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桃源星編
科学者との交渉
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「一体何がどうなっているんだ?」
俺はそう思いながらも科学者と名乗る男についていく。30分前まで大学入学予定であったが、もはや過去の話である。
俺の名前は荒野ヒロ。18歳。2082年1月31日生まれ。176cm64kg。3人家族だったが、中学3年生のときに父親が失踪。その後、残された俺と母さんは貧しい生活を強いられる。この生活を変えるため、俺は日本最難関大学である東京大学への合格を目指すようになる。貧しい家計ではあったが、母さんが夜遅くまで働いてくれたおかげでなんとか生活は出来ていた。その甲斐あってか、俺は猛勉強の末に東京大学に合格した。父親の失踪後、母さんはあまり笑うことがなかったが、大学入学が決まると笑顔でおめでとうと言ってくれた。
しかし、大学入学手続きをする直前に父親の借金が判明し、その返済期限は今日までだと知らされたのだ。その額まさかの1000万。大学入学は絶望的なものとなった。
そんな時、アダム•ジーナスと名乗る謎の科学者は現れた。なんと彼はその借金を全額支払い、さらに生活費も出すと言い出だしたのだ。一体どれだけの徳を積めばそんな仏みたいなことが出来るのだろうか。しかし、流石に条件があるらしい。
「今すぐ〝桃源星〟に来て私の会社で働いて下さい。」
桃源星。それは2100年の現時点で発見されている地球以外の人類が生存可能な唯一の惑星である。噂でしか聞いたことは無かったが、どうやら本当にあるらしい。
母さんは猛反対した。当然我が子を宇宙へ行かせたくはないだろう。それに、親としては必死に勉強していた我が子には何としても大学に通って欲しいのだろう。
しかし俺にとってはそれ以上に大事なことがあった。
「それは儲かるのか?」
世の中結局一番大事なのは金である。それは父親が失踪してから嫌という程身に染みて感じたことである。金さえあれば母さんを楽に出来る。
「それはあなたの努力次第です。ですが、大学に通う以上に価値のある経験が出来ると保障します。」
「価値のある経験…ねぇ…。ところで、なんで宇宙にいるアンタがわざわざ地上で借金抱えてる俺なんかを雇うんだよ。」
働き手が欲しければ桃源星の住民でも雇えばいい。わざわざ俺を雇うところが妙である。そもそも何故借金があることを知っていて、何故それを返済してくれるのか。あまりにもタイミングが良すぎる。
「理由は後で説明します。ですが、そちらのデメリットとなるようなことはないと断言します。」
「…わかった。母さんが今よりまともな生活が出来るのならこちらとしても願ったりだ。だが借りっぱなしは癪だからな。必ず返す。」
色々と不審な所はあるが、現状で借金問題を解決するにはこうするしかなかった。むしろこの話に乗らない手はなかった。大学に行けないのは惜しいが、母さんに今以上の生活が望めるのなら別に良かった。
「それと…」
「なんだ?」
「この仕事を引き受けるとしばらくここに戻ることは出来ません。それでもよろいですか?」
「ああ…。まぁそうだろうな。」
なにせ宇宙に行くのだ。当然覚悟はしている。
「ただ、宇宙であっても電話やLINEでのやり取りは可能です。」
「そうか。なら良かった。母さん…。俺行ってくるよ。」
母さんは泣いていた。まだ納得はいっていないようだった。しかし、俺はもう覚悟を決めていた。母さんに別れの挨拶と今までの感謝を伝えて俺はアダムと共に家を出た。
俺はそう思いながらも科学者と名乗る男についていく。30分前まで大学入学予定であったが、もはや過去の話である。
俺の名前は荒野ヒロ。18歳。2082年1月31日生まれ。176cm64kg。3人家族だったが、中学3年生のときに父親が失踪。その後、残された俺と母さんは貧しい生活を強いられる。この生活を変えるため、俺は日本最難関大学である東京大学への合格を目指すようになる。貧しい家計ではあったが、母さんが夜遅くまで働いてくれたおかげでなんとか生活は出来ていた。その甲斐あってか、俺は猛勉強の末に東京大学に合格した。父親の失踪後、母さんはあまり笑うことがなかったが、大学入学が決まると笑顔でおめでとうと言ってくれた。
しかし、大学入学手続きをする直前に父親の借金が判明し、その返済期限は今日までだと知らされたのだ。その額まさかの1000万。大学入学は絶望的なものとなった。
そんな時、アダム•ジーナスと名乗る謎の科学者は現れた。なんと彼はその借金を全額支払い、さらに生活費も出すと言い出だしたのだ。一体どれだけの徳を積めばそんな仏みたいなことが出来るのだろうか。しかし、流石に条件があるらしい。
「今すぐ〝桃源星〟に来て私の会社で働いて下さい。」
桃源星。それは2100年の現時点で発見されている地球以外の人類が生存可能な唯一の惑星である。噂でしか聞いたことは無かったが、どうやら本当にあるらしい。
母さんは猛反対した。当然我が子を宇宙へ行かせたくはないだろう。それに、親としては必死に勉強していた我が子には何としても大学に通って欲しいのだろう。
しかし俺にとってはそれ以上に大事なことがあった。
「それは儲かるのか?」
世の中結局一番大事なのは金である。それは父親が失踪してから嫌という程身に染みて感じたことである。金さえあれば母さんを楽に出来る。
「それはあなたの努力次第です。ですが、大学に通う以上に価値のある経験が出来ると保障します。」
「価値のある経験…ねぇ…。ところで、なんで宇宙にいるアンタがわざわざ地上で借金抱えてる俺なんかを雇うんだよ。」
働き手が欲しければ桃源星の住民でも雇えばいい。わざわざ俺を雇うところが妙である。そもそも何故借金があることを知っていて、何故それを返済してくれるのか。あまりにもタイミングが良すぎる。
「理由は後で説明します。ですが、そちらのデメリットとなるようなことはないと断言します。」
「…わかった。母さんが今よりまともな生活が出来るのならこちらとしても願ったりだ。だが借りっぱなしは癪だからな。必ず返す。」
色々と不審な所はあるが、現状で借金問題を解決するにはこうするしかなかった。むしろこの話に乗らない手はなかった。大学に行けないのは惜しいが、母さんに今以上の生活が望めるのなら別に良かった。
「それと…」
「なんだ?」
「この仕事を引き受けるとしばらくここに戻ることは出来ません。それでもよろいですか?」
「ああ…。まぁそうだろうな。」
なにせ宇宙に行くのだ。当然覚悟はしている。
「ただ、宇宙であっても電話やLINEでのやり取りは可能です。」
「そうか。なら良かった。母さん…。俺行ってくるよ。」
母さんは泣いていた。まだ納得はいっていないようだった。しかし、俺はもう覚悟を決めていた。母さんに別れの挨拶と今までの感謝を伝えて俺はアダムと共に家を出た。
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