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心の闇
しおりを挟むエリーナはアレクシスが何を抱えているのか、ますます理解しようとしていた。家臣から聞いた話は、彼が再び過去に囚われていることを示唆していた。エリーナの心には強い不安が広がり、彼の心の闇がどれほど深いのか、そしてそれをどう乗り越えればいいのか、全く見当がつかなかった。
「公爵様、どうしてこんなことに…」
エリーナは一人、公爵邸の中で思案していた。あの時の微かな笑みと、今の彼の閉ざされた態度の違いに戸惑いを隠せなかった。彼が過去を乗り越えようとする意志は感じていたが、その道は決して平坦ではないことを彼自身も、そしてエリーナも理解していた。
その日、エリーナはアレクシスの部屋を訪れた。彼が再び自分を閉じ込めていることに気づいたからだ。静かな足音を立てながら、ドアの前に立ったエリーナは深呼吸をしてから、ドアをノックした。
「公爵様、少しお話しませんか?」
静かな声で呼びかけると、しばらくしてから、低い声でアレクシスの返事が返ってきた。
「入れ。」
エリーナはドアを開けると、部屋の中は薄暗く、アレクシスはベッドに座ったまま、窓の外をぼんやりと見つめていた。彼の姿はどこか遠くを見ているようで、心がすでにそこにはないような印象を与えた。
「公爵様、お願いですから、少しだけ私と話をしてくれませんか?」
エリーナは静かに言った。アレクシスは少しだけ動き、エリーナを見つめると、深いため息をついた。
「君が心配する必要はない。」
「でも、私はあなたが苦しんでいるのを見るのが辛いんです。」
その言葉を聞いたアレクシスは、一瞬表情を硬くし、再び目をそらした。
「君が何も知らない方がいい。」
その冷徹な言葉に、エリーナは胸が締めつけられるような思いをした。彼が自分を遠ざけようとする理由を、理解することができなかった。
「私は、あなたの過去を知りたくてたまらないわけじゃない。ただ、あなたが一人で苦しんでいるのを見たくないんです。」
エリーナの声は、少しだけ震えていた。彼を助けたい、彼と共に歩んでいきたいという気持ちが溢れ出すように、彼女の心が訴えかけていた。
アレクシスは黙って彼女を見つめ、しばらくの間沈黙が続いた。やがて、彼は立ち上がり、ゆっくりとエリーナの方へ歩み寄ると、静かに言った。
「君がそこまで言うのなら、少しだけ話してやる。」
その言葉に、エリーナは驚き、心の中でほっと息をついた。彼が心を開いてくれるかもしれないという希望が湧き上がった。
アレクシスは、重々しく語り始めた。
「私の家族は王国の権力を持っていたが、裏切り者として仕立て上げられ、全てを失った。」
その話は、エリーナが聞いたことのある内容と重なる部分もあったが、彼の声には以前よりも強い感情が込められているように感じた。
「私の父は無実だったが、証拠がなかった。家族全員を失い、私は生き残った。それでも、私は王国に対する復讐心に囚われ、無数の血を流してきた。」
その言葉に、エリーナは胸を痛め、彼がどれほど多くのものを犠牲にしてきたのかを、改めて実感した。
「それでも、私は一度も自分が間違っていたとは思わなかった。復讐を果たして、ようやく満足するはずだと思っていた。」
アレクシスの声が、少しだけ震えた。それが彼の過去への苦しみが今も続いている証だった。
「でも、君に出会って、少しだけ違うと感じ始めた。」
その言葉に、エリーナは驚き、彼の目を見つめた。アレクシスが彼女にどんな思いを抱いているのか、少しずつ見えてきたような気がした。
「君が、私を少しずつ変えている。」
その言葉に、エリーナは涙がこぼれそうになった。彼が彼女に心を開こうとしていること、そして過去に囚われていた自分を少しずつでも乗り越えようとしていることを感じ、エリーナはその思いに胸がいっぱいになった。
「公爵様、私はあなたの過去を乗り越える手助けをしたい。」
エリーナは静かに言った。彼の目に宿る苦しみが少しでも和らげられるなら、彼女はどんな努力でも惜しまないと心から誓った。
その後、アレクシスとエリーナは少しだけ言葉を交わし、再び静かな時間が流れた。アレクシスが語った過去の一部は、エリーナにとって衝撃的であり、彼の心の闇がいかに深いかを知ることになった。しかし、同時に彼が少しずつでもその闇を乗り越えようとしていることに希望を感じた。
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