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踏み石
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「ねえ、アーネスト」
「なんですか?姉上」
アリシアは、騎士服ではなく、ドレスをまとっている、そして、前を歩くアーネストと手を、つないでいる
アーネストは、アリシアより年下だが、15歳ほどで肉体の成長が止まった、時が止まっているアリシアの方がどうみてもアーネストより年下に見えた
アーネストは、王宮の中を、アリシアの手を取って歩いている
二人は一緒にいて、歩いている
「あの、少し手を、離さない?」
「ダメですよ姉上、あなたは、療養中なんだから」
先の戦で重傷を負ったのは事実だが、もう、傷は塞がっている
副長は隊長であるアリシアを助けるよう本隊から治癒術士を有無を言わさず引っ張り、全力で治癒させ、その後すぐに王宮の治癒術士が転移魔法でやってきて、アリシアを治癒した
とはいえ
命に係わる重傷だったのは事実だ
気を失っている間に、王宮へとアリシアは運ばれ、そして、現在に至る
「・・・でも、もう傷は・・・」
「私はまだ怒ってるんですよ、姉上」
少し強く、手を握られた
アーネストの怒りが伝わってくる」
「・・・ごめんなさい」
素直に、そう言葉が出てくる
「・・・さあ、もう少し歩きましょう姉上、ここは私たちの家なのだから」
「・・・はい」
騎士となる前からアリシアは離宮で暮らし、そして、騎士となってからは、王宮で暮らすことはなかった
幸い、というか、一騎当千の強さを持つアリシアは、再び小競り合いが始まったあちこちの国境にひっぱりだこで、王宮に戻らずにすんでいた
王女としての務めから、逃れられていた
大きな手で、自分の手を取るアーネスト、その背中は、まだ16歳なのに大きくて、それがとてもアリシアは嬉しくて、そして安心した
二人は、一緒にいなかった時間を取り戻すように、王宮で過ごした
・・・アリシアはほんの数週間前のことを、アーネストと過ごした日々を思い出していた
変な感じがした
私の手を取ったあの大きな手が、今は、剣を、模擬とはいえ剣を、握っている
そして私も、同じ模擬の剣を握っている
こうしてお互い剣をとり向き合うことを、王宮にいた間、思い浮かべることはなかった
アリシアは、剣の速度を少し高めている
アーネストが対応できるレベルを、見極めつつ、自分の強さを出している
手加減しつつ、圧倒できるレベルまで、もう少し
もうすでに、国内でも一握りの剣士しか対応できないレベルまで上げている
そして
そんなアリシアにアーネストは、ついてきている
そして
腹立たしいことに、その瞳はまっすぐにアリシアを見据えている
まるで悪いのはアリシアだと言わんばかりに
アーネストの言うことを聞かないアリシアが悪いと言わんばかりに
「どうしたアリシア?」
「え?」
「もっと本気を出せ、でないと意味がない」
「え?え?」
「本気のお前を負かさないと意味がない」
「・・・本気で、私に勝てると思ってるの?」
「俺はお前に勝つ」
「なんでよ」
「お前が俺の物だからだ、だから、俺は本気のお前に勝たないといけない」
腹が立った
今迄で一番腹が立った
アーネストはいつだってアリシアにとって唯一無二の主だった
アーネストのそばにいるために必死に剣を振るってきた
アーネストのために
アーネストのそばにいるために
なのに
剣を自分から奪おうとする、どこまでも
どこまでも、私を、姉を、認めようとしない
「私があなたの物だって言うのなら、少しは私を認めてよ」
「認めてるつもりだ」
「なら」
「ダメだ、お前には二度と剣は持たせん
剣など持たず、ずっと・・・王宮にいればいい」
「・・・」
腹が立つ、を通り越した
そしてまた思い出す
わずか数週間前のこと
今日は公務だからと、いつも二人で訪れる庭園にアリシアは一人できた
毎日毎日この時間は二人で庭園に来ていたから、だから、寂しかった
王の愛妾だった母が好きだった花の前に来た時、声がした
アーネストの声だった、一人ではなかった
隠れてみると
アーネストが、アリシアではない、別の手を、取っていた
その女性は、高貴だと言うことが一目でわかった
隣国の使いとして、王女が訪れている、とはチラッと聞いた
アリシアも王女だが、その女性は、王女らしい王女だった
「さあ姫、私の手をとってください」
アーネストの優し気な声
「・・・失礼いたします、王太子殿下」
淑女らしく王女が答える
アーネストの手を取り、足元の小さな水路の踏み石を渡り、転びかけた
それを、アーネストが支えた
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です、申し訳ありません殿下」
そう言ってアーネストを見上げた王女の顔は赤くなっていた
嬉しそうに
そして
「いいえ、お怪我がなくてよかった」
という、優しい、アーネストの声が聞こえた
あの時、逃げるように気づかれないようにその場から離れた、涙が止まらなかった
行かなければよかった、庭園なんか
でなければ、見ないで済んだ
聞かなくて済んだ
・・・・私はまたそんなことを思って、バカだわ本当に・・・
意味ないから
あれが現実なんだから
ずっと一緒になんかいられないんだから
なのに
アーネストはいろという
王宮にいろと
ずっと
そして
アーネストの隣に誰かが、自分ではない誰かが、やってきて、居座る
