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「シナモン・クラスツ! 貴様との婚約を、この場をもって破棄する!」
王宮の大広間に、よく通る声が響き渡った。
きらびやかなシャンデリアの下、着飾った貴族たちがざわめきと共に道を開ける。
その中心に立っているのは、この国の第一王子であるエドワード殿下だ。
彼の隣には、小動物のように震える男爵令嬢リリィが寄り添っている。
まるで絵画のような「正義の王子と守られるヒロイン」の構図。
本来ならば、糾弾された悪役令嬢はここで青ざめ、地面に崩れ落ちるのがお決まりだろう。
しかし、当の私――シナモン・クラスツ公爵令嬢は、まったく別のことを考えていた。
(あ、しまった。今朝仕込んだ『天然酵母その3』の瓶、蓋を少し緩めてくるのを忘れた気がするわ)
思考の九割は、自室の窓辺に置かれたガラス瓶に向けられている。
あれはただの酵母ではない。
苦節三ヶ月、やっと安定して発泡し始めた、愛しき我が子のような存在なのだ。
もし爆発でもしていたら、部屋中が酸っぱい匂いで充満してしまう。
(早く帰りたい……。帰って瓶の様子を確認して、ついでに明日の朝食用のブリオッシュの生地を叩きつけたい)
私が遠い目をしていると、エドワード殿下が苛立ちも露わに叫んだ。
「おいシナモン! 聞いているのか!?」
「……はい、伺っておりますわ殿下。発酵……いえ、破棄とおっしゃいましたか?」
「そうだ! 貴様のその性根の腐った行いには、もう我慢ならん!」
殿下は芝居がかった仕草で、震えるリリィの肩を抱き寄せた。
「貴様は、この愛らしいリリィに対し、陰湿な嫌がらせを繰り返してきたそうだな」
「嫌がらせ、ですか?」
「とぼけるな! 彼女の証言は取れているのだぞ!」
私は首をかしげた。
記憶にあるのは、リリィ男爵令嬢に会うたびに「美味しいもの」を分け与えようとしたことくらいだ。
「リリィ嬢、私があなたに何をしたというの?」
私が尋ねると、リリィは殿下の背後に隠れながら、涙目で訴えた。
「ううっ……シナモン様は……私を見るたびに、こ、小麦の塊を……無理やり口に押し込もうとして……!」
会場がざわつく。
「小麦の塊を?」「なんて野蛮な」「窒息させる気か?」
ひそひそ話が聞こえてくるが、私は心外だった。
「あれは小麦の塊などではありませんわ! 試作段階ナンバー42、全粒粉とライ麦を3対7で配合し、低温長時間発酵で旨みを引き出した、至高のカンパーニュです!」
「ひいぃっ! その目が怖いんですぅ!」
リリィが悲鳴を上げた。
どうやら私の熱意(パンへの愛)が、彼女には殺意として伝わっていたらしい。
確かに、彼女は小食だ。
私が焼いた顔より大きなパンを見て「これを全部食べないと許さない」と言われたように感じたのかもしれない。
ただ感想が聞きたかっただけなのに。
「貴様、まだ自分の罪を認めないのか! リリィの部屋に、大量の白い粉を送りつけたことも知っているぞ!」
「ああ、あれは最高級の強力粉『天使の羽衣』です。一緒に手ごねパンを作りましょうという、私なりの友好の証でして」
「知るか! 彼女は『毒かもしれない』と怯えて夜も眠れなかったのだぞ!」
それは申し訳ないことをした。
パン職人(ブーランジェ)としての才能があるかどうか、彼女の手のひらの温度を確かめたかっただけなのだが。
「さらに、学園の裏庭で『窯(かま)に入れて焼いてやる』と呟いていたという目撃情報もある!」
「それはパンの話です」
「嘘をつけ! リリィを脅したのだろう!」
「いいえ、殿下。私が言ったのは『この生地は、石窯に入れて高温で一気に焼き上げてやるのが一番幸せな最後だわ』です」
「サイコパスか貴様は!」
殿下のツッコミが鋭く入る。
どうしてこうも話が通じないのだろう。
私にとってパンは人生であり、恋人であり、家族だ。
それを語ることが、なぜ悪行になるのか理解に苦しむ。
エドワード殿下は大きなため息をつき、勝ち誇ったように私を見下ろした。
「言い逃れもそこまでだ、シナモン。パン、パンとうわ言のように繰り返すその奇行、もはや公爵令嬢として、いや次期王妃として相応しくない!」
「……つまり?」
「よって、貴様を王都から追放する! 実家の辺境領にて、頭を冷やすがいい!」
その瞬間。
私の脳内で、チーン! とオーブンの焼き上がりを知らせる軽快な音が鳴った。
(えっ……追放?)
