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桃源星編
宇宙旅行
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「それでここからはどうやって桃源星へ行くんです?」
「まぁとりあえず私についてきて下さい。あ、あと別に無理に敬語を使わなくていいですよ(笑)」
「あっそうかい。ならそうさせて貰うわ。」
小バカにされたような言い方に腹が立ち早速タメ口に戻る。
しばらく歩くと近くの駐車場に到着した。
「ここからは車で向かいます。乗って下さい。」
アダムの車は意外にも庶民的な車であった。金持ちは意外と節約家なのだろうか。
「今から宇宙へ行くなんてまだ実感が湧かねぇ…。」
「まぁそうですよね。ここからは結構時間がかかります。疲れていると思うので寝ててもいいですよ。」
「いやいや…人の車で寝るわけには…。」
何時間程経っただろうか。目が覚めるとアダムに声を掛けられた。
「あ、起きましたか。もう少しで着きますよ。」
その後、俺たちは何やら施設のような場所にたどり着いた。
「到着しましたよ。」
「ここは…」
「私の家です。まぁ正確に言えば研究所ですけど。」
「ここからホントに桃源星に行けるのか?」
てっきり宇宙エレベーターのようなものに乗って桃源星へ行くのかと思っていたので少し拍子抜けである。
「まぁ中に入れば分かりますよ。」
中へ入ると、そこは如何にもといった感じの研究所であった。疑っていた訳ではないが、改めてアダムは科学者だったんだなと実感した。研究所はとても広く、研究室が沢山あった。その中には様々な機械が置いてあり、研究者らしき人も数多くいた。
「あの人達は…」
「あぁ…私の研究チームの一員ですよ。」
「へぇ…。こんなにいるんだな…。」
「ありがたいことに皆私についてきてくれてねぇ…。」
「ここです。」
アダムに言われ立ち止まった場所は研究室の中の一室であった。ドアを開けるとそこには沢山のコンピューター機器が置いてあった。正面には巨大なタッチパネルも設置してある。
「ここは…?」
「ここは桃源星へ移動するための部屋です。今からここにあるコンピューターを作動して桃源星へ向かいます。準備まで少し時間がかかるんで待ってて下さい。」
そう言うとアダムは正面の巨大なタッチパネルを触り始めた。
「その間にいくつか聞きたいことがあるんだが…」
アダムの作業中に質問するのもどうかと思ったが、ここで聞かなければ桃源星に着いてしまう。
「何でしょうか?」
「何故俺の父親に借金があるってわかったんだ?知らなきゃあんなタイミングよく俺たちの前に現れないだろ。」
「私は科学者ですから。その辺の情報はある程度は把握しています。」
なんだか上手く誤魔化されたような気がした。
「まぁいずれ分かる時が来ます。」
まるで心を見透かしたようにアダムはそう言った。
「…仕事ってのは何をやるんだ?」
「それはついてからのお楽しみということで!」
「それも分からずに宇宙になんか行けるか!」
「まぁそうなりますよね~。ではその前に桃源星についての説明をします。」
「わかった。」
「2020年に新型ウイルスが流行したことは知っていますか?」
「あぁ…一応受験で勉強したからな。」
「流石東大生ですね!」
「とっとと続けろ。」
「新型ウイルスの流行、そして元から懸念されていた人口の増加を理由に政府は宇宙への移住計画を開始します。」
「なるほど…それでか」
「その通り。移住計画を始めてから5年後の2025年にある研究チームによって人類が生存可能な惑星、通称〝桃源星〟を発見します。」
「そこから人類は桃源星に移住するようになるんだな…。」
「最初は一部の新型ウイルス感染者のみが移住しました。しかし、しばらくしてから新型ウイルスのワクチンが完成します。さらに、桃源星を調査していくうちに、資源が豊富であることも分かってきました。それ以降、桃源星への移住者が急増しました。」
「それなのに今では桃源星なんて噂程度にしか聞かないぞ。」
「2020年当時、地球の人口は約70億人程いました。しかし、桃源星への移住者が増えるとその人口は急激に減っていきます。そしてついに2045年には人口が半数の約35億人になりました。そこで政府は桃源星への移住を禁止しました。」
地球の人口が一時期減っていたことは知っていたが、その理由は新型ワクチンだと思っていたので、まさかそんな理由があったとは思わなかった。
「ていうか、俺は大丈夫なのかよ!」
桃源星への移住が禁止されているはずなのに俺たちは今まさに桃源星に向かおうとしているのである。
「ご存知の通り、今では桃源星に行くどころか存在すらあまり認知されていません。そのためもう禁止にはされていませんよ。それにまた地球の人口は増加しつつありますからね。」
確かに今では地球の人口は60億近くにまで増えており、人口の増加は社会問題にもなっていた。
「それともう一つ。桃源星の構造はほぼ地球と変わりません。ですが、人体には少し変化が起こります。」
「変化?」
「ええ…。まず、寿命が伸びます。」
