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心の壁
しおりを挟むアレクシスとの距離が少しずつ縮まっていることを感じる一方で、エリーナは依然として彼の心に存在する大きな壁を感じずにはいられなかった。それは目に見えないもので、彼が無意識に作り上げたものかもしれない。その壁がどれほど頑固で深いものか、エリーナには理解できていた。
「公爵様、今日は少しだけ外に出ませんか?」
エリーナは、アレクシスが最近すこし疲れているように見えることに気づき、提案した。彼が少しでも気分転換をすることができればと思ったからだ。彼が自分の過去に縛られず、少しでも自由に感じる時間を持ってほしいと願っていた。
「外か…」
アレクシスは一瞬考えた後、少し驚いた表情を浮かべたが、やがて頷いた。
「君と一緒なら、悪くないかもしれない。」
その言葉に、エリーナは心の中でほっと息をついた。
二人は庭園に出た。陽光が柔らかく差し込み、花々が色とりどりに咲き誇る中を歩いていると、エリーナは少しだけ緊張を解きほぐして、アレクシスに話しかけた。
「公爵様、今日はどんなことをして過ごしていたのですか?」
アレクシスはしばらく黙って歩いていたが、やがて静かな声で答えた。
「何も特別なことはしていない。ただ、領地の管理や、今後の計画について考えていただけだ。」
その答えに、エリーナは少し寂しさを感じた。アレクシスは仕事に埋もれているようで、彼自身の時間がほとんどないことを改めて実感した。エリーナは少しだけ歩みを止め、彼を見上げた。
「公爵様も、たまには自分の時間を持ってください。」
「私にそんな余裕はない。」
その言葉に、エリーナは少し驚き、心の中で彼が自分をどう思っているのかがわからなくなった。彼は完全に自分を犠牲にしているように見え、どこかで彼が本当に何を求めているのかを理解するのが難しくなっていた。
「でも、たまには息抜きが必要です。私も、あなたが少しでも幸せを感じてくれることが嬉しいんです。」
エリーナは少し強い口調で言った。その言葉には、彼への深い思いやりと共に、彼を支えたいという気持ちが込められていた。
アレクシスは少し驚いたように彼女を見たが、その後、しばらく黙って歩き続けた。やがて、ふと彼の表情に変化が現れた。彼は少しだけ、微かに笑みを浮かべて言った。
「君がそう言うなら、少しは考えてみるか。」
その言葉に、エリーナは心から嬉しさを感じた。それでも、彼が心の中で本当に何を感じているのかはわからないままだったが、少なくとも彼が少しずつ心を開こうとしているのだと感じた。
その日の夜、エリーナは寝室で再びアレクシスのことを考えていた。彼が語った過去の痛みや、彼が心に抱える孤独。それを少しでも和らげてあげたいという気持ちで、エリーナは眠れぬ夜を過ごしていた。
だが、翌日、エリーナが公爵邸の中を歩いていると、突然、思いもよらぬ出来事が起こる。
「お嬢様、少しお話が…」
それは公爵家の家臣の一人だった。彼がエリーナを見つけると、急いで近づいてきた。エリーナは少し驚きながらも、彼に促されるまま、静かな場所に足を運んだ。
「何か、私に関わることでご用が?」
「実は…公爵様が最近、少し変わった行動を取っているという噂があります。」
その言葉に、エリーナは一瞬、顔を曇らせた。アレクシスに関して、何か問題が起きているのかと心配になった。
「噂とは?」
「公爵様が突然、無言で部屋に閉じ込められていると聞きました。外部との接触を一切断っているそうです。」
その話に、エリーナは心から驚いた。彼が何かを隠していることは前から感じていたが、まさかそんな状態にまで追い込まれているとは思ってもみなかった。
「それは…どういうことなのでしょうか?」
エリーナは焦りながらも、冷静さを保とうと努めた。家臣は少し悩みながら、言葉を続けた。
「公爵様が抱えている過去に、何か問題があるのかもしれません。それが、最近急激に影響を及ぼしているようです。」
その言葉に、エリーナは心の中で何かが大きく揺れ動くのを感じた。アレクシスが再び自分を閉ざしてしまったのは、その過去が再び彼を苦しめているからだろうか?
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