆は、健一が差し出した1万円札をレジに通しながら、ガハガハと笑った。

「……あ、ありがとうございます。(さっきのデニーズの店員とそっくりだな?姉妹かなんかか?)」
  健一は小銭を受け取り、まだ背中で震えている貞子の肩をポンと叩いた。 

「ほら、行くぞ貞子。さみぃし早く帰ろうぜ。」

「……ええ。健一。」

 店を出た二人の前には、白々と明ける東京の空が広がっていた。 理を逸脱し、天界からも見放され、しかし誰よりも「生」を謳歌し始めた一組の男女。

 貞子は、健一から貸し出された手袋の中で、自分の指が温かい血を巡らせているのを感じ、彼の手をそっと握り返した。

「……健一。私、これから……いっぱい食べるわよ? 貴方の家計が、火の車になるくらい。」

「ははっ、望むところだ。俺はFPだぞ? あんたの食欲くらい、インフレ率に織り込み済みだ。」

 二人の背中は、朝日の中に溶けていく。
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