(実家の辺境領って……あの、小麦の生産量が国内トップクラスの、クラスツ領?)
(しかも、王都の堅苦しい公務や、王妃教育から解放されるってこと?)
私の瞳が、かつてないほどキラキラと輝き出した。
王都の屋敷では、父上が「公爵令嬢が粉まみれになるなど外聞が悪い」と言って、厨房への出入りを制限されていた。
隠れて夜中にこねるしかなかった、あの不自由な日々。
それが、辺境に行けば終わるのだ。
あそこには使われていない離れがあったはず。
あそこを改装して、石窯を作って、朝から晩までパンを焼けるのではないか?
「……本当によろしいのですか、殿下?」
私は震える声で尋ねた。
殿下は、私が絶望して震えていると勘違いしたらしい。
ふん、と鼻を鳴らす。
「今さら泣きついても遅いぞ。もう決定事項だ。明日には馬車を出せ」
「ありがとうございます!!!」
私は満面の笑みで叫んだ。
会場中の空気が凍りつく。
殿下もリリィも、ぽかんと口を開けて私を見ていた。
「えっ? 礼?」
「はい! 感謝いたしますわ殿下! ああ、なんて素晴らしいご配慮でしょう! 私、辺境でのんびりと反省(パン作り)に励みますわ!」
私はドレスの裾をつまみ、これ以上ないほど優雅なカーテシーを披露した。
「それでは、荷造りがありますので失礼いたします。ああ、忙しくなるわ。酵母の瓶を梱包して、麺棒も専用ケースに入れないと。新しい小麦との出会いが私を待っている……!」
ブツブツと呟きながら、私は踵を返した。
背後から「お、おい待て! もっとこう、悲壮感とかないのか!?」という殿下の声が聞こえたが、今の私には雑音にしか聞こえない。
私の心はすでに、まだ見ぬ辺境の大地――黄金色の小麦畑へと飛んでいたのだ。
こうして、私の婚約破棄騒動は幕を閉じた。
それは同時に、伝説のパン屋『ベーカリー・シナモン』の始まりでもあったのだが、それはまだ誰も知らない。
***
馬車に揺られること三日。
窓の外には、見渡す限りの緑と、黄金色に輝く小麦畑が広がっていた。
「空気が……美味しいわ」
私は馬車の窓を全開にして、肺いっぱいにその香りを吸い込んだ。
「お嬢様、お顔に土埃がつきますよ」
向かいに座る侍女のマリーが呆れたように言うが、私は気にならなかった。
「いいのよマリー。これは土埃じゃないわ。大地のスパイスよ」
「また訳の分からないことを……。それにしても、本当に良かったのですか? 王妃教育もあと少しで終わるところでしたのに」
「マリー、想像してみて」
私は身を乗り出した。
「毎朝、冷めきった堅いパンと、味の薄いスープを飲む生活と。焼きたてのクロワッサンのサクサクという音で目覚め、バターの香りに包まれて眠る生活。どちらが幸せ?」
「それは……後者ですけど」
「でしょう? 殿下は私に『最高の自由』という手切れ金をくださったのよ。感謝状を贈りたいくらいだわ」
マリーは苦笑いしながら肩をすくめた。
彼女だけは、私のパンへの異常な執着を知りつつもついてきてくれた、得難い理解者だ。
「さあ、着いたらまずは父上に挨拶をして、その足で離れの視察よ。改装計画書は、道中の馬車の中で完璧に仕上げたから」
手元の羊皮紙には、間取り図や必要な機材リストがびっしりと書き込まれている。
王都を追い出された哀れな令嬢?
