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桃源星編
桃源星
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足元が光り出してからは、どうやら意識を失っていたようである。
「着いた…のか?」
しかし、そこは研究室のままだった。
「はい。ここは桃源星にある私の研究所の一室です。」
「さっきと全く変わんねえじゃねぇか!」
「すいませんねぇ(笑)移動マシンは2台ないとダメなんですよ。ほら、電話だってお互いが携帯を持ってないと出来ないでしょう。」
どうやらあの装置は移動マシンと呼ぶらしい。実にシンプルなネーミングである。
「なるほど。確かにそうだな。」
「でしょう。とりあえず案内しますよ。」
研究室から出ると、やはり地上と同じように、研究室がいくつもあった。
「ここでは見ての通り様々な研究を行なっています。内容は言えませんけどね。」
研究所は4階建てになっていた。俺がいた場所は4階で、3階と2階と同じような造りになっている。大小様々な研究室で様々な研究が行われているようだ。その一方で、一階は事務室となっており、パソコンが沢山置いてあった。
「以上がこの研究所の紹介となります。まぁですが君が今後ここに来ることはほぼないでしょうね。」
「確かに生活出来そうな場所ではないな。なら俺はどこで暮らせばいいんだ?」
「研究所を出るとすぐ近くに社員寮があります。今から案内しますからついてきて下さいね。」
研究所を出ると、外は明るかった。地球にいた時はもう夜になっていたため、桃源星に着く間に日が変わってしまったのだろうか。それとも地球と桃源星には時差があるのだろうか。あるいはその両方か。それにしても、ここが地球だと言われてもおかしくないくらい、気温も湿度も地球と遜色ないことに驚きである。そんなことを思っているうちに社員寮まで着いた。
「ここが社員寮です。」
研究所のすぐ隣に建てられている社員寮は想定よりもはるかに立派なものだった。9階建てで部屋数もとても多い。
「ちょうどこの前1人いなくなったので部屋が空いていたんですよ。一通りのものは用意してあるはずですが、もしなんかあれば備え付けの電話で管理人に電話して下さい。1時間後くらいにまた呼びますのでそれまで部屋でゆっくりしてて下さい。」
部屋の中は7~8畳くらいの広さで、ソファー、ベッド、テレビ、風呂、トイレ付き。なかなかの好条件である。見慣れない装置や新品の服が置いてあったが、それはアダムがきてからまた聞くことにする。
1時間程経ち、宣言通りアダムが部屋に来た。
「どうですかこの部屋は。」
「あぁ…なかなかいい。けど聞きたいことがある。」
「なんでしょう?」
「この装置はなんだ?」
俺はタッチパネルのついた電子レンジみたいなものを指差して尋ねた。
「あぁ…あれは食製機です。」
「ショクセーキ?」
聞き慣れない言葉である。
「食品製造機。略して食製機です。タッチパネルに食べたい食べ物を打ち込むとそれを勝手に作ってくれます。」
「これはアンタが発明したのか?」
答えは聞かずとも分かっていたが一応聞いておいた。
「ええ。」
アダムは飄々と答える。
「あとあの服はなんだ?」
今度はベッドの上に置いてある新品の服を指差して尋ねる。
「あれはただの運動着です。ただ地上のものとは桁違いに動きやすいはずですよ。あと靴も履き替えて下さい。」
アダムは玄関に置いてあった新品の靴を指差してそう言う。
「その靴はエアシューズと言います。ただ速く走れたり、走りやすくなったりするだけではなく、後進したり、宙に浮いたりすることも出来ますよ。慣れれば空中で走ったり、バク転したり出来ます。」
「へぇ…楽しそうだな。」
「ただし、普通の靴よりエネルギーを消費しやすいのでそこは注意して下さい。まぁその分体力が上がっているのであまり支障はないですが。」
「そうか。桃源星では地球にいる時より身体能力が上がっているんだったな。」
「で?これから何をするんだ?」
運動着に着替え終わった俺はアダムに尋ねる。
「まずはこの環境に慣れてもらいます。これから外へ出るので試しにジャンプしてみて下さい。」
外へ出て俺は早速ジャンプしてみる。
「すげぇー!!なんだこれ!!」
地球にいたらありえないくらいの高さまで俺はジャンプしていた。
「おぉー随分跳びましたねぇ。」
「すげぇ…。人生でこんなに跳べたことはない…。」
「先程言ったように、まず君にはこの環境に慣れてもらいます。ですからこれから2ヶ月の間、君にはひたすらジムでトレーニングをしてもらいます。受験で体も鈍っているでしょうしね。」
「そういやそうだったな。」
ここまで非現実的なことが起こりすぎて受験のことなどとうに忘れていた。
ジムへ着くとアダムから一枚の紙を渡された。
「これは?」
「1日のトレーニングのメニューです。これから2ヶ月間この通りにトレーニングして下さい。あ、サボらないで下さいね~。」
「しねーよそんなこと。」
「じゃ、私はこれで。」
アダムは用事があるらしく、すぐに研究室へ戻っていった。
メニューに目を通すと、身体能力が上がっているとはいえ、明らかに量が多かった。
「これくらいやらないと超能力者には勝てないってことか…。」
