【完結】契約結婚だったはずが、冷徹公爵が私を手放してくれません!

22時完結

文字の大きさ
5 / 10

公爵の独占欲

しおりを挟む

リリアとヴィンセントの微妙な距離感は、少しずつ変化の兆しを見せ始めていた。二人の間にはまだ大きな溝があったものの、日常の些細なやり取りが、互いの心に波紋を広げていた。

そんな中、リリアに対する周囲の視線が変化し始める。公爵夫人としての彼女の魅力に気づく者たちが現れ、それがヴィンセントの心にある感情を刺激することになるのだった。

リリアの社交界デビュー

ある日、ヴィンセントはリリアに社交界への参加を命じた。これまで屋敷での生活に専念していたリリアにとって、それは新たな挑戦だった。彼女は不安を抱えながらも、公爵夫人としての役目を果たそうと決意した。

「公爵夫人が顔を見せないわけにはいかない。それが君の役割だ」
ヴィンセントの冷静な指示に、リリアは小さく頷いた。

リリアが社交界に足を踏み入れると、その優雅な佇まいと控えめな笑顔はすぐに注目を集めた。彼女の姿に、男性たちは興味を示し、次々と話しかけてきた。

「公爵夫人、お会いできて光栄です」
「その美しさに見惚れてしまいました」

そんな言葉を受けるたびに、リリアは戸惑いながらも礼儀正しく対応した。しかし、遠くからその様子を見守っていたヴィンセントは、次第に胸の中に湧き上がる得体の知れない感情に気づき始める。

嫉妬心の芽生え

リリアが男性貴族たちと楽しげに会話を交わしている姿を見たヴィンセントの眉が僅かに動く。彼の胸の中に芽生えた感情――それは、嫉妬だった。

「何を馬鹿なことを考えている……」
彼は自分を諌めようとしたが、どうしてもその感情を抑えきれなかった。リリアが他の男たちと親しげにしていることが、彼の心を苛立たせたのだ。

社交界の場では紳士的な振る舞いを貫いていたヴィンセントだったが、リリアのもとに近づくと、冷たい声でこう言い放った。
「リリア、そろそろ戻る時間だ」

その言葉にリリアは驚きながらも頷き、男性たちに別れの挨拶をしてヴィンセントの隣に立った。彼の表情はいつも以上に硬く、リリアはその理由を掴むことができなかった。

公爵邸での小さな衝突

帰宅後、リリアはヴィンセントの態度について問いただすことを決意した。彼女にとって、公爵の突然の行動は理解しがたいものだったからだ。

「公爵様、あの場でなぜ急に私を連れ戻したのですか?」
リリアが勇気を出して尋ねると、ヴィンセントは一瞬目をそらしたが、すぐに冷たい声で答えた。
「君が余計な誤解を招く行動をしていたからだ」

その言葉にリリアは傷ついたが、負けじと反論した。
「私はただ、公爵夫人としての役目を果たそうとしていただけです。何か間違っていましたか?」

彼女の真っ直ぐな視線に、ヴィンセントは言葉を失った。リリアの行動に非がないことは理解していたが、彼の中に渦巻く感情は、それを素直に認めさせてはくれなかった。

抑えきれない独占欲

その夜、ヴィンセントは自室で一人考え込んでいた。リリアに対する自分の態度を振り返り、胸の内に生まれる感情の正体に気づき始めていた。
「彼女が他の誰かのものになるなど、考えたくもない……」

その思いは、彼の中に深く根付いた独占欲であり、これまで誰に対しても抱いたことのない感情だった。

翌朝、ヴィンセントはリリアに近づき、彼女の目をじっと見つめながらこう言った。
「リリア、これからは私の側から離れるな。君が誰かに近づくことも、他の男が君を見ることも、私は許さない」