いいえ。
ここからが、シナモン・クラスツの本当の人生(パンライフ)の始まりなのだ。
実家の屋敷が見えてくる。
懐かしい我が家。
そして、その奥に広がる豊かな農地。
私は胸の前でぎゅっと拳を握りしめた。
「待っていなさい、愛しの小麦たち。私が最高に美味しく変身させてあげるからね!」
意気揚々と馬車を降りた私を待っていたのは、涙を流して抱きついてくる父上――辺境伯と、なぜか厨房から漂ってくる焦げ臭い匂いだった。
王宮の大広間に、よく通る声が響き渡った。
きらびやかなシャンデリアの下、着飾った貴族たちがざわめきと共に道を開ける。
その中心に立っているのは、この国の第一王子であるエドワード殿下だ。
彼の隣には、小動物のように震える男爵令嬢リリィが寄り添っている。
まるで絵画のような「正義の王子と守られるヒロイン」の構図。
本来ならば、糾弾された悪役令嬢はここで青ざめ、地面に崩れ落ちるのがお決まりだろう。
しかし、当の私――シナモン・クラスツ公爵令嬢は、まったく別のことを考えていた。
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思考の九割は、自室の窓辺に置かれたガラス瓶に向けられている。
あれはただの酵母ではない。
苦節三ヶ月、やっと安定して発泡し始めた、愛しき我が子のような存在なのだ。
もし爆発でもしていたら、部屋中が酸っぱい匂いで充満してしまう。
(早く帰りたい……。帰って瓶の様子を確認して、ついでに明日の朝食用のブリオッシュの生地を叩きつけたい)
私が遠い目をしていると、エドワード殿下が苛立ちも露わに叫んだ。
「おいシナモン! 聞いているのか!?」
「……はい、伺っておりますわ殿下。発酵……いえ、破棄とおっしゃいましたか?」
「そうだ! 貴様のその性根の腐った行いには、もう我慢ならん!」
殿下は芝居がかった仕草で、震えるリリィの肩を抱き寄せた。
「貴様は、この愛らしいリリィに対し、陰湿な嫌がらせを繰り返してきたそうだな」
「嫌がらせ、ですか?」
「とぼけるな! 彼女の証言は取れているのだぞ!」
私は首をかしげた。
記憶にあるのは、リリィ男爵令嬢に会うたびに「美味しいもの」を分け与えようとしたことくらいだ。
「リリィ嬢、私があなたに何をしたというの?」
私が尋ねると、リリィは殿下の背後に隠れながら、涙目で訴えた。
「ううっ……シナモン様は……私を見るたびに、こ、小麦の塊を……無理やり口に押し込もうとして……!」
会場がざわつく。
「小麦の塊を?」「なんて野蛮な」「窒息させる気か?」
ひそひそ話が聞こえてくるが、私は心外だった。
「あれは小麦の塊などではありませんわ! 試作段階ナンバー42、全粒粉とライ麦を3対7で配合し、低温長時間発酵で旨みを引き出した、至高のカンパーニュです!」
「ひいぃっ! その目が怖いんですぅ!」
リリィが悲鳴を上げた。
どうやら私の熱意(パンへの愛)が、彼女には殺意として伝わっていたらしい。
確かに、彼女は小食だ。
私が焼いた顔より大きなパンを見て「これを全部食べないと許さない」と言われたように感じたのかもしれない。
ただ感想が聞きたかっただけなのに。
「貴様、まだ自分の罪を認めないのか! リリィの部屋に、大量の白い粉を送りつけたことも知っているぞ!」
「ああ、あれは最高級の強力粉『天使の羽衣』です。一緒に手ごねパンを作りましょうという、私なりの友好の証でして」
「知るか! 彼女は『毒かもしれない』と怯えて夜も眠れなかったのだぞ!」
それは申し訳ないことをした。
パン職人(ブーランジェ)としての才能があるかどうか、彼女の手のひらの温度を確かめたかっただけなのだが。
「さらに、学園の裏庭で『窯(かま)に入れて焼いてやる』と呟いていたという目撃情報もある!」
「それはパンの話です」
「嘘をつけ! リリィを脅したのだろう!」
「いいえ、殿下。私が言ったのは『この生地は、石窯に入れて高温で一気に焼き上げてやるのが一番幸せな最後だわ』です」
「サイコパスか貴様は!」
殿下のツッコミが鋭く入る。
どうしてこうも話が通じないのだろう。
私にとってパンは人生であり、恋人であり、家族だ。
それを語ることが、なぜ悪行になるのか理解に苦しむ。
エドワード殿下は大きなため息をつき、勝ち誇ったように私を見下ろした。
「言い逃れもそこまでだ、シナモン。パン、パンとうわ言のように繰り返すその奇行、もはや公爵令嬢として、いや次期王妃として相応しくない!」
「……つまり?」
「よって、貴様を王都から追放する! 実家の辺境領にて、頭を冷やすがいい!」
その瞬間。
私の脳内で、チーン! とオーブンの焼き上がりを知らせる軽快な音が鳴った。
(えっ……追放?)