覚悟はしていたが、想像以上に大変になりそうだ。俺は早速メニューを始めた。
「着いた…のか?」
しかし、そこは研究室のままだった。
「はい。ここは桃源星にある私の研究所の一室です。」
「さっきと全く変わんねえじゃねぇか!」
「すいませんねぇ(笑)移動マシンは2台ないとダメなんですよ。ほら、電話だってお互いが携帯を持ってないと出来ないでしょう。」
どうやらあの装置は移動マシンと呼ぶらしい。実にシンプルなネーミングである。
「なるほど。確かにそうだな。」
「でしょう。とりあえず案内しますよ。」
研究室から出ると、やはり地上と同じように、研究室がいくつもあった。
「ここでは見ての通り様々な研究を行なっています。内容は言えませんけどね。」
研究所は4階建てになっていた。俺がいた場所は4階で、3階と2階と同じような造りになっている。大小様々な研究室で様々な研究が行われているようだ。その一方で、一階は事務室となっており、パソコンが沢山置いてあった。
「以上がこの研究所の紹介となります。まぁですが君が今後ここに来ることはほぼないでしょうね。」
「確かに生活出来そうな場所ではないな。なら俺はどこで暮らせばいいんだ?」
「研究所を出るとすぐ近くに社員寮があります。今から案内しますからついてきて下さいね。」
研究所を出ると、外は明るかった。地球にいた時はもう夜になっていたため、桃源星に着く間に日が変わってしまったのだろうか。それとも地球と桃源星には時差があるのだろうか。あるいはその両方か。それにしても、ここが地球だと言われてもおかしくないくらい、気温も湿度も地球と遜色ないことに驚きである。そんなことを思っているうちに社員寮まで着いた。
「ここが社員寮です。」
研究所のすぐ隣に建てられている社員寮は想定よりもはるかに立派なものだった。9階建てで部屋数もとても多い。
「ちょうどこの前1人いなくなったので部屋が空いていたんですよ。一通りのものは用意してあるはずですが、もしなんかあれば備え付けの電話で管理人に電話して下さい。1時間後くらいにまた呼びますのでそれまで部屋でゆっくりしてて下さい。」
部屋の中は7~8畳くらいの広さで、ソファー、ベッド、テレビ、風呂、トイレ付き。なかなかの好条件である。見慣れない装置や新品の服が置いてあったが、それはアダムがきてからまた聞くことにする。
1時間程経ち、宣言通りアダムが部屋に来た。
「どうですかこの部屋は。」
「あぁ…なかなかいい。けど聞きたいことがある。」
「なんでしょう?」
「この装置はなんだ?」
俺はタッチパネルのついた電子レンジみたいなものを指差して尋ねた。
「あぁ…あれは食製機です。」
「ショクセーキ?」
聞き慣れない言葉である。
「食品製造機。略して食製機です。タッチパネルに食べたい食べ物を打ち込むとそれを勝手に作ってくれます。」
「これはアンタが発明したのか?」
答えは聞かずとも分かっていたが一応聞いておいた。
「ええ。」
アダムは飄々と答える。
「あとあの服はなんだ?」
今度はベッドの上に置いてある新品の服を指差して尋ねる。
「あれはただの運動着です。ただ地上のものとは桁違いに動きやすいはずですよ。あと靴も履き替えて下さい。」
アダムは玄関に置いてあった新品の靴を指差してそう言う。
「その靴はエアシューズと言います。ただ速く走れたり、走りやすくなったりするだけではなく、後進したり、宙に浮いたりすることも出来ますよ。慣れれば空中で走ったり、バク転したり出来ます。」
「へぇ…楽しそうだな。」
「ただし、普通の靴よりエネルギーを消費しやすいのでそこは注意して下さい。まぁその分体力が上がっているのであまり支障はないですが。」
「そうか。桃源星では地球にいる時より身体能力が上がっているんだったな。」
「で?これから何をするんだ?」
運動着に着替え終わった俺はアダムに尋ねる。
「まずはこの環境に慣れてもらいます。これから外へ出るので試しにジャンプしてみて下さい。」
外へ出て俺は早速ジャンプしてみる。
「すげぇー!!なんだこれ!!」
地球にいたらありえないくらいの高さまで俺はジャンプしていた。
「おぉー随分跳びましたねぇ。」
「すげぇ…。人生でこんなに跳べたことはない…。」
「先程言ったように、まず君にはこの環境に慣れてもらいます。ですからこれから2ヶ月の間、君にはひたすらジムでトレーニングをしてもらいます。受験で体も鈍っているでしょうしね。」
「そういやそうだったな。」
ここまで非現実的なことが起こりすぎて受験のことなどとうに忘れていた。
ジムへ着くとアダムから一枚の紙を渡された。
「これは?」
「1日のトレーニングのメニューです。これから2ヶ月間この通りにトレーニングして下さい。あ、サボらないで下さいね~。」
「しねーよそんなこと。」
「じゃ、私はこれで。」
アダムは用事があるらしく、すぐに研究室へ戻っていった。
メニューに目を通すと、身体能力が上がっているとはいえ、明らかに量が多かった。
「これくらいやらないと超能力者には勝てないってことか…。」
覚悟はしていたが、想像以上に大変になりそうだ。俺は早速メニューを始めた。
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