25 / 28
25
しおりを挟む
雲一つない青空。
王都の大聖堂には、国中から集まった祝いの鐘の音が鳴り響いていました。
バージンロードの先、祭壇の前には、純白のタキシードに身を包んだレオンハルト様が待っています。
彼は私――父のエスコートで歩いてくる花嫁姿の私――を見た瞬間、早くも目元を袖で拭っていました。
(……泣くのが早いですわ、レオンハルト様)
私は心の中でツッコミを入れつつ、右手にはブーケ、左手には懐中時計(ブーケの中に隠しています)を握りしめ、歩を進めました。
現在時刻は、予定通り十一時三十分。
入場行進、遅延なし。
聖歌隊のテンポ、良好。
参列者の配置、問題なし。
(完璧ね)
私の「挙式プロジェクト」は、今のところ寸分の狂いもなく進行しています。
父からレオンハルト様へと私の手が渡されます。
「スカーレット……。綺麗だ。息が止まりそうだ」
レオンハルト様が囁きました。その瞳は潤んでいて、子犬のような愛らしさと、騎士の凛々しさが同居しています。
「ありがとうございます。……ですがレオンハルト様、鼻水が出ていますわ」
「感極まっているんだ。許してくれ」
私たちは祭壇の前に並びました。
神父様が厳かに聖書を開きます。
「汝、レオンハルト・アイゼン。病める時も、健やかなる時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓うか?」
「誓います。……命だけでなく、魂にかけて」
レオンハルト様の力強い誓い。
会場から「はぁ~、素敵……」というため息が漏れました。
「汝、スカーレット・ヴァレンタイン。……(同文)……誓うか?」
「誓います。契約書通りに」
私は実務的に答えました。
さあ、次は指輪の交換です。これが終われば、あとは誓いのキスをして、サクッと退場。
所要時間、残り十五分。完璧なタイムマネジメントです。
ところが。
神父様が、台本にはない余計な一言を口走りました。
「――では、この二人の結婚に異議がある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば、永遠に沈黙せよ」
(……は?)
私は眉をひそめました。
そのセリフは「時間短縮のためカット」と進行表に赤字で書いておいたはずです。
神父様、アドリブを入れましたね? あとで減給です。
「……異議などあるはずがないだろう」
レオンハルト様も苦笑し、私に指輪を嵌めようとしました。
その時です。
バァァァァン!!
大聖堂のステンドグラスが激しく震え、天井から「待ったァァァ!!」という大音声が降り注ぎました。
「!?」
参列者たちが悲鳴を上げて見上げると、大聖堂の上空に、巨大な影が差しました。
あれは……飛空艇?
いいえ、ガレリア帝国の最新鋭「魔導強襲揚陸艦」です。
「異議あり!! その結婚、非効率につき却下する!!」
拡声魔法で響き渡る、聞き覚えのある声。
天井の窓が割れ、そこからロープ一本で颯爽と降りてきたのは、銀髪の皇太子、ルーカス殿下でした。
彼はスタッと祭壇の上に着地し(神父様が腰を抜かしました)、バサリとマントを翻しました。
「やあ、スカーレット! ギリギリ間に合ったね!」
「ルーカス……貴様……!」
レオンハルト様が瞬時に私を背に庇い、どこからともなく剣(儀礼用ですが本物)を抜きました。
「何の真似だ? ここは神聖な結婚式場だぞ。空気を読め!」
「空気? そんなものよりデータを読みたまえ!」
ルーカス殿下は懐から、分厚いグラフ用紙を取り出しました。
「僕は計算し直したんだ! 君たちが結婚した場合の『幸福度』と、僕とスカーレットが結婚した場合の『世界経済発展率』を! 結果、後者の方が0.5%だけ効率が良いことが判明した!」
「誤差の範囲ですわ!」
私は思わず叫びました。
「お帰りください! 今は式の最中です! 貴方のせいでスケジュールが三分遅れています!」
「たった三分だろう? 僕と結婚すれば、人生の無駄な時間を三十年は短縮できるぞ!」
「貴様……スカーレットをデータで語るな!」
レオンハルト様の殺気が膨れ上がります。
会場はパニックです。
「きゃあ! 帝国の皇太子よ!」
「戦争!? ここで戦争が始まるの!?」
「衛兵! 衛兵!」
アイゼン公爵夫人(お義母様)だけは、扇で顔を隠しながら「あらあら、モテる嫁をもらうと大変ね」と涼しい顔をしていますが。
「さあ、スカーレット! その指輪を捨てて、僕の手を取るんだ! 今ならこの揚陸艦で、ハネムーン(世界視察)へ直行できるぞ!」
ルーカス殿下が手を差し伸べてきました。
私はその手を見つめ、そして懐中時計を見ました。
遅延、五分。
許容範囲を超えました。
私のこめかみに、青筋が浮かび上がりました。
「……いい加減になさい」
私はドレスの裾を捲り上げました。
そこ(太腿のガーターベルト)には、護身用の小型拳銃――ではなく、式典用の「祝砲用クラッカー(特大)」が隠されていました。
「えっ?」
ルーカス殿下が固まりました。
「私の! 完璧な! スケジュールを!!」
私はクラッカーの筒を、ルーカス殿下の顔面に突きつけました。
「邪魔するなぁぁぁぁ!!」
パーーーーーーン!!!