「寿命?」
「例えば、地球での平均寿命は70~80歳と言われています。ですが、桃源星ではその倍の140~150歳が平均寿命になると推測されています。」
「へぇ~そりゃあいいな。」
「理由の一つとして考えられているのは太陽との距離が地球より遠いことで何らかの身体的変化が起こったと考えられています。」
「でもよく考えたらヨボヨボのまま長生きしてもあんま嬉しくないな。」
「その心配はありませんよ。寿命の長さと身体機能の持続時間の長さは比例してます。つまり、もし地球で40歳で現役を引退したスポーツ選手がいたら桃源星では80歳まで現役でいられます。まぁ正確には多少誤差はありますが。」
「スゲェ…。」
「そしてもう一つは桃源星で生活すると身体能力が大幅に向上するという点です。」
「ほう。」
「個人差はありますが、これも2倍~3倍程向上することが分かっています。その理由としては桃源星の環境が原因で体内エネルギーが大幅に増加するからだと言われています。」
アダムは一呼吸置くと再び話を始めた。
「そしてここからが本題です。桃源星では、その体内エネルギーを消費することで超能力が使えるようになります。仕事の内容は、その超能力を使って戦って貰うことです。来年の1月に20歳以下を対象とした大会、通称U-20バトルトーナメントがありますので、そこで優勝を目指して下さい。」
「は?今から?そんなの勝てる訳ないだろ!」
「私は君が勝つ可能性は十分あると思っています。君の努力次第ですが。ちなみに賞金は1000万円ですよ。」
「そういう問題じゃねぇ!普通に考えて死ぬだろ!というかそもそも超能力なんてそんなすぐ身につくものなのか?」
「まぁ人によるでしょう。センスがあれば3ヶ月くらいで身につく人もいますが、逆に何年かかっても身に付かない人もいます。」
「俺が後者だったらどうすんだよ。」
「そうならないことを祈りますよ。まぁ最悪借金分の臓器を売ってくれれば問題ないですよ。」
「えっ…。」
「冗談はさておき、もう準備は完了しましたよ。安心して下さい。命は保障します。」
アダムが敬語を使うせいか、冗談が冗談に聞こえない。
ヴゥオン
どうやらもうすでに機械が作動しているようだった。しかし、俺は戸惑った。まさか戦闘に駆り出されるとは思いもしなかったのだから。
「言うのが遅くなり申し訳ありません。もし君が望むならこのまま帰ってもいいですよ。」
「アンタってほんと性格悪いな…帰れる訳無いだろうが。とっとと始めろ。」
「ありがとうございます。それでは今から桃源星へ向かいます。」
アダムがそう言うと、俺たちの足元が光り出した。ついに俺は桃源星へと向かうのだ。
「まぁとりあえず私についてきて下さい。あ、あと別に無理に敬語を使わなくていいですよ(笑)」
「あっそうかい。ならそうさせて貰うわ。」
小バカにされたような言い方に腹が立ち早速タメ口に戻る。
しばらく歩くと近くの駐車場に到着した。
「ここからは車で向かいます。乗って下さい。」
アダムの車は意外にも庶民的な車であった。金持ちは意外と節約家なのだろうか。
「今から宇宙へ行くなんてまだ実感が湧かねぇ…。」
「まぁそうですよね。ここからは結構時間がかかります。疲れていると思うので寝ててもいいですよ。」
「いやいや…人の車で寝るわけには…。」
何時間程経っただろうか。目が覚めるとアダムに声を掛けられた。
「あ、起きましたか。もう少しで着きますよ。」
その後、俺たちは何やら施設のような場所にたどり着いた。
「到着しましたよ。」
「ここは…」
「私の家です。まぁ正確に言えば研究所ですけど。」
「ここからホントに桃源星に行けるのか?」
てっきり宇宙エレベーターのようなものに乗って桃源星へ行くのかと思っていたので少し拍子抜けである。
「まぁ中に入れば分かりますよ。」
中へ入ると、そこは如何にもといった感じの研究所であった。疑っていた訳ではないが、改めてアダムは科学者だったんだなと実感した。研究所はとても広く、研究室が沢山あった。その中には様々な機械が置いてあり、研究者らしき人も数多くいた。
「あの人達は…」
「あぁ…私の研究チームの一員ですよ。」
「へぇ…。こんなにいるんだな…。」
「ありがたいことに皆私についてきてくれてねぇ…。」
「ここです。」
アダムに言われ立ち止まった場所は研究室の中の一室であった。ドアを開けるとそこには沢山のコンピューター機器が置いてあった。正面には巨大なタッチパネルも設置してある。
「ここは…?」
「ここは桃源星へ移動するための部屋です。今からここにあるコンピューターを作動して桃源星へ向かいます。準備まで少し時間がかかるんで待ってて下さい。」
そう言うとアダムは正面の巨大なタッチパネルを触り始めた。
「その間にいくつか聞きたいことがあるんだが…」
アダムの作業中に質問するのもどうかと思ったが、ここで聞かなければ桃源星に着いてしまう。
「何でしょうか?」
「何故俺の父親に借金があるってわかったんだ?知らなきゃあんなタイミングよく俺たちの前に現れないだろ。」
「私は科学者ですから。その辺の情報はある程度は把握しています。」
