山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ――

優心

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最終章②終幕:光の中の再会

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 時が流れ、霊界の雀荘『奈落』のモニターは、もう砂嵐さえ映さなくなっていました。そこに座る彼女たちの姿も、かつての禍々しい「呪い」の気配はなく、どこか穏やかな、放課後の教室のような柔らかな空気に包まれています。

「……長いようであっという間だったわね。」 花子さんが、最新モデルだったはずのスマホを閉じ、ふっと溜息をつきました。

「……ああ。ようやく会えるな、貞子の奴と……。」 口裂け女は、もうマスクをしていませんでした。その裂けた口元は、久しぶりの親友を迎え入れるための、優しい微笑みの形をしています。

「……私も、彼と久しぶりにお話ができました。」
  カシマさんの傍らには、かつて彼女を助けたあの青年の霊魂が、そっと寄り添っていました。失われた脚の痛みではなく、再会の喜びが彼女の顔を輝かせています。

「ポポポ!!!(素敵ね!!!)」 
 八尺様が、その大きな身体を小さく丸めるようにして、幸せを噛みしめるように拍手しました。

 美々子の隣には、かつて憎み合い、和解した菜々子がいました。二人は幼い姉妹のように、しっかりと、もう二度と離れないように手を繋いでいました。

 伽椰子の傍らには、穏やかな表情を取り戻した旦那の霊魂、そして俊雄。足元には、かつての恨みの象徴ではなく、ただの愛くるしい家族としての黒猫が喉を鳴らしている。彼女の「あ、あ、あ……。」という声は、今や家族への愛しき呼びかけへと変わっていた。

 カランカラン、と。 雀荘の古い扉が開きました。

 光り輝く道を通って、一人の女性が足を踏み入れます。 真っ白なパーカーに、艶やかな黒髪。その顔には、数十年分の「愛し、愛された記憶」が刻まれていました。

「……お待たせ。みんな。」

 貞子が照れくさそうに笑うと、背後からあのアホな声が追いかけてきました。

「おい、待てよ貞子! 天国の受付、あんなに並んでるなんて聞いてねえぞ! FPの俺が、列の並び方をコンサルしてやんなきゃ……。」

「まったく……待たせすぎですわよ、あのアホ夫婦は。」 メリーさんが、呆れたように扇子で顔を隠しながら、でも、その瞳には嬉し涙を浮かべて立ち上がりました。

「さあ、席は空いてるわよ。……最後の半荘、始めましょうか、積もる話もあるでしょう。
 たくさん話を聞かせなさいよ『終わってるお二人さん』……。」
 すっかり古ボケた雀荘の2つの椅子に腰掛けるよう
 勧める花子さん。
 その手には、2人のために用意された、最高級の茶葉で淹れた紅茶が温かく香っている。

 健一
「うるさいよ花子さん!せっかくここに寄ったのに……。まぁ受付も並んでる事だしなぁ。
 う~んまずは何から話そうかなぁ貞子。」
 愉快そうなへらっとした表情で貞子に話を振る健一

 貞子
「そうね、まずは……。」

 霊界の闇は、完全に光に溶けていきました。 そこにあるのは、もう呪いではなく、長い旅を終えた者たちが集う、ささやかな祝杯の席。

 160cmの男と、180cmの女。 そして、かつて「怨霊」と呼ばれた美しき彼女たちの笑い声が、永遠の中に響き渡りました。

 ―― 山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ―― 

【全編 完】
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