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第一部

第四話 買い物

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商店街を抜けた大通り沿いにある大型書店に、定期購読している雑誌の発売日だったので、序でにとりに行くことを伝えたら、翔太は「俺も欲しい物あるし」って、嫌な顔をする事なく付き合ってくれた。
大型書店に入り、翔太に「欲しいモノってなに?」って聞いたら、「参考書」って言うから、付いて行ったら、赤い表紙で有名な参考書の中から最新の『防衛大学校』の物を手に取って中をペラペラと捲って閉じた。元に戻さず、そのまま片方の手で持って、隣に並んでいた『防衛医科大学校 医学科』と背表紙に書かれた物も手に取った。

「優香も要るだろ?」

2冊を手にしてレジに向かった。
会計を済ませた翔太は、私の定期購読している雑誌を受け取るまで、少し離れた所で待っていてくれた。
白のキャンバストートバックに雑誌を納めてレジを離れた。
翔太は、片手に書店の袋をぶら下げている。

「翔太、それ預かるよ?」

書店の袋を指差してトートバックを広げて言っても、

「結構重いから、いいよ。」

という翔太を無視して、翔太の手から袋を奪ってバックに納めた。

「そうそう、翔太、晩御飯リクエストある?ランチも御馳走になったし、晩御飯くらい翔太の食べたい物リクエストにお答えします!」

翔太が真剣に考え混みだした。

「あんまり手の込んだものは作れないからね…?」

と念を押したら、

「炊き込みご飯に味噌汁、チキン南蛮とお浸し、肉じゃが、煮浸し…」

思っていたリクエストと違って、和食のメニューが翔太の口から出て来た。てっきり、イタリアンとかフレンチ的なメニューのリクエストがくると思ってたから、意外なリクエストでちょっとびっくりした。
私はトートバックからメモ帳を取り出し、リクエストされたメニューを書き上げた。

「炊き込みご飯は、ちょっとだけズルするけど許してね。流石に、今の時間から買い物して、6品全部作るってのは私には無理だから…」

と伝えると、

「えっ?全部作ってくれる気でいたの?その中から幾つかだけでいいよ。」

翔太が遠慮して言ってきた。

「ううん。私が翔太に食べて欲しいから作るの。ランチやコレのお礼もあるし…。」

と、胸でカチャっと金属音を響かせるドッグタグ を指差した。
商店街に戻り、お肉屋さんで鶏肉と牛肉を買ってたら、ウチの家御用達のお肉屋さんのおじさんが、

「初々しいカップルさんだねぇ~。これ、サービスだ。持ってけ!」

って、揚げたてのお店の手作りのコロッケを個別に袋に詰めて2個手渡して来た。
折角頂いた揚げたてのコロッケはスーパーまでの道のりで、2人してペロリと食べてしまった。
スーパーで家に無かった野菜と勉強のお供のおやつを幾つか買うことにした。

「じゃがいもや、玉ねぎとか嵩張るものは、築城のおばあちゃんがこの間送ってくれたから、買い物が少し楽でよかった。」

と、言えば、

「築城基地の航空祭に行った時にお世話になったばぁちゃん元気にしてるんだ?築城って言や、第8航空団、パンサーが配置されているんだよなぁ~。懐かしいなぁ~。」

小さい時に、一緒に築城基地の航空祭を見に行ったのも覚えていたみたいで、翔太がおばあちゃんのことも心配してくれた事も嬉しかった、でも、やっぱり戦闘機パイロットを目指しているだけあって、基地にどの航空団が配置されているかちゃんと把握している翔太は立派だと思った。
野菜を吟味している時、カートを押してくれていた翔太が、不思議そうに色々質問してきた。

「水煮してある筍や人参、ささがきのゴボウは何に使うのか?」

って、聞くから、

「炊き込みご飯だよ」

って、教えてあげた。

「時短の為に今日はコレを使うことにした。」

って、説明したら、

「だからズルって言ったんだ。」

って、納得してた。
後、ウチにあったか分からなかったので餅米の小さな袋を手にした時は、

「何で餅米なんて買うんだ?」

って、言うから、

「餅米を白米に少し加えて炊いたらモチっとしたおこわに近い感じの炊き込みご飯が美味しくなるから、って、築城のおばあちゃん直伝なの。だから、ウチで炊き込みご飯を作る時は絶対に餅米入れるんだよ。美味しいから、翔太楽しみにしてて!」

って、言ったら、へぇ~って感心された。

買ったおやつだけは自分のトートバックに入れても、6品分を4人分となると、結構な量で大きめのエコバックはパンパンになった。
詰め終わったエコバックを持とうとしたら、横からサッと手が伸びてきて翔太が、

「筋トレ代わりにもなるから…。」

と言って、軽々と持ってくれた。

「重くない?餅米買っちゃったから、余計重いでしょ?半分持とうか?」

って、聞いても

「大丈夫だって。優香、男の力舐めて貰っちゃ困るよ。」

って、平気な顔して反対の手を私に差し出してきた。

帰り道でも、翔太はずっと車道側を私の歩調に合わせて歩いてくれた。
翔太は自宅のキッチンまで文句も言わず荷物を運んでくれた。
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