ただ、嫌われたかっただけなんです。婚約破棄を望みます。

ちゅんりー

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「……もう、言葉なんて無力よ。物理的な『暴力』を見せてやるわ」

私は自室で、ギらついた瞳を輝かせながら、棚に並んだ高級な磁器を睨みつけていた。

博愛の象徴? 全人類の恋人?
笑わせないで。私は、自分の怒りさえコントロールできない、ヒステリックで野蛮な女なのよ!
その証拠を、今ここでアラリック様の前で突きつけてやるわ!

「お嬢様、また物騒なものを手に取って……。それは、先代の公爵が愛用していた、国宝級のティーカップですよ」

アンナが、ハラハラしながら私の手元を指差した。

「いいのよ! 壊すことに意味があるんだから! さあ、アラリック様をここに呼びなさい。私の『狂気』を特等席で見せてあげるわ!」

しばらくして、アラリック様が心配そうな顔で部屋にやってきた。
その後ろには、当然のようにマリアさんも付いてきている。

「ルト、急にどうしたんだい? 気分でも悪いのか——」

「うるさいわ! 近寄らないで!」

私は叫ぶなり、手近にあった最高級の皿を床に叩きつけた。

パリンッ!

鋭い破裂音が部屋に響き、美しい破片が四散した。
よし! 絶好のスタートだわ!

「見てなさい、アラリック様! 私はこうやって、気に入らないことがあれば何でも壊す女なのよ! 私は凶暴で、わがままで、王妃の品格なんて欠片もないんだから!」

私は次々と、棚の上の高価な食器を床に叩きつけていった。
ガシャン! パリン! 派手な音が鳴り響く。

「さあ、どう!? 怖いでしょう? 呆れたでしょう!? こんな女とは結婚できないって、今すぐ言いなさいな!」

私は息を切らしながら、挑戦的にアラリック様を睨みつけた。
彼は——呆然と立ち尽くし、目を見開いていた。
ついに、ついにドン引きしたわね!?

ところが。

「……っ!! ああ、なんて痛ましい……! ルト、君は……!」

アラリック様が、震える手で顔を覆った。

「君は、我が国に巣食う『古い価値観』や『形だけの美徳』を、こうして一つずつ打ち砕いているんだね……!」

「……は?」

「見てごらん、マリア嬢。ルトが壊しているのは、ただの皿じゃない。僕たちの家系を縛ってきた、重苦しい伝統そのものだ! 彼女は、自らの手を汚して、新しい時代の幕開けを告げる『破壊と創造の女神』として舞っているんだ!」

マリアさんが、いつものように激しくメモを取りながら叫んだ。

「その通りです、殿下! ルト様は、ご自身のストレスをあえて『音』に変えることで、王宮内の淀んだ空気を浄化していらっしゃるのですわ! この音、まるで運命を切り拓くファンファーレのようです!!」

「……え、ちょっと待って。私、ただ暴れてるだけなんだけど」

「ルト! 危ないから止めるんだ!」

アラリック様がいきなり私に駆け寄り、私の体を背後から抱きしめた。
その腕は、驚くほど力強く、そして温かかった。

「君がどれほど激しい情熱を秘めているか、よくわかった。君は一人で、この国の歪みと戦っていたんだね。……もういい、これからは僕も一緒に壊そう。君が壊したいものは、僕がすべて壊してあげるから」

「……はぁぁぁぁ!?」

アラリック様は、私の手から磁器を優しく取り上げると、自らそれを床に投げ捨てた。

ガシャン!

「ふぅ……。なるほど、これは確かに心が洗われる。ルト、君が教えてくれなければ、僕は一生、皿の一枚も割れない臆病な王子のままだった。君は僕に、『本能の解放』という最高の教育を施してくれたんだね!」

「素晴らしいです、殿下! 私も後に続きますわ!!」

マリアさんまでもが、花瓶を手に取って床に叩きつけた。

「(……なんで!? どうして王宮の重要人物たちが、揃いも揃って器物破損の共犯者になってるのよ!?)」

「ルト。君がどれだけ暴れても、僕は君の手を離さない。君のその『破壊的な愛』を、僕が一生かけて受け止めよう」

アラリック様が、私の耳元で甘く囁き、私をさらに強く抱きしめた。

私は、彼の腕の中で完全に戦意を喪失した。

暴れれば「古い価値観の打破」と言われ。
物を壊せば「心の浄化」と讃えられ。
挙句の果てには、王子の「ワイルドな一面」を目覚めさせてしまった。

「(……ねえ、誰か。本当に誰か一人くらい、私を『ヒステリック女』って罵ってよ……!!)」

私の「お皿割り大暴れ作戦」は、王宮内のストレス解消法の新境地を切り拓き、私の「聖女伝説」に「新しい時代を切り拓くジャンヌ・ダルク」という新たな称号を加えてしまったのだった。
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