特大の破裂音と共に、色とりどりの紙吹雪と金銀のテープが、至近距離でルーカス殿下の顔面に炸裂しました。
「ぶべらっ!?」
皇太子殿下は華麗に吹き飛び、祭壇の下へと転がり落ちました。
シーン……。
大聖堂が静まり返ります。
顔中をキラキラのテープまみれにしたルーカス殿下が、ピクピクと震えながら起き上がりました。
「……い、痛い……けど……」
彼は鼻血を垂らしながら、なぜか恍惚とした表情で私を見上げました。
「素晴らしい……! その判断力! その火器の威力! やはり君こそ、帝国に必要な人材だ……!」
「懲りない男だな、貴様は」
レオンハルト様が呆れ果てて剣を収めました。
「……スカーレット。やっていいことと悪いことがあるが、今のは『ナイス』だ」
「ありがとうございます」
私はクラッカーの筒を投げ捨て、息を整えました。
「神父様、続きを」
「は、はい……!」
腰を抜かしていた神父様が慌てて立ち上がりました。
「えー、では……異議のある者は……」
「もう結構です! 先へ進めて!」
「は、はい! では指輪の交換!」
私はレオンハルト様の指に、力任せに指輪をねじ込みました。
レオンハルト様も、苦笑しながら私の指に指輪を嵌めてくれます。
「……騒がしい式になったな」
「ええ。ですが、記憶には残りますわ」
「違いない」
そして、最後の誓いのキス。
レオンハルト様がベールを上げ、私の顔を覗き込みました。
「……五秒だったな?」
「はい。五秒です」
「短いが、濃厚にいかせてもらう」
彼は私の腰を引き寄せ、唇を重ねました。
一、二、三……。
その間、ルーカス殿下は「くそっ、見せつけやがって! データにはない数値だ!」と悔しがり、リリィ様は「キャー! 絵描きさん、今の描いてぇぇ!」と叫び、ヴィクター氏は「器物破損と不法侵入で、帝国への請求書を作成しておくか」と手帳を開いていました。
五秒。
レオンハルト様は唇を離しましたが、その瞳は名残惜しそうに熱く私を見つめていました。
「……愛している、スカーレット」
「……私もです、レオンハルト様」
カラン、カラン、カラン!
