王となった弟とその奴隷となった姉の話

nana

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毛並みの良く整った馬を走らせる少女、彼女の年は13歳
その前には、6歳の、彼女の弟が座っている

少女は、王女
しかし、ドレスではなく騎士の制服に似た服を着ている
少年は王子
着ている服は装飾はない簡素だが、王子らしい威厳を漂わせている

「アーネスト、怖くない?」
「・・・大丈夫ですよ、姉上」

強がりではない
弟は、本当に怖がっていないのだ

それが密かに、憎い

怖がってくれたらいいのに

そう思う私はきっと、どうかしてるんだ

姉は、そう思う

嫉妬、とは違う

有名な魔法使いに、「生まれついての王の中の王」と言われた弟に、対抗しようなどと思ったことはない

父である王の愛妾でしかなかった母から生まれた自分と違って正室である王妃様から生まれた王太子

憎めたらよかった

憎めないのが憎い

何もできない弱い子に生まれてきてくれたら良かったのに

・・・・どうかしているのだ、そんなことを思う自分は

王女である姉、アリシア・ホワイトは振り切るように馬を走らせた

「姉上」

「・・・」

アリシアは答えない

全然動じていない弟が憎いから

「姉上」

「・・・」

「・・・アリシア」

思わず、馬を止めた

弟は時々、姉ではなく、名前で呼ぶ

そういうとき、姉は、平静を保つことをまず考える

「・・・なに?アーネスト?」

名前を呼び捨てされたことをさもなんでもないように姉は答える

「なにか・・・あったのですか?」

「・・・」

賢い子だと思う

その賢さが憎くて、そして、ホッとする

ホッとしてはいけないだろうに、この子は弟で、私は姉なのだから

「アリシア」

「なんでもないわ、なんでも」

なんでもなくはない、王である父が、ふと、そろそろ婚約者を、と言い出したのだ

政略結婚は、王女の務め、わかっている、わかっているけれど

嫌だ

嫌だ

嫌だ

嫌だ

離れたくない

あなたのそばを離れたくない

「・・・アリシア」

「何でもないって言ってるでしょ!」

声を荒げてしまった

少し振り向きかけていた弟の顔は見えない

見ないでほしい

そう思うけれど、弟は、こちらを見る

「なんで、泣いてるんですか、アリシア」

「・・・」

アリシアは答えられない

アーネストに今の顔を、泣いている自分を、見られたくなかったから

助けを求めるなら、もし助けを求めるべきなら、それは年上の大人であるべきであって、年下の子ども、ましてや、自分の弟であっていいはずがないのに

なのに

父から、婚約者をそろそろ考えようと戯れに言われた時、浮かんだのは、アーネストだった

大人になったアーネストの姿が、浮かんだ

助けてと、思った、アーネストに、弟に

「・・・言わなくていい、アリシア」

そう言って、弟は姉に抱き着いた

小さな体で、抱きしめるように

それがなぜだか、姉は、なんだかすごく、安心して、でも、苦しくて、仕方ない

だから

何も言わず、弟を抱きしめ返した

二人は抱きしめ合い続けた

離れてついてきていた護衛の騎士たちが呼びかけても、しばらく二人は離れなかった




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