(実家の辺境領って……あの、小麦の生産量が国内トップクラスの、クラスツ領?)
(しかも、王都の堅苦しい公務や、王妃教育から解放されるってこと?)
私の瞳が、かつてないほどキラキラと輝き出した。
王都の屋敷では、父上が「公爵令嬢が粉まみれになるなど外聞が悪い」と言って、厨房への出入りを制限されていた。
隠れて夜中にこねるしかなかった、あの不自由な日々。
それが、辺境に行けば終わるのだ。
あそこには使われていない離れがあったはず。
あそこを改装して、石窯を作って、朝から晩までパンを焼けるのではないか?
「……本当によろしいのですか、殿下?」
私は震える声で尋ねた。
殿下は、私が絶望して震えていると勘違いしたらしい。
ふん、と鼻を鳴らす。
「今さら泣きついても遅いぞ。もう決定事項だ。明日には馬車を出せ」
「ありがとうございます!!!」
私は満面の笑みで叫んだ。
会場中の空気が凍りつく。
殿下もリリィも、ぽかんと口を開けて私を見ていた。
「えっ? 礼?」
「はい! 感謝いたしますわ殿下! ああ、なんて素晴らしいご配慮でしょう! 私、辺境でのんびりと反省(パン作り)に励みますわ!」
私はドレスの裾をつまみ、これ以上ないほど優雅なカーテシーを披露した。
「それでは、荷造りがありますので失礼いたします。ああ、忙しくなるわ。酵母の瓶を梱包して、麺棒も専用ケースに入れないと。新しい小麦との出会いが私を待っている……!」
ブツブツと呟きながら、私は踵を返した。
背後から「お、おい待て! もっとこう、悲壮感とかないのか!?」という殿下の声が聞こえたが、今の私には雑音にしか聞こえない。
私の心はすでに、まだ見ぬ辺境の大地――黄金色の小麦畑へと飛んでいたのだ。
こうして、私の婚約破棄騒動は幕を閉じた。
それは同時に、伝説のパン屋『ベーカリー・シナモン』の始まりでもあったのだが、それはまだ誰も知らない。
***
馬車に揺られること三日。
窓の外には、見渡す限りの緑と、黄金色に輝く小麦畑が広がっていた。
「空気が……美味しいわ」
私は馬車の窓を全開にして、肺いっぱいにその香りを吸い込んだ。
「お嬢様、お顔に土埃がつきますよ」
向かいに座る侍女のマリーが呆れたように言うが、私は気にならなかった。
「いいのよマリー。これは土埃じゃないわ。大地のスパイスよ」
「また訳の分からないことを……。それにしても、本当に良かったのですか? 王妃教育もあと少しで終わるところでしたのに」
「マリー、想像してみて」
私は身を乗り出した。
「毎朝、冷めきった堅いパンと、味の薄いスープを飲む生活と。焼きたてのクロワッサンのサクサクという音で目覚め、バターの香りに包まれて眠る生活。どちらが幸せ?」
「それは……後者ですけど」
「でしょう? 殿下は私に『最高の自由』という手切れ金をくださったのよ。感謝状を贈りたいくらいだわ」
マリーは苦笑いしながら肩をすくめた。
彼女だけは、私のパンへの異常な執着を知りつつもついてきてくれた、得難い理解者だ。
「さあ、着いたらまずは父上に挨拶をして、その足で離れの視察よ。改装計画書は、道中の馬車の中で完璧に仕上げたから」
手元の羊皮紙には、間取り図や必要な機材リストがびっしりと書き込まれている。
王都を追い出された哀れな令嬢?
いいえ。
ここからが、シナモン・クラスツの本当の人生(パンライフ)の始まりなのだ。
実家の屋敷が見えてくる。
懐かしい我が家。
そして、その奥に広がる豊かな農地。
私は胸の前でぎゅっと拳を握りしめた。
「待っていなさい、愛しの小麦たち。私が最高に美味しく変身させてあげるからね!」
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