祝福の鐘が鳴り響きます。
こうして、帝国皇太子の乱入というハプニングはありましたが、私の結婚式は(大幅な遅延を除けば)無事に成立しました。
「さあ、退場です! 急いで! 披露宴のスープが冷めます!」
「最後まで効率重視だな、私の妻は!」
レオンハルト様はお姫様抱っこで私を抱え上げ、バージンロードを駆け抜けました。
拍手と歓声、そして紙吹雪の中へ。
これにて、一件落着――。
とはいかないのが、私の人生のようです。
なぜなら、吹き飛ばされたルーカス殿下が、マイクを握りしめて叫んでいたからです。
「まだだ! 結婚生活はこれからが本番だ! 『離婚率』というデータがある限り、僕は諦めないぞォォォ!」
……やれやれ。
どうやらこの先も、私の「安眠」と「定時退社」を巡る戦いは続きそうです。
(でもまあ……二人なら、なんとかなるでしょう)
私はレオンハルト様の胸に顔を埋め、今日一番の笑顔を浮かべました。
王都の大聖堂には、国中から集まった祝いの鐘の音が鳴り響いていました。
バージンロードの先、祭壇の前には、純白のタキシードに身を包んだレオンハルト様が待っています。
彼は私――父のエスコートで歩いてくる花嫁姿の私――を見た瞬間、早くも目元を袖で拭っていました。
(……泣くのが早いですわ、レオンハルト様)
私は心の中でツッコミを入れつつ、右手にはブーケ、左手には懐中時計(ブーケの中に隠しています)を握りしめ、歩を進めました。
現在時刻は、予定通り十一時三十分。
入場行進、遅延なし。
聖歌隊のテンポ、良好。
参列者の配置、問題なし。
(完璧ね)
私の「挙式プロジェクト」は、今のところ寸分の狂いもなく進行しています。
父からレオンハルト様へと私の手が渡されます。
「スカーレット……。綺麗だ。息が止まりそうだ」
レオンハルト様が囁きました。その瞳は潤んでいて、子犬のような愛らしさと、騎士の凛々しさが同居しています。
「ありがとうございます。……ですがレオンハルト様、鼻水が出ていますわ」
「感極まっているんだ。許してくれ」
私たちは祭壇の前に並びました。
神父様が厳かに聖書を開きます。
「汝、レオンハルト・アイゼン。病める時も、健やかなる時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓うか?」
「誓います。……命だけでなく、魂にかけて」
レオンハルト様の力強い誓い。
会場から「はぁ~、素敵……」というため息が漏れました。
「汝、スカーレット・ヴァレンタイン。……(同文)……誓うか?」
「誓います。契約書通りに」
私は実務的に答えました。
さあ、次は指輪の交換です。これが終われば、あとは誓いのキスをして、サクッと退場。
所要時間、残り十五分。完璧なタイムマネジメントです。
ところが。
神父様が、台本にはない余計な一言を口走りました。
「――では、この二人の結婚に異議がある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば、永遠に沈黙せよ」
(……は?)
私は眉をひそめました。
そのセリフは「時間短縮のためカット」と進行表に赤字で書いておいたはずです。
神父様、アドリブを入れましたね? あとで減給です。
「……異議などあるはずがないだろう」
レオンハルト様も苦笑し、私に指輪を嵌めようとしました。
その時です。
バァァァァン!!
大聖堂のステンドグラスが激しく震え、天井から「待ったァァァ!!」という大音声が降り注ぎました。
「!?」
参列者たちが悲鳴を上げて見上げると、大聖堂の上空に、巨大な影が差しました。
あれは……飛空艇?
いいえ、ガレリア帝国の最新鋭「魔導強襲揚陸艦」です。
「異議あり!! その結婚、非効率につき却下する!!」
拡声魔法で響き渡る、聞き覚えのある声。
天井の窓が割れ、そこからロープ一本で颯爽と降りてきたのは、銀髪の皇太子、ルーカス殿下でした。
彼はスタッと祭壇の上に着地し(神父様が腰を抜かしました)、バサリとマントを翻しました。
「やあ、スカーレット! ギリギリ間に合ったね!」
「ルーカス……貴様……!」
レオンハルト様が瞬時に私を背に庇い、どこからともなく剣(儀礼用ですが本物)を抜きました。
「何の真似だ? ここは神聖な結婚式場だぞ。空気を読め!」
「空気? そんなものよりデータを読みたまえ!」
ルーカス殿下は懐から、分厚いグラフ用紙を取り出しました。
「僕は計算し直したんだ! 君たちが結婚した場合の『幸福度』と、僕とスカーレットが結婚した場合の『世界経済発展率』を! 結果、後者の方が0.5%だけ効率が良いことが判明した!」
「誤差の範囲ですわ!」
私は思わず叫びました。
「お帰りください! 今は式の最中です! 貴方のせいでスケジュールが三分遅れています!」
「たった三分だろう? 僕と結婚すれば、人生の無駄な時間を三十年は短縮できるぞ!」
「貴様……スカーレットをデータで語るな!」
レオンハルト様の殺気が膨れ上がります。
会場はパニックです。
「きゃあ! 帝国の皇太子よ!」
「戦争!? ここで戦争が始まるの!?」
「衛兵! 衛兵!」
アイゼン公爵夫人(お義母様)だけは、扇で顔を隠しながら「あらあら、モテる嫁をもらうと大変ね」と涼しい顔をしていますが。
「さあ、スカーレット! その指輪を捨てて、僕の手を取るんだ! 今ならこの揚陸艦で、ハネムーン(世界視察)へ直行できるぞ!」
ルーカス殿下が手を差し伸べてきました。
私はその手を見つめ、そして懐中時計を見ました。
遅延、五分。
許容範囲を超えました。
私のこめかみに、青筋が浮かび上がりました。
「……いい加減になさい」
私はドレスの裾を捲り上げました。
そこ(太腿のガーターベルト)には、護身用の小型拳銃――ではなく、式典用の「祝砲用クラッカー(特大)」が隠されていました。
「えっ?」
ルーカス殿下が固まりました。
「私の! 完璧な! スケジュールを!!」
私はクラッカーの筒を、ルーカス殿下の顔面に突きつけました。
「邪魔するなぁぁぁぁ!!」
パーーーーーーン!!!