突然の言葉にリリアは目を見開いた。彼の言葉の真意を測りかねながらも、その瞳に浮かぶ真剣さに圧倒された。

「公爵様……」
リリアが何かを言おうとしたが、ヴィンセントはそれを遮るように静かに言った。
「君は私のものだ。それを忘れるな」

リリアの心の揺れ

ヴィンセントの独占的な言葉に、リリアは戸惑いを隠せなかった。しかし、その一方で、彼の言葉の中に潜む温かさを感じ取っていた。

「彼は、私を必要としているのかもしれない……」

リリアの心に、小さな希望が灯る。それは、ヴィンセントがただ冷徹な公爵であるだけではなく、彼自身が心の奥底で何かを求めているという思いだった。

独占欲が生む新たな展開

ヴィンセントの独占欲は、彼らの関係に新たな波紋を広げていく。リリアはその感情に戸惑いながらも、それを受け入れるべきか悩んでいた。一方のヴィンセントも、自分の感情に振り回されながらも、それを止めることはできなかった。

この偽りの距離感が変化し始めた時、二人の未来はどのように変わっていくのか――。その答えは、まだ誰にも分からなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

冷酷な旦那様が記憶喪失になったら溺愛モードに入りましたが、愛される覚えはありません!

香月文香
恋愛
家族から虐げられていた男爵令嬢のリゼル・マギナは、ある事情によりグレン・コーネスト伯爵のもとへと嫁入りすることになる。 しかし初夜当日、グレンから『お前を愛することはない』と宣言され、リゼルは放置されることに。 愛はないものの穏やかに過ごしていたある日、グレンは事故によって記憶を失ってしまう。 すると冷たかったはずのグレンはリゼルを溺愛し始めて――!? けれどもリゼルは知っている。自分が愛されるのは、ただ彼が記憶を失っているからだと。 記憶が戻れば、リゼルが愛されることなどないのだと。 (――それでも、私は) これは、失われた記憶を取り戻すまでの物語。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

会えば喧嘩ばかりの婚約者と腹黒王子の中身が入れ替わったら、なぜか二人からアプローチされるようになりました

黒木メイ
恋愛
伯爵令嬢ソフィアと第一王子の護衛隊長であるレオンの婚約は一年を迎えるが、会えば口喧嘩、会わなければ音信不通というすれ違いの日々。約束を破り続けるレオンと両親からの『式だけでも早く挙げろ』という圧に我慢の限界を迎えたソフィアは、ついに彼の職場である王城へと乗り込む。 激しい言い争いを始めた二人の前に現れたのは、レオンの直属の上司であり、優雅な仮面の下に腹黒な本性を隠す第一王子クリスティアーノ。 王子は二人が起こした騒動への『罰』として、王家秘伝の秘薬をレオンに服用させる。その結果――なんとレオンとクリスティアーノの中身が入れ替わってしまった!全ては王子の計画通り。 元に戻るのは八日後。その間、ソフィアはこの秘密がバレないよう、文字通り命がけで奔走することとなる。 期限付きの入れ替わり生活は、不器用な婚約者との関係をどう変えるのか? そして、この騒動を引き起こした腹黒王子の真の目的とは? ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※他サイトからの転載。

25番目の花嫁 ~妹の身代わりで嫁いだら、冷徹公爵が私を溺愛し始めました~

朝日みらい
恋愛
王都の春。 貴族令嬢リリアーナ・エインズワースは、第一王子ライオネル殿下との婚約を一方的に破棄された。 涙を見せないことが、彼女に残された唯一の誇りだった。だが運命は、彼女を思いがけない方向へ導く。 「氷の公爵」と呼ばれる孤高の男、ヴァレンティーヌ公爵。 二十四人の花嫁候補を断り続けた彼の元へ、「二十五番目の花嫁」として赴いたリリアーナ。 家の体裁のための結婚――そう割り切っていたはずなのに、氷のような瞳の奥に垣間見えた孤独が、彼女の心に小さな炎を灯してゆく。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

処理中です...