なんだか上手く誤魔化されたような気がした。
「まぁいずれ分かる時が来ます。」
まるで心を見透かしたようにアダムはそう言った。
「…仕事ってのは何をやるんだ?」
「それはついてからのお楽しみということで!」
「それも分からずに宇宙になんか行けるか!」
「まぁそうなりますよね~。ではその前に桃源星についての説明をします。」
「わかった。」
「2020年に新型ウイルスが流行したことは知っていますか?」
「あぁ…一応受験で勉強したからな。」
「流石東大生ですね!」
「とっとと続けろ。」
「新型ウイルスの流行、そして元から懸念されていた人口の増加を理由に政府は宇宙への移住計画を開始します。」
「なるほど…それでか」
「その通り。移住計画を始めてから5年後の2025年にある研究チームによって人類が生存可能な惑星、通称〝桃源星〟を発見します。」
「そこから人類は桃源星に移住するようになるんだな…。」
「最初は一部の新型ウイルス感染者のみが移住しました。しかし、しばらくしてから新型ウイルスのワクチンが完成します。さらに、桃源星を調査していくうちに、資源が豊富であることも分かってきました。それ以降、桃源星への移住者が急増しました。」
「それなのに今では桃源星なんて噂程度にしか聞かないぞ。」
「2020年当時、地球の人口は約70億人程いました。しかし、桃源星への移住者が増えるとその人口は急激に減っていきます。そしてついに2045年には人口が半数の約35億人になりました。そこで政府は桃源星への移住を禁止しました。」
地球の人口が一時期減っていたことは知っていたが、その理由は新型ワクチンだと思っていたので、まさかそんな理由があったとは思わなかった。
「ていうか、俺は大丈夫なのかよ!」
桃源星への移住が禁止されているはずなのに俺たちは今まさに桃源星に向かおうとしているのである。
「ご存知の通り、今では桃源星に行くどころか存在すらあまり認知されていません。そのためもう禁止にはされていませんよ。それにまた地球の人口は増加しつつありますからね。」
確かに今では地球の人口は60億近くにまで増えており、人口の増加は社会問題にもなっていた。
「それともう一つ。桃源星の構造はほぼ地球と変わりません。ですが、人体には少し変化が起こります。」
「変化?」
「ええ…。まず、寿命が伸びます。」
「寿命?」
「例えば、地球での平均寿命は70~80歳と言われています。ですが、桃源星ではその倍の140~150歳が平均寿命になると推測されています。」
「へぇ~そりゃあいいな。」
「理由の一つとして考えられているのは太陽との距離が地球より遠いことで何らかの身体的変化が起こったと考えられています。」
「でもよく考えたらヨボヨボのまま長生きしてもあんま嬉しくないな。」
「その心配はありませんよ。寿命の長さと身体機能の持続時間の長さは比例してます。つまり、もし地球で40歳で現役を引退したスポーツ選手がいたら桃源星では80歳まで現役でいられます。まぁ正確には多少誤差はありますが。」
「スゲェ…。」
「そしてもう一つは桃源星で生活すると身体能力が大幅に向上するという点です。」
「ほう。」
「個人差はありますが、これも2倍~3倍程向上することが分かっています。その理由としては桃源星の環境が原因で体内エネルギーが大幅に増加するからだと言われています。」
アダムは一呼吸置くと再び話を始めた。
「そしてここからが本題です。桃源星では、その体内エネルギーを消費することで超能力が使えるようになります。仕事の内容は、その超能力を使って戦って貰うことです。来年の1月に20歳以下を対象とした大会、通称U-20バトルトーナメントがありますので、そこで優勝を目指して下さい。」
「は?今から?そんなの勝てる訳ないだろ!」
「私は君が勝つ可能性は十分あると思っています。君の努力次第ですが。ちなみに賞金は1000万円ですよ。」
「そういう問題じゃねぇ!普通に考えて死ぬだろ!というかそもそも超能力なんてそんなすぐ身につくものなのか?」
「まぁ人によるでしょう。センスがあれば3ヶ月くらいで身につく人もいますが、逆に何年かかっても身に付かない人もいます。」
「俺が後者だったらどうすんだよ。」
「そうならないことを祈りますよ。まぁ最悪借金分の臓器を売ってくれれば問題ないですよ。」
「えっ…。」
「冗談はさておき、もう準備は完了しましたよ。安心して下さい。命は保障します。」
アダムが敬語を使うせいか、冗談が冗談に聞こえない。
ヴゥオン
どうやらもうすでに機械が作動しているようだった。しかし、俺は戸惑った。まさか戦闘に駆り出されるとは思いもしなかったのだから。
「言うのが遅くなり申し訳ありません。もし君が望むならこのまま帰ってもいいですよ。」
「アンタってほんと性格悪いな…帰れる訳無いだろうが。とっとと始めろ。」
「ありがとうございます。それでは今から桃源星へ向かいます。」
アダムがそう言うと、俺たちの足元が光り出した。ついに俺は桃源星へと向かうのだ。
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