【完結】乙女ゲームの悪役に転生したけど、攻略対象に好かれすぎて困ってます

22時完結

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王太子の執着

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 平穏を目指していた私の学園生活は、攻略対象たちの“好意”という名の追撃により、もはや嵐のような日々となっていた。

 中でも最も強く――そして予想外の執着を見せてきたのが、王太子セシル・フォン・アルセリアだった。

* * *

 ある日の放課後、私は学園の中庭で、久しぶりのひとり時間を満喫していた。
 読書、紅茶、風に揺れる花々……静かで優雅な時間。まさに理想の平穏。

 しかしそれも、長くは続かなかった。

「またここにいたのか」

 セシル殿下が、当然のように私の目の前に現れたのだ。

「……セシル殿下、お一人で?」

「護衛は近くに控えているが、邪魔はさせない」

 そう言って、彼は椅子を引いて私の向かいに腰を下ろす。自然すぎて、断る隙がない。

「この花は、お前に似ていると思った」

 手に持っていた白いバラを差し出された。

 困惑する私をよそに、彼の視線はまっすぐで、揺るぎがなかった。

「以前のお前なら、受け取らなかっただろうな」

「……そうかもしれません」

「だが、今はどうだ?」

 私は一瞬、ためらった末に、そっとそのバラを受け取った。

 セシル殿下は、微かに微笑んだ。滅多に表情を変えない彼の、貴重な笑顔だった。

* * *

 その日以降、セシル殿下は何かと私の周囲に現れるようになった。
 授業の間の移動時間にも、昼食時にも、まるで「偶然」を装って隣に座る。

 そして彼は、毎回何かしらの花を私に差し出してきた。

「今日のお前は、ラベンダーの香りがする。癒される」

「この花の花言葉は“運命の人”だ。知っているか?」

 私は毎回、あたふたとしながら「ありがとうございます」と受け取るしかなかった。

 だが、ある日ついに、私は我慢できずに尋ねてしまった。

「……殿下、なぜ私に、そんなに親しくしてくださるのですか?」

 彼は一瞬だけ黙り込んだ。そして、静かに言った。

「お前だけが、俺に媚びなかった」

「え?」

「他の者は、俺の肩書きにひれ伏す。だが、お前は違った。お前は俺に、正直に笑ってくれる」

 その言葉に、私は何も言い返せなかった。

 たしかに、私は彼に対して媚びたことはない。
 前世の知識があるからこそ、丁重に、でも距離を取っていたのだ。
 だが、彼にとってはそれが“誠実”に映っていたらしい。

 その日から、彼の行動はさらにエスカレートしていく。

* * *

 学園での乗馬訓練中。馬が暴れた拍子に、私は地面に落ちそうになった。
 その瞬間、強い腕が私を引き寄せた。

「っ……!」

「危ないだろう、クラリッサ」

 いつの間にかそばにいたセシル殿下が、私をしっかりと抱き留めていた。

「怪我はないか」

「は、はい……ありがとうございます」

 至近距離で見つめ合う形になり、私は心臓が破裂しそうだった。

「俺は、お前が傷つくのを見たくない。それだけだ」

 優しく降ろされてもなお、腕の感触が離れない。

(やばい……この人、本気で落としにきてる!?)

 原作ではこんな展開なかったのに。私の平穏はどこへ――。

* * *

 その後も、セシル殿下の“さりげない好意”は続いた。

 私の誕生日には、彼だけが私の好みにぴったりのブローチを贈ってきた。

「この石は、星の光を閉じ込めたといわれるものだ。お前に似合う」

 学園祭の準備では、なぜか彼が私と同じ班になり、「手伝いが必要なら、夜でも呼べ」と言い出した。

(だ、だめだめ! 夜に呼んだら破滅エンド直行ルート!)

 私はできる限り“それっぽくない”反応を心がけたが、セシル殿下の情熱は止まらない。

「俺はお前に誠実でありたい。だから、待たない」

「待たない、って……」

「好きだ、クラリッサ」

 ついに言われてしまった。王太子殿下の、堂々たる“告白”。

 学園内でも有名なイケメンであり、将来の王となる男が、私という“元・悪役令嬢”に、こんなにもまっすぐに想いを向けてくるなんて。

(これはもう、逃げきれないのでは……)

 そんな風に感じ始めていた頃、さらに厄介な“気配”が迫っていた。

「……最近、王太子殿下と仲が良いですね」

 背後から聞こえた低い声。振り返ると、そこには騎士団長・レオンの姿があった。

「……え、えっと、それはその……」

「危険です。これ以上、関わるのは推奨できません」

 レオンの目は真剣そのもので、いつも以上に感情が読めなかった。

(やばい……騎士団長まで、私に警戒を抱いてる!?)

 私の“平穏な生活計画”は、完全に瓦解し始めていた。

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