【完結】地味令嬢を捨てた婚約者、なぜか皇太子が私に執着して困ります

22時完結

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皇太子殿下の異常な執着

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 夜明け前の薄明かりが、王宮の庭園に静謐な陰影を落としていた。先日の侯爵邸での出来事がまだセシリアの心に深い刻印を残している中、遠く離れた宮殿では、冷徹で知られる皇太子アレクシス・フォン・ルシオンが、ひとりの男としての宿命と貴族としての重責の狭間で新たな決意を固めていた。彼の整った顔立ちは凛とし、その眼差しには普段なら誰もがおののくほどの冷たさが宿っていた。しかし、今宵の彼は、これまでの堅固な仮面を脱ぎ捨て、ひたむきな情熱に燃える心のままに、ある一人の女性に対する異常な執着を胸に秘めていたのだ。

 アレクシスは、深い紺碧の瞳を閉じ、宮殿内の広間で静かに過ぎ去った日の出来事を思い返していた。侯爵邸の庭先でセシリアがたたずむ姿、その柔らかな横顔、そしてその内面から溢れ出る控えめながらも確固たる美しさ。彼は、これまで何度も理知的な冷静さを装い、国家の行事や政治的義務に身を捧げる日々を送ってきた。しかし、その日、彼の心は一瞬にして溶け、全ての堅固な決意が消え去ってしまったかのように、ただひたすらに彼女だけを求める衝動に突き動かされたのだった。

 翌朝、宮殿内はいつもと変わらぬ荘厳な雰囲気が漂っていた。大理石の床が光を反射し、豪奢な装飾品が歴史の重みを語る中、アレクシスは自らの内面に湧き上がる激しい感情と向き合っていた。彼は従来、冷酷かつ厳格な皇太子として振る舞ってきたが、セシリアに対してはその冷たさを一切感じさせない、あまりにも熱い執着心が芽生えていた。彼は幾度となく、夜中に独りで書斎にこもり、セシリアの名前を筆で何度も書き写すことで、自らの感情を確かめようとしていた。

 「セシリア……」
 その一言が、彼の心の奥底に響く音として、夜の静寂を破った。彼は深い息をつき、手にした古い詩集のページをめくると、そこに記された恋の言葉を目で追いながら、己の心を静かに見つめた。宮廷内で噂される彼の厳格さや冷酷さとは裏腹に、彼の胸中には、ひとたび燃え上がると制御不能な情熱が秘められていた。その情熱は、これまで数多の女性たちに冷たく突き放された結果としてのみ現れてきたが、セシリアに対してはまったく違う形で表れていた。

 その日の午前、アレクシスは自らの側近たちに呼びかけ、密かに計画を練るよう命じた。彼は、宮廷内で行われる朝の儀式において、セシリアの存在を探る手配を整え、彼女の動向を注意深く監視させると同時に、できる限りの接触の機会を作ろうと考えていた。側近の一人、若き侍従のルーカスは、皇太子の表情を見ながらこう告げた。

「殿下、セシリア様は本日、侯爵邸での出来事の後、静養に入られているとの情報がございます。しかし、昨夜のご決意を伺えば、何かしらの形でご連絡を差し上げることも可能かと……」

 アレクシスは、冷たい声で一言、「必ず会わせるのだ」とだけ告げると、固い表情で椅子に身を沈めた。その声には、これまでの冷徹さとは異なる、ひとしきりの情熱が混じっていた。彼にとって、セシリアは単なる一人の女性ではなく、運命そのものの具現化であった。

 午後の柔らかな陽光が宮殿の中庭を照らし出す頃、アレクシスは密かに計画を実行に移した。まず、彼は自らの護衛とともに、宮廷内の一角にある小さな秘密の庭園へと向かった。そこは、外部の目から隔離され、静謐な空気が漂う場所であった。彼はそこで、以前より幾度となく夢に見るセシリアの面影を、まるで幻のように追い求めるかのような儀式的な行動に出た。静かに佇む石像や咲き誇る花々の間を歩きながら、彼は自らの内面に問いかけるように呟いた。

「なぜ、あの女性だけが……こんなにも私を捉えて離さないのだろうか。彼女の一挙一動が、私の存在意義を再び問い直させる。私は、ただ冷徹な皇太子として振る舞うべき存在ではないのだろうか?」

 その問いに対する答えは、彼自身の心の中に静かに息づいていた。彼は、これまでの己の行いが如何に厳格であったとしても、セシリアに出会った瞬間から、その冷たさはすべて消え失せ、代わりに熱く激しい感情が胸中を満たしていくのを感じたのであった。やがて、彼は一度深呼吸をし、決意を新たにすると、側近に向かって低く告げた。

「今から、あの令嬢の元へ向かう。彼女が静養に入っているとはいえ、必ず一度、面会の機会を設けるのだ。私が彼女に伝えねばならぬ言葉がある」

 その命令は、側近たちの間に瞬く間に広がり、ささやかな動きとともに実行に移された。後に続く護衛団と共に、アレクシスは密かに侯爵邸へと向かった。宮殿を出発する際、彼は重厚な馬車に乗り込み、窓から流れる風景に目を留めながら、内心でセシリアとの再会を夢見ていた。

 侯爵邸に到着すると、すでに日中の柔らかな光が館内に差し込み、辺りには穏やかな時間が流れていた。だが、アレクシスの胸中は嵐のように激しく、彼の足取りはまるで戦場を駆け抜けるかのごとく力強かった。館内に入ると、使用人たちは一様に驚きと緊張の面持ちで彼を迎えた。アレクシスは、厳粛な雰囲気を乱すことなく、ただひたすらにセシリアの元を探し求める。

 ついに、薄暗い廊下の奥にある静謐な部屋の扉が目に留まった。そこから漏れる柔らかな灯りは、まるで遠い星のように儚く輝いていた。アレクシスは、一瞬のためらいもなくその扉をノックし、静かに中へと足を踏み入れた。室内には、セシリアが一人、窓辺に座り、外を見つめる姿があった。彼女の表情は依然として物憂げでありながらも、どこか芯の強さが感じられた。

 セシリアは、ふとした瞬間に自らの存在に気づき、ゆっくりと顔を上げた。その瞳に映るのは、これまで社交界で恐れられた皇太子の姿であった。彼女は驚愕し、心の奥でその異様なまでの執着を感じ取ると同時に、複雑な感情が渦巻くのを感じた。

「殿下……どうして、こんなに私に近づいて……」
 セシリアの声は、かすかに震えていたが、その中には拒絶だけでなく、どこか期待すら感じられる微妙な響きがあった。

 アレクシスは、彼女の目を真っ直ぐに見つめ、低く力強い声で答えた。
「セシリア、私は君を見捨てることは決してできない。これまで何度も冷酷な振る舞いを貫いてきたが、君に出会った瞬間から、私の心は一変した。君の内に秘めた純粋な美しさ、そして孤高の誇りは、私がこれまで感じたことのない情熱を呼び覚ましたのだ」

 その言葉に、室内の空気は一層重く、そして甘美な緊張感に包まれた。セシリアは、混乱と戸惑いの入り混じる心情を必死に整理しようとする。彼女は自分の中に潜む感情を探りながら、これまで冷静に受け止めてきた現実が、今まさに自らの前で崩れ落ちようとしているのを感じた。

 「でも……私は、ただ静かに生きたかっただけなのに……」
 セシリアは、静かに呟くと同時に、その瞳に一瞬だけ涙が滲むのを感じた。しかし、彼女はすぐに強い意志を振り絞り、かすかな微笑みを浮かべた。
「殿下、あなたのその情熱は、私にとって驚異的であり、また重いものです。私自身も、あなたに何かを感じ始めているのかもしれません。しかし、どうしてもその激しさに戸惑ってしまうのです」

 アレクシスは、セシリアの言葉を一言一句心に刻むかのように静かに聞いた。そして、彼はゆっくりと一歩近づき、彼女の手に触れた。その触れ方は、これまでの冷たさとは全く異なり、温かく、優しさと情熱が同居するようなものだった。
「君の心がどれほど揺れ動いているのか、私には痛いほどわかる。しかし、どうか信じてほしい。私は君を、誰にも渡すわけにはいかない。君こそが、私が選んだ唯一無二の存在なのだ」

 その言葉は、セシリアの心に深い衝撃を与えた。彼女は長い間、自分自身を控えめな存在として見つめてきたが、今、その眼差しの奥に、これまでに感じたことのない真摯な愛情と決意を見出した。部屋の中に漂う静かな緊張感は、二人の心を次第に近づけ、まるで長い冬が終わりを告げ、新たな春が訪れるかのような予感を呼び覚ました。

 やがて、セシリアはゆっくりと立ち上がり、深く息を吸い込んだ。彼女の内面にある不安と、未知なる希望が入り混じる中で、決断の時が迫っていることを感じた。
「殿下……私も、あなたのその想いに応えたい。だけれど、どうか急がないでください。私にはまだ、自分自身の心を整理する時間が必要なのです」

 アレクシスは、セシリアの言葉に柔らかく微笑むと、彼女の手をしっかりと握り返した。
「急ぐ必要はない。君のペースで、ゆっくりと私の世界を見てほしい。君が安心できるその時まで、私は君のそばにいる。どんなに長い時間がかかろうとも、君を守り抜くことを誓おう」

 その約束の言葉と共に、二人の間に流れる空気は、次第に暖かさを帯び、重苦しい過去の影をも払拭するかのように感じられた。アレクシスの執拗なまでの想いは、単なる執着ではなく、真摯な愛情そのものへと変わり始めていた。彼の眼差しの奥には、これまで誰も理解し得なかった孤独と、心の奥底に潜む深い哀しみがあったが、それもまた今、セシリアへの愛情に溶け込んでいた。

 室内に差し込む午後の日差しが、二人の顔を柔らかく照らす中、セシリアは自らの心の奥にある不確かな感情と向き合いながらも、新たな一歩を踏み出す覚悟を決めた。彼女は、これまで自分を地味で取るに足らない存在と考えてきた過去に別れを告げ、初めて自分の中に眠る強さと美しさに気づく瞬間を迎えたのだった。

 その後、しばらくの間、アレクシスはセシリアに対する接触を決して途絶えることなく、あらゆる機会を利用して彼女と会う場面を設けた。宮殿内の催しや、侯爵邸に招かれる小規模な社交パーティ、さらには庭園での散策のひととき。どの場面においても、彼の執拗なまでの想いは変わることなく、むしろ次第にその熱量を増していった。たとえば、ある夕暮れ時、侯爵邸の庭園で偶然出会った二人は、ひとときの静寂の中で、互いの眼差しを交わしながら、未来への淡い希望を語り合った。

 「セシリア、君がいかに美しいか、そして君が持つ内なる輝きは、これまでの私の生き方を根底から覆してしまった」とアレクシスは語り、夕陽に染まる庭園の中で、彼女の瞳を見つめた。
 「私も、あなたの熱い想いに触れ、少しずつ自分自身を見失いかけていた。しかし、今は…あなたと共に歩む未来を、静かに、しかし確実に感じ始めているのです」

 セシリアの声は、かすかに震えながらも、真摯な気持ちで溢れていた。互いに抱える過去の傷や孤独が、今、ひとつの温かい未来へと変わりゆく様は、まるで冷え切った冬の大地に一陣の温かな春風が吹き込むかのようであった。

 その晩、侯爵邸の書斎にて、セシリアは一人で過ぎ去った日の記憶を整理していた。机に広げた筆記用紙には、アレクシスの情熱的な言葉が何度も繰り返し記され、彼女の心にじわじわと染み込んでいく。自らの未来をどう受け入れるべきか、戸惑いと希望が入り混じる中で、セシリアはふと気づいた。
「私の中には、今まで知らなかった力があるのかもしれない……」

 そして、同じ頃、宮殿内でもアレクシスは、側近たちとの密談の中で、セシリアに対する自らの執着が、決して一時的な衝動ではなく、深い愛情に根ざしていることを改めて確認していた。彼は、これまでの自分がいかに孤独であったか、そしていかに多くの壁に囲まれて生きてきたかを語り、かつての自分自身を振り返るひとときを持った。
「我が存在は、これまで冷徹な規律に縛られていた。しかし、セシリアに出会ってからは、全てが変わった。彼女の存在が、私に新たな命を吹き込んでくれているのだ」

 その言葉を胸に、アレクシスは自らの未来に対する決意を固め、再びセシリアのもとへと向かう準備を始めた。彼は、どんなに長い時間がかかろうとも、彼女の心に自分の愛が届くその日まで、ひたむきに、そして執拗に追い求める覚悟であった。

 こうして、日が暮れ、夜の帳が降りる中、宮殿と侯爵邸の両方で、新たな運命の歯車が静かに回り始めた。アレクシスの執着は、もはや単なる一時の感情に留まらず、彼自身の存在意義そのものとなり、彼の歩む一歩一歩に深い意味を与えていた。セシリアもまた、自らの心の中で、これまでの悲しみや挫折を乗り越えるための小さな光を見出し、いつしかその光が、彼女自身を新たな未来へと導く希望の灯火となることを、静かに、しかし確信していた。

 その夜、月明かりが窓から差し込み、侯爵邸の一室を淡い銀色に染め上げる中、セシリアは一人、静かに涙を拭いながらも心の中で呟いた。
「私の未来は、もしかすると……新たな愛の中にあるのかもしれない」
 そして、遠く離れた宮殿の中庭では、アレクシスが再び深い決意を胸に、夜空を仰ぎ見ながら、ひたすらセシリアへの思いを新たにしていた。彼の心は、これまでにないほどの熱情で燃え上がり、その光は夜の闇をも打ち砕くほどの力を宿していた。

 こうして、二人の運命は次第に交錯し始め、互いに近づく時間は、やがて激しくも美しい旋律となって奏でられる運命の序章となっていく。皇太子アレクシスの異常なまでの執着は、単なる一方的な執着ではなく、彼自身の孤独や悲しみを包み込み、セシリアという唯一無二の存在に全てを委ねようとする純粋な愛情そのものであった。そして、セシリアもまた、これまで見失っていた自らの内面の輝きを、アレクシスという存在を通じて再び発見し、彼との新たな未来に胸を躍らせ始めていた。

 この夜、月光の下で交わされた二人の静かな約束は、次第に明日の光の中で現実のものとなり、互いの心に深く刻まれていく。アレクシスは、これからの数多の困難や誤解を乗り越え、セシリアの心に自らの愛が届くその瞬間を信じ、ただひたすらに前進することを誓った。セシリアもまた、未知なる愛の形に戸惑いながらも、その先に待つ幸せを信じ、これまでの孤独から解放されることを夢見ていた。

 こうして、皇太子の異常なほどの情熱と、地味ながらも内面に秘めた美しさを持つ令嬢の静かな決意は、静かに、しかし着実に一つの物語として紡がれていくのであった。明日への希望、そして二人の心がひとつになる瞬間を前に、夜の帳はそっと二人を包み込み、未来への新たな一歩を促すように、温かい光を放ち続けた。
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