そして私は、それを、近くで、眺めていろと
アーネストは、そう言ったのだ、私に
憎い
「なんですか?姉上」
アリシアは、騎士服ではなく、ドレスをまとっている、そして、前を歩くアーネストと手を、つないでいる
アーネストは、アリシアより年下だが、15歳ほどで肉体の成長が止まった、時が止まっているアリシアの方がどうみてもアーネストより年下に見えた
アーネストは、王宮の中を、アリシアの手を取って歩いている
二人は一緒にいて、歩いている
「あの、少し手を、離さない?」
「ダメですよ姉上、あなたは、療養中なんだから」
先の戦で重傷を負ったのは事実だが、もう、傷は塞がっている
副長は隊長であるアリシアを助けるよう本隊から治癒術士を有無を言わさず引っ張り、全力で治癒させ、その後すぐに王宮の治癒術士が転移魔法でやってきて、アリシアを治癒した
とはいえ
命に係わる重傷だったのは事実だ
気を失っている間に、王宮へとアリシアは運ばれ、そして、現在に至る
「・・・でも、もう傷は・・・」
「私はまだ怒ってるんですよ、姉上」
少し強く、手を握られた
アーネストの怒りが伝わってくる」
「・・・ごめんなさい」
素直に、そう言葉が出てくる
「・・・さあ、もう少し歩きましょう姉上、ここは私たちの家なのだから」
「・・・はい」
騎士となる前からアリシアは離宮で暮らし、そして、騎士となってからは、王宮で暮らすことはなかった
幸い、というか、一騎当千の強さを持つアリシアは、再び小競り合いが始まったあちこちの国境にひっぱりだこで、王宮に戻らずにすんでいた
王女としての務めから、逃れられていた
大きな手で、自分の手を取るアーネスト、その背中は、まだ16歳なのに大きくて、それがとてもアリシアは嬉しくて、そして安心した
二人は、一緒にいなかった時間を取り戻すように、王宮で過ごした
・・・アリシアはほんの数週間前のことを、アーネストと過ごした日々を思い出していた
変な感じがした
私の手を取ったあの大きな手が、今は、剣を、模擬とはいえ剣を、握っている
そして私も、同じ模擬の剣を握っている
こうしてお互い剣をとり向き合うことを、王宮にいた間、思い浮かべることはなかった
アリシアは、剣の速度を少し高めている
アーネストが対応できるレベルを、見極めつつ、自分の強さを出している
手加減しつつ、圧倒できるレベルまで、もう少し
もうすでに、国内でも一握りの剣士しか対応できないレベルまで上げている
そして
そんなアリシアにアーネストは、ついてきている
そして
腹立たしいことに、その瞳はまっすぐにアリシアを見据えている
まるで悪いのはアリシアだと言わんばかりに
アーネストの言うことを聞かないアリシアが悪いと言わんばかりに
「どうしたアリシア?」
「え?」
「もっと本気を出せ、でないと意味がない」
「え?え?」
「本気のお前を負かさないと意味がない」
「・・・本気で、私に勝てると思ってるの?」
「俺はお前に勝つ」
「なんでよ」
「お前が俺の物だからだ、だから、俺は本気のお前に勝たないといけない」
腹が立った
今迄で一番腹が立った
アーネストはいつだってアリシアにとって唯一無二の主だった
アーネストのそばにいるために必死に剣を振るってきた
アーネストのために
アーネストのそばにいるために
なのに
剣を自分から奪おうとする、どこまでも
どこまでも、私を、姉を、認めようとしない
「私があなたの物だって言うのなら、少しは私を認めてよ」
「認めてるつもりだ」
「なら」
「ダメだ、お前には二度と剣は持たせん
剣など持たず、ずっと・・・王宮にいればいい」
「・・・」
腹が立つ、を通り越した
そしてまた思い出す
わずか数週間前のこと
今日は公務だからと、いつも二人で訪れる庭園にアリシアは一人できた
毎日毎日この時間は二人で庭園に来ていたから、だから、寂しかった
王の愛妾だった母が好きだった花の前に来た時、声がした
アーネストの声だった、一人ではなかった
隠れてみると
アーネストが、アリシアではない、別の手を、取っていた
その女性は、高貴だと言うことが一目でわかった
隣国の使いとして、王女が訪れている、とはチラッと聞いた
アリシアも王女だが、その女性は、王女らしい王女だった
「さあ姫、私の手をとってください」
アーネストの優し気な声
「・・・失礼いたします、王太子殿下」
淑女らしく王女が答える
アーネストの手を取り、足元の小さな水路の踏み石を渡り、転びかけた
それを、アーネストが支えた
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です、申し訳ありません殿下」
そう言ってアーネストを見上げた王女の顔は赤くなっていた
嬉しそうに
そして
「いいえ、お怪我がなくてよかった」
という、優しい、アーネストの声が聞こえた
あの時、逃げるように気づかれないようにその場から離れた、涙が止まらなかった
行かなければよかった、庭園なんか
でなければ、見ないで済んだ
聞かなくて済んだ
・・・・私はまたそんなことを思って、バカだわ本当に・・・
意味ないから
あれが現実なんだから
ずっと一緒になんかいられないんだから
なのに
アーネストはいろという
王宮にいろと
ずっと
そして
アーネストの隣に誰かが、自分ではない誰かが、やってきて、居座る
そして私は、それを、近くで、眺めていろと
アーネストは、そう言ったのだ、私に
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