特大の破裂音と共に、色とりどりの紙吹雪と金銀のテープが、至近距離でルーカス殿下の顔面に炸裂しました。
「ぶべらっ!?」
皇太子殿下は華麗に吹き飛び、祭壇の下へと転がり落ちました。
シーン……。
大聖堂が静まり返ります。
顔中をキラキラのテープまみれにしたルーカス殿下が、ピクピクと震えながら起き上がりました。
「……い、痛い……けど……」
彼は鼻血を垂らしながら、なぜか恍惚とした表情で私を見上げました。
「素晴らしい……! その判断力! その火器の威力! やはり君こそ、帝国に必要な人材だ……!」
「懲りない男だな、貴様は」
レオンハルト様が呆れ果てて剣を収めました。
「……スカーレット。やっていいことと悪いことがあるが、今のは『ナイス』だ」
「ありがとうございます」
私はクラッカーの筒を投げ捨て、息を整えました。
「神父様、続きを」
「は、はい……!」
腰を抜かしていた神父様が慌てて立ち上がりました。
「えー、では……異議のある者は……」
「もう結構です! 先へ進めて!」
「は、はい! では指輪の交換!」
私はレオンハルト様の指に、力任せに指輪をねじ込みました。
レオンハルト様も、苦笑しながら私の指に指輪を嵌めてくれます。
「……騒がしい式になったな」
「ええ。ですが、記憶には残りますわ」
「違いない」
そして、最後の誓いのキス。
レオンハルト様がベールを上げ、私の顔を覗き込みました。
「……五秒だったな?」
「はい。五秒です」
「短いが、濃厚にいかせてもらう」
彼は私の腰を引き寄せ、唇を重ねました。
一、二、三……。
その間、ルーカス殿下は「くそっ、見せつけやがって! データにはない数値だ!」と悔しがり、リリィ様は「キャー! 絵描きさん、今の描いてぇぇ!」と叫び、ヴィクター氏は「器物破損と不法侵入で、帝国への請求書を作成しておくか」と手帳を開いていました。
五秒。
レオンハルト様は唇を離しましたが、その瞳は名残惜しそうに熱く私を見つめていました。
「……愛している、スカーレット」
「……私もです、レオンハルト様」
カラン、カラン、カラン!
祝福の鐘が鳴り響きます。
こうして、帝国皇太子の乱入というハプニングはありましたが、私の結婚式は(大幅な遅延を除けば)無事に成立しました。
「さあ、退場です! 急いで! 披露宴のスープが冷めます!」
「最後まで効率重視だな、私の妻は!」
レオンハルト様はお姫様抱っこで私を抱え上げ、バージンロードを駆け抜けました。
拍手と歓声、そして紙吹雪の中へ。
これにて、一件落着――。
とはいかないのが、私の人生のようです。
なぜなら、吹き飛ばされたルーカス殿下が、マイクを握りしめて叫んでいたからです。
「まだだ! 結婚生活はこれからが本番だ! 『離婚率』というデータがある限り、僕は諦めないぞォォォ!」
……やれやれ。
どうやらこの先も、私の「安眠」と「定時退社」を巡る戦いは続きそうです。
(でもまあ……二人なら、なんとかなるでしょう)
私はレオンハルト様の胸に顔を埋め、今日一番の笑顔を浮かべました。
0
あなたにおすすめの小説
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる