王となった弟とその奴隷となった姉の話

nana

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賭け

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アリシア・ホワイトは王女である前に、騎士であり、剣士だった
彼女は23だが、その体は、15歳の時のまま、止まっている
原因はわからず、肉体強化のため魔力を常時流すようになったためではないかと言われている
アリシアは、その強さは、肉体強化の魔力ありきの物ではあるが、ゴッドスピード王国では、間違いなく最強の一角を占める
その武功も、第一級だった

そんな彼女は今、模擬剣を手に、ある少年と対峙していた

アリシアに対峙する少年は、アーネスト・ホワイト
アリシアの母親違いの弟であり、王太子である
アリシアより7歳年下の彼は、15歳のまま時が止まったアリシアより幾分か年上に見えた
その容貌は、少年でありながら、もう、大人になりつつある年ごろの危うさをまとっていた

すで背は頭一つ分より高く、アーネストは姉であるアリシアを追い越していた



強くなった…
模擬剣を幾度か交えアリシアはそう思う
アーネストは間違いなく王国でも有数の実力を今持っている

弟アーネストの成長を嬉しく思う
もともと、不出来な自分と違って、なんでもできる、生まれながらの王の器を持つ弟だ
愛妾の娘である自分が姉らしく思うのはよくないことだとは思うけれど

でも、もうじき、会えなくなる

ならいいでしょう?姉らしくしても


「…姉上」
「なに?アーネスト」
「…私と賭けをしませんか?」
「賭け?珍しいわね、あなたがそんなことを言うなんて」
「賭けてほしいことがあるのです」
「なにかしら?」
アリシアは、もうじきここから離れて行く自分が弟のためになにができるだろう
そう思った
なんでもしてあげたい、私でできることなら
「・・・」
アーネストは黙って、アリシアを見つめている
アリシアは、精いっぱい、虚勢を張る、姉だから
アーネストのその端正な顔立ちと、深い夜の蒼さを思わせる瞳に、吸い込まれないように、剣先に目を合わせる
「・・・アーネスト?どうしたの?言って、私にできることなら賭けなんかしないでもなんでもしてあげるわ」
瞬間
アーネストの目が驚きで見開いた
そしてすぐ、目を細めた
「・・・あまりそういうことをめったに言うものじゃない」
「え?」
「・・・いや、なんでも、ですか?姉上」
「ええ、私にできることならなんでも」
「・・・では・・・」
アーネストは剣を下ろして、じっとアリシアを見つめた
アリシアも剣を下ろして、アーネストを見つめ返した
アリシアは体に流れる魔力を強めた
でないと、アーネストと見つめ合うことができない、勝てない
「・・・嫁ぐのをやめてください」
「え?」
「公爵に嫁ぐのをやめてください」
「アーネスト・・・」
嬉しい
そう思う自分をアリシアは抑える
「公爵には、謀反の疑いがかけられています」
「え」
「公爵には、謀反の疑いがかけられています、姉上、公爵に嫁ぐのをやめてください
それに、公爵は父上よりも年上ではないですか」
「・・・」
アリシアは、なんだか、がっかりした
自分が嫁ぐのを嫌だと言ってくれるその理由が、なにか、思っていたのと違うから
思っていたのとどう違うのか、それを言葉にしないで済んだことにほっとしつつ
「・・・公爵は、素晴らしい方よ、アーネスト」
「・・・ダメですか?」
「あなたに黙って決めたことは、私が悪かったと思うわ」
「もちろん私は怒っていますよ」
「でも、これは私が決めたことなの」
「・・・」
「わかって」
「・・・そんなにあいつがいいのか・・・」
アーネストはアリシアに聞こえないようにつぶやいた
「え?何か言ったアーネスト?」
「・・・」
アーネストは無言で剣を構えた
「では、やっぱり賭けてもらいます、私が勝ったら、嫁ぐのをやめ、このまま王宮にとどまる、ずっと」
「・・・」
何も知らないアーネストが憎い
ずっとここにいられたらどんなにいいか
それができないから嫁いでいくというのに
「いいわ、じゃあ、あなたが勝ったら、私は嫁ぐのをやめてどこにも行かないわ」
アリシアも剣を構えなおした
「そうしてください」
「あなたが勝ったらね、アーネスト」
「・・・」
再び、